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「メジェドの居ない日々」(セーラー服と雪女 第28巻)  作者: サナダムシオ


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28/31

㉘ ドライブデート

 1996年8月31日の土曜日。時刻は午後8時頃。

 由理子は隣に鷹志乗せた赤いビートルで、知多半島のとある海岸沿いの国道をドライブしていた。もちろん、久しぶりのデートが目的だったが、もう一つ、どうしても確かめておきたいことが有ったからだ。一人では何となく不安だったから、鷹志にも付き合ってもらう事にしたのだ。


 師崎港の駐車場にクルマを停めると、そこから日間賀島に向かう高速船に乗せてもらった。コレは予め、サン・ジェルマン伯爵に頼んでチャーターしてもらったモノだ。ただし、真っすぐ日間賀島には向かわず、三河湾の中間地点の辺りで、船長にエンジンを停止してもらった。


 船が碇を降ろすと、二人で右舷のデッキへ行き、夜の海面を覗き込んだ。今夜の太平洋は穏やかだ。波もそれほど無く、凪に近い。しかし、やがてその海面が、あちこちでモコモコ動き出したのだ。その正体は、無数のタコとイカ……つまり頭足類たちだった。そう言えば日間賀島では、この季節、タコの丸茹でが名物だったな。鷹志は余計な事を思い出していた。


 隣に居る由理子を見ると、何やら熱心にタコとイカたちと交信しているようだった。彼女のテレパシー能力には、いつも驚かされて来たが、ついに頭足類も網羅したのかと思うと、鷹志としてはもう脱帽モノだった。


「うん、うん。わかった。チームの皆にも伝えておくわ。どうもありがとう。これからも、頼りにしているわよ。」

 彼女がそう言うと、やがて、船を取り囲んでいた無数の頭足類たちは、海中に消えて行った。最後に、ひと際巨大なダイオウイカの眼が、じっとこちらを見つめていたが、やがてソレもゆっくりと海中に没して行った。


「現在の、海中の状況を教えてもらったの。」

 鷹志が問う前に、由理子が語り出した。

「相変わらずの不法投棄や、原子力発電所からの心配な排水は有るようだけど、近隣の諸外国に比べたら遥かにマシだって。日本海も太平洋の沿岸部も、住みよい方だってさ。」


「そう……なんだ。」

「あと、コッチが本題なんだけど……。」

「……何かな?」

「海底の方も、地底世界の方も、今のところ、アラハバキの手の者と思われるような、怪しい動きは無いそうよ。」

「そうか、それは何よりだね。」

「帰ったら、伯爵にも伝えなくっちゃね?」


「あとコレは、想定外の申し出だったけど……。」

「まだ何か有るんだ……。」

「今後もしも、悪魔からの侵略が有った場合には、頭足類たちが、私たちの味方に成ってくれるって。」

「それはまた……頼もしいね?」


「そうね。この件も合わせて、伯爵に報告しましょう。鷹志、今日は付き合ってくれてありがとう。」

「おやすい御用だよ……そこに悪魔さえ居なければね?」

 鷹志はそう言って苦笑いした。

 

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