⑥ 彼らの目的
「ああ、なるほど……でも空中に生きる彼らが、どうして地上のケアまでしてくれるんですか?」
「大気が循環しているからよ。土壌に有るモノはいずれ川から海へ流れ込み、蒸発したモノは空気中に混ざる。そして雲が出来て、雨が降り、また土壌に戻る。分かるわね?」
「だから、大地も海も空も、無関係では無く、繋がっている。そうなんですね?」
「よく出来ました。そう言う事よ。なんか、これから毎月、年末まで、東ヨーロッパから西ロシアにかけてやって来て、今日の続きをやるってさ。有り難い事よね?」
そんな事を二人で話しているうちに、赤いビートルは元の時空に戻って来た。
由理子は地下駐車場にクルマを停めると、ジャンヌと一緒にエレベーターで、名護屋テレビ塔の亜空間レストランに帰って来た。
「ただいまあ~!」
元気に入店する由理子に、ねぎらいの声を掛けるサン・ジェルマン伯爵。
「お帰りなさい。お疲れ様。首尾はどうでしたか?なにか収穫は有りましたか?」
そこで早速、由理子は二つのUFO事例について、分かった事を報告した。
「そうですか。韓国の方のタイムパトローラーは、ひょっとすると、未来の雪子さんの研究所から、派遣されているかもですね。」
「ああ、ホントだ。あり得ますね。」
「それから、成層圏クラゲの願いの方は、恐らく叶うでしょうね。」
「と言うと?」
「あの後、ソビエト連邦に、UFO調査プロジェクト"セトカ"が発足するんですよ。そして今でも、その系譜を担う組織は存在していますから。」
「そうだったんですね?彼等も成層圏生物を、無視出来なくなったんだ。」
「まあ、持ちつ持たれつですよ。我々も出来る限り、大気汚染を防がないとですね?因みに彼らの土壌改良の方は、いささかヤリ過ぎたらしく、あの後、バラなどの季節外れの花が、そこら中に咲きまくったらしいですよ?」
伯爵はそう言って笑顔を見せた。
「それにしても、あのクラゲたちには、過去も現在も未来も、同列に見えているんですね?」
「ええ、極めて四次元人的な振る舞いです。或る意味アレが、天使の一形態とも言えそうですね。」
「……そうだ。鷹志はどうしてますか?」
由理子が務めてついでのように、伯爵に尋ねる。
「ああ、彼もそろそろ上がって来る頃ですよ。」
まさに伯爵がそう言うのと、同時くらいのタイミングで、鷹志がエレベーターで、地下の研究室から上がって来たのだった。




