⑨ しぶといヤツ
「あ~あ、やっちまったなあ。アレ?お前は無事なのかあ……やっぱりお前のご先祖様は、あそこには居なかったらしいな。どうやらガセネタだったって訳だ。」
まるで何事も無かったかのように、新しい右腕を再生したトカゲ男は、そう言ってニヤニヤした。
「お前……さては面白半分に撃ったな?」
「まあ、この武器の試し撃ちも兼ねてるからなあ。別に"的"は何でもイイんだよ。ハダカ猿族どもを、たくさんヤレればなあ?」
「よくも罪も無い多くの人命を……もういい。オマエを生かしておいて、他の残党の情報を聞き出すつもりだったが、ヤメだ。この場で、今すぐ死んでしまえ!」
そう言うと雪村は、自らの眼前に両手を出し、パンッ!と一つ柏手を打った。
すると同時に、そのトカゲ男は、残りのバズーカを持ったまま、空中で跡形も無く、ペシャンコに潰れてしまったのだった。そして粉々のチリのようになって、消えて行った。
「再生できるものなら、やってみな!」
雪村は、もう何も聞こえない相手に向かって、珍しく強い語気で言った。そしてまた、彼は一瞬で元の時空……弓子の元へ帰って行ったのである。
その一部始終を、少し離れた雲の上で、鷹志・由理子・ジャンヌの三人は、緑のビートルの中から見ていた。
「貴女の兄上様、普段はあんなに穏やかでお優しいのに、怒るとやっぱり、恐ろしいお方なのね?」
気のせいか、いつもより敬語多めで、ジャンヌ・ダルクが言った。
「そうね。私たちも、せいぜいお兄ちゃんを怒らせないように、気をつけなくっちゃね?」
由理子も、ジャンヌに同意見だった。
そして鷹志は、今目撃した事が衝撃的過ぎて、暫くの間黙り込んでいたが、気を取り直して言った。
「さあ、調査も済んだし、そろそろ帰りましょうか?」
その意見に異議を唱える者は、誰も居なかった。
無事に時空を超えて、名護屋テレビ塔の亜空間レストランに戻って来た三人は、そこで待っていたサン・ジェルマンに、北京大爆発の真相について、口々に語った。
伯爵はみんなにコーヒーを提供しながら、ウンウン、なるほど、それで?などと相槌を入れて、落ち着いた感じで話を聞いていたが、最後に口を開いた。
「そうですか。雪村君もとうとう、その領域に達したのですね?トラブルに呼び出されてしまう体質とはまた、難儀なモノです。」
「もしかしたら、ウチの兄は、これまでも人知れず、アラハバキの残党を片付けていたのかも知れません。」
由理子もそう言って、兄を不憫に思う気持ちを露わにした。
「来たるべきソノ日に備えて、彼には出来るだけ、カラダを休めてもらいたいものです。」
伯爵はそう言って、溜め息を一つついたのだった。




