# 第五話 ## 「千年眠っていた少女」
# 第五話
## 「千年眠っていた少女」
王都へ向かう街道。
レインたちは馬車に揺られていた。
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「隊長、朝ですよ!」
ガルドの大声でレインが飛び起きる。
「だから隊長じゃない!」
「はっはっはっ!」
「笑って誤魔化すな!」
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リアは楽しそうに窓の外を見ていた。
「王都、楽しみですね!」
「俺は帰りたい」
「また言ってます」
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フェルは本を読んでいる。
相変わらずマイペースだ。
「遺跡の資料、少し分かったわ」
「聞きたくないけど聞こう」
「聞きなさい」
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フェルはページをめくる。
「千年前の英雄の名前は――」
一同が息を呑む。
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「アーク」
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「普通だな」
「感想そこ?」
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フェルは続ける。
「伝承では魔王を倒した英雄」
「へぇ」
「でも不自然なの」
「何が?」
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「仲間の記録ばかり残っている」
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レインは顔をしかめる。
それは自分と同じだった。
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リアが魔物を倒す。
フェルが魔法を放つ。
ガルドが守る。
なのに功績だけはレインになる。
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「まさか……」
「そう」
フェルが頷く。
「アークも仲間が本当の英雄だった可能性が高い」
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馬車の空気が重くなる。
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すると。
ガルドが腕を組んだ。
「それでも英雄は英雄だ」
「え?」
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「仲間が全力を出せる場所を作る者もまた英雄だ」
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レインは少し驚いた。
ガルドらしい考え方だった。
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「隊長は隊長です」
「だから隊長じゃない」
「隊長です」
「やめろ」
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その時だった。
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ドォォォォォン!!
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馬車が大きく揺れた。
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「敵襲!」
ガルドが叫ぶ。
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森の中から巨大な狼たちが現れた。
十匹。
いや二十匹。
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「魔狼群れ!?」
フェルが立ち上がる。
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普通の冒険者なら逃げる数だった。
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だが。
リアは剣を抜く。
「行きます!」
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フェルが杖を構える。
「援護するわ!」
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ガルドが盾を構える。
「私が前に出る!」
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そして。
レインは。
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「頑張れー!!」
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「応援だけ!?」
フェルが叫んだ。
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戦闘は圧倒的だった。
リアが切り裂く。
フェルが焼き払う。
ガルドが吹き飛ばす。
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五分後。
戦いは終わった。
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「助かった……」
レインが胸を撫で下ろした瞬間。
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ピカァァァァァ!!
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「来たぁぁぁぁぁ!!」
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【魔狼群れ討伐成功】
【最大功労者:レイン】
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「だからやめろぉぉぉぉ!!」
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リアたちは慣れた顔だった。
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そして二日後。
ついに王都へ到着する。
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巨大な城壁。
無数の人々。
王国最大の都市。
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だがレインたちは休む暇もなく、
そのまま遺跡へ向かうことになった。
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王都北部。
山岳地帯。
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そこに古代遺跡はあった。
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誰も近づかない禁域。
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入口には巨大な石碑。
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そこに刻まれていた文字をフェルが読む。
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「継承者よ」
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「ここより先は英雄の試練」
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「真実を知る覚悟がある者のみ進め」
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レインの背筋が寒くなる。
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そして。
遺跡の最深部。
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千年間眠り続けていた少女は、
ゆっくり立ち上がった。
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銀色の長髪。
紅い瞳。
黒いドレス。
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人間とは思えないほど美しい。
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少女は微笑んだ。
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「レイン」
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誰も教えていない名前を口にする。
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「今度こそ間違えない」
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その瞳には。
千年分の寂しさが宿っていた。
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そして――
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「あなたを守る」
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その言葉と共に、
遺跡全体が震え始める。
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レインたちはまだ知らない。
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この少女こそ、
千年前の英雄アークと共に戦った最後の仲間であり、
世界の秘密を知る唯一の生き残りだということを。
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## 次回
# 第六話
## 「英雄の仲間だった少女」
千年を生きた少女ルナ登場。
そして明かされる――
「良いとこだけ持っていけスキル」の本当の名前とは。




