⑩ イレギュラーな旅
「……ああ、またか。」
真田雪村は、そろそろウンザリしていた。
つい先日のアレも、行った当時は、いつの時代かも分からなかった。
後日、サン・ジェルマン伯爵に教えてもらって、明王朝の北京大爆発の現場だと知ったのだ。
ここは随分寒い場所だ。それに何だか薄暗い。
目が慣れて来ると、雪に埋もれた針葉樹の林の中だという事までは分かった。
今日の自分は、一体どこの国に召喚されたんだろう?
そして敵はどこだ?彼は素早く辺りを見回す。
すると彼は、すぐに罠に陥った事に気がついた。
先日と同じような、手持ちバズーカ型兵器を持った、千人ほどの爬虫類族の戦士たちが、360度……いや、空の上まで含めると半球状に、すっかり自分を取り囲んでいるのだ。そしてその中の、師団長と思しきトカゲ男が口を開いた。
「ようこそ、真田雪村殿。やはり、我らの集結に感づいて現れたな。」
「性懲りも無く……まとめて面倒見てやるよ。」
「キミの事は研究させてもらったよ。どうやらキミさえ亡き者にすれば、あの忌々しい真田雪子も、この世に生まれないらしいじゃないか?そうすれば、この世界は、易々と我らのモノになるなあ。」
「出来ると思っているのか?」
「さすがにこうやって取り囲んでしまえば、レイルガンの弾丸を避けられまい?キミはレーザー兵器を無効化するらしいから、コレが一番効果的だと思ってね?」
「やってみろよ。」
「言われなくとも、そうさせてもらうさ。何か言い残すことは無いかな?」
「これから起こる事を考えると、今この林の中に居る野生動物に対して、謝罪の気持ちでいっぱいだよ。ここに妹の由理子が居たら、お前たちを八つ裂きにするだろうさ。」
「そいつもお前の後で、ゆっくり殺してやるさ。せいぜい、あの世で詫びな。撃て!」
師団長の合図で、1000丁の手持ちレイルガンが、一斉に火を噴き、音速の弾丸が雪村に向けて発射された。
雪村は直上から来る弾丸を、難無く避けながら垂直に跳び上がり、包囲網を抜けると、空中で逆立ちして両手を広げた。さっきまで自分が居た、半球状の中心に、弾丸が集まりつつあるのが見えた。そこを狙って、広げた両手を素早く頭上に寄せる。すると取り囲んでいた千人のトカゲ男たちは、ギュッと圧縮され、中心の弾丸と一体化した。以上がほんの一瞬の出来事だった。コレは、雪村の音速を超える動きが、可能にする攻撃である。




