⑧ 北京大爆発
当然、地上は大惨事である。
爆心地は、明王朝の北京西南部だった。
半径2.5kmに渡って煙で真っ暗になり、おびただしい数の家屋が倒壊した。後の記録によれば、2万人以上の人々が、一瞬にして亡くなったとされる。その爆発の威力は、TNT火薬2万トンに当たると推定され、広島型原爆に匹敵するとも記されている。
「……酷い有様ね?」由理子が呟く。
「いったい、誰がこんな事を……?」
ジャンヌも、怒りを声に滲ませる。
「確かめに行きましょう。」
鷹志がそう言うと、時刻を5分前に戻し、同時にビートルを垂直上昇させて行った。
場面変わって、その5分程前の事……。
明王朝の北京上空では、二人の人物が対峙していた。どうやら二人とも、重力から自由になれる手段を持っているようだった。一人は、巨大なバズーカ風の武器を持って、空を飛ぶためのデバイスを背中に装着した、爬虫類族の男だ。そしてもう一人は……ジーンズを履いてフード付きのグレーのトレーナーを着た、徒手空拳の生身のニンゲン、真田雪村だった。
雪村には以前からそういう兆候が有った。
何か強大な悪意が有る時空を感知すると、自分の意思とは無関係に、ほとんど自動的に、その場所に時空転位してしまうという、厄介な能力……というか、最早、性質だ。
以前は"雪子の危機"の場合限定だったが、最近はすっかり、その感知能力が広がってしまったようだ。多分、ウチなる太陽神アモン・ラーのチカラの影響が、無関係ではあるまい。彼はそう自覚し始めていた。
「やはり、嗅ぎつけて来たか、真田雪村。」
その爬虫類族の男は言った。
「まだ居たんだな。アラハバキの残党め。」
(ついさっきまで、リビングで、弓子と楽しくやっていたのに、邪魔しやがって。)雪村は、まあまあ腹が立っていた。
「どうせなら、オマエの先祖から潰そうと思ってな。でも意外だったぜ。まさかお前の先祖が、中国からの渡来人とはな?」
「誰に訊いたのか知らないが、多分、それ、データを改ざんされているぞ。」
「今さら、苦し紛れに誤魔化す気か?無駄な事を……。」
そう言ってそのトカゲ男は、クククと笑った。
そして、少しだけ二人は睨み合った。
次の瞬間、そいつが右腕でバズーカを構えるのと、雪村の攻撃は、ほぼ同時だった。バズーカが火を噴く前に、その右腕ごと、雪村の遠隔のチカラが握り潰した。「甘いな?」しかしトカゲ男は顔色一つ変えずに、間髪を入れず、背中からもう一丁のバズーカを取り出し、下の街に向かって発射したのだ。ソレは火薬による実弾発射装置ではなく、一種のレイルガンの様なモノだった。隙を突かれた格好の雪村は、とっさにそのスピードでは動けなかったのだ。
かくして、北京の大爆発は起こってしまったのである。




