# 第八話 ## 「英雄の剣」
# 第八話
## 「英雄の剣」
遺跡の最深部。
静寂。
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純白の聖剣が輝いていた。
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まるでレインを呼ぶように。
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「いやだ」
レインは即答した。
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「絶対いやだ」
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「抜いてください」
リア。
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「抜きなさい」
フェル。
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「隊長ならできる」
ガルド。
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「抜いて」
ルナ。
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全員だった。
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「なんで!?」
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レインは泣きそうになる。
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その間にも。
黒騎士ゼルドは近付いてくる。
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一歩。
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また一歩。
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大地が震える。
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ルナが叫んだ。
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「早く!!」
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ついに。
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レインは聖剣の柄を握る。
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その瞬間だった。
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ドクン。
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心臓が鳴る。
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ドクン。
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また鳴る。
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そして。
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大量の映像が流れ込んできた。
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知らない景色。
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知らない仲間。
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知らない戦場。
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そして。
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一人の青年。
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金色の髪。
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優しい瞳。
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千年前の英雄。
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アーク。
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『またか』
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映像の中のアークが笑う。
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『今回も俺の手柄になった』
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仲間たちが呆れている。
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『お前何もしてないだろ』
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『そうなんだよなぁ』
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レインは息を呑む。
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同じだった。
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自分と。
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全く同じだった。
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しかし。
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次の瞬間。
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映像が変わる。
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血。
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炎。
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絶望。
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仲間たちが倒れている。
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リアによく似た剣士。
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フェルによく似た魔法使い。
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ガルドによく似た戦士。
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そして。
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泣いているルナ。
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『アーク』
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『逃げて』
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だがアークは首を振る。
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そして笑った。
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『大丈夫』
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『俺が全部持っていく』
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レインの身体が震える。
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全部持っていく。
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それは。
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自分のスキル。
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【英雄継承】
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の本質だった。
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功績だけではない。
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願い。
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希望。
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伝説。
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そして――
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絶望も。
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仲間たちが背負うはずだった運命。
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犠牲。
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呪い。
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悲しみ。
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全部。
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英雄一人が背負う。
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それが本当の力だった。
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「そんな……」
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レインの顔が青ざめる。
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ルナが目を閉じる。
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「だからアークは死んだ」
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静かな声だった。
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「世界を救った代わりに」
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「全部一人で背負った」
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誰も喋れなかった。
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そして。
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聖剣が完全に抜ける。
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キィィィィィン――
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光が遺跡を包む。
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【英雄認証】
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【第二継承者確認】
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【レイン】
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【資格あり】
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嫌な表示だった。
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ものすごく嫌だった。
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「返せません?」
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返せなかった。
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ゼルドが笑う。
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初めて。
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本当に嬉しそうに。
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「そうだ」
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「その顔だ」
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「アークも同じ顔をした」
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そして。
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黒騎士の鎧に亀裂が走る。
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バキバキバキッ!!
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全員が驚く。
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中から現れたのは。
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一人の男だった。
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黒髪。
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優しい瞳。
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そして。
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アークにそっくりな顔。
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「え……?」
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ルナが震える。
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男は静かに笑った。
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「久しぶりだな」
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「ルナ」
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千年間。
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ずっと待ち続けた少女の瞳から。
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涙が零れ落ちた。
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「嘘……」
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「アーク……?」
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遺跡に静寂が落ちる。
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そしてレインは思う。
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(待て)
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(話が全然変わってきたぞ!?)
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## 次回
# 第九話
## 「千年越しの再会」
黒騎士の正体は英雄アークだった。
だが彼は味方ではない。
そして語られる。
千年前に世界を救った本当の結末――。




