# 第九話 ## 「千年越しの再会」
# 第九話
## 「千年越しの再会」
「アーク……?」
ルナの声は震えていた。
千年間。
ずっと待ち続けた名前。
ずっと会いたかった人。
その人が今。
目の前にいる。
---
しかし。
アークは笑わなかった。
---
ルナが一歩近づく。
---
「本当に……」
---
「本当にアークなの?」
---
男は静かに頷く。
---
「久しぶりだな」
---
その瞬間。
---
ルナが飛びついた。
---
「馬鹿ぁぁぁぁぁ!!」
---
ドンッ!!
---
アークの胸を叩く。
---
何度も。
何度も。
---
「なんで!」
---
「なんで帰って来なかったの!」
---
「私はずっと!」
---
「ずっと待ってたのに!」
---
千年分の涙だった。
---
リアも。
フェルも。
ガルドも。
何も言えなかった。
---
アークは黙って受け止める。
---
そして。
---
「すまなかった」
---
その一言だけ。
---
だが。
---
ルナは首を振った。
---
「違う」
---
「聞きたいのは謝罪じゃない」
---
「どうしてなの」
---
「どうして一人で消えたの」
---
空気が変わる。
---
アークの瞳から笑顔が消えた。
---
「……話す時が来たか」
---
彼はレインを見る。
---
「お前も聞け」
---
「嫌な予感しかしない」
---
「聞け」
---
「はい」
---
即答だった。
---
アークは聖剣を見つめる。
---
そして語り始めた。
---
千年前。
---
世界には魔王がいた。
---
だが。
---
本当の敵は魔王ではなかった。
---
「世界そのものだった」
---
全員が固まる。
---
「え?」
---
フェルが眉をひそめる。
---
「どういう意味?」
---
アークは答える。
---
「世界は壊れかけていた」
---
「人々の絶望」
---
「憎しみ」
---
「悲しみ」
---
「戦争」
---
「呪い」
---
「それら全てが積み重なった結果」
---
「世界は一つの意思を持った」
---
レインが嫌な予感を覚える。
---
「まさか」
---
「そうだ」
---
アークは頷く。
---
「それが魔王だった」
---
静寂。
---
つまり。
---
魔王は怪物ではない。
---
世界の負の感情そのもの。
---
「だから倒せなかった」
---
アークが言う。
---
「倒しても生まれる」
---
「また生まれる」
---
「何度でも」
---
ルナの顔が青くなる。
---
それは聞いていなかった。
---
アークは続ける。
---
「だから俺は別の方法を選んだ」
---
「英雄継承を使った」
---
「世界中の絶望を」
---
「俺一人に集めた」
---
レインの身体が震える。
---
想像しただけで恐ろしい。
---
世界中の絶望。
---
世界中の悲しみ。
---
全部。
---
一人で。
---
「結果」
---
アークは笑った。
---
「俺は魔王になった」
---
誰も呼吸を忘れた。
---
ルナの瞳が揺れる。
---
「嘘……」
---
「本当だ」
---
アークの身体から黒い霧が漏れる。
---
それだけで空気が重くなる。
---
「俺が黒騎士ゼルド」
---
「俺が最後の魔王」
---
「そして」
---
レインを見る。
---
「お前の未来だ」
---
ゾッとした。
---
本能が叫ぶ。
---
それだけは駄目だと。
---
アークは静かに言う。
---
「レイン」
---
「英雄継承は世界を救う力じゃない」
---
「世界の苦しみを背負う力だ」
---
「続ければ」
---
「お前も俺になる」
---
ルナが叫ぶ。
---
「やめて!」
---
「そんな未来認めない!」
---
アークは悲しそうに笑う。
---
「俺も認めたくなかった」
---
その時だった。
---
聖剣が光る。
---
キィィィィィン!!
---
突然。
---
レインの頭に声が響いた。
---
『第二継承者へ』
---
「!?」
---
『選択の時が来た』
---
『英雄になるか』
---
『英雄を終わらせるか』
---
全員が驚く。
---
聖剣の中から。
---
白い少女が現れた。
---
まるで精霊。
---
神そのもののような存在。
---
そして彼女は言った。
---
「レイン」
---
「あなたなら世界を変えられる」
---
「アークでも辿り着けなかった答えへ」
---
遺跡が震える。
---
世界が震える。
---
千年前から続く物語が。
---
ついに終わりへ向かい始めた。
---
## 次回
# 第十話
## 「英雄を終わらせる方法」
聖剣の精霊が明かす衝撃の真実。
そしてレインは知る。
自分だけが選べる、
第三の未来を――。




