㉗ 決着
由理子はさりげなくカラスに頼んで、吉十郎の攻撃をアシストしてもらう。しかし猫又の素早い動きに、10羽ほど集まったカラスたちも苦戦気味だ。次にバステト嬢が、オリハルコンの剣を抜いて跳びかかる。もちろん木々に隠れて、吉十郎に見られないように、配慮はしての上だ。
しかしその彼女の鋭い剣撃を、猫又はその名の由来の二股の尻尾の先で、なんと"真剣白刃取り"してしまったのだ。これにはさしもの黒猫嬢も、ショックを受けたようだった。こんな不名誉な事は、生まれて初めてだったのだろう。恐らく顔面蒼白のまま、(実際には黒い毛皮で分からないが)彼女は猫又の鋭い爪の攻撃をかわしながら、ひらりと後ろへ退いた。
そこで白猫ミケーネが光線銃を使った。時代にそぐわない飛び道具の使用だが、この際仕方あるまい。しかし猫又は、レーザー光線より素早く動いて見せた。見た目こそ大きな猫に過ぎないが、コレでいよいよ中身が怪しくなって来た。
最後に鷹志が、一番ズルイ手を使った。彼お手製の電磁ワイヤーネットを、猫又に向けて発射したのだ。それはちょうど猫又が、吉十郎の足に噛み付いた瞬間だった。たまたまタイミングよく猫又の動きが止まっていたから、成功したようなモノだった。多分猫又も、何の殺気も出しておらず、一番非力そうな鷹志の事は、眼中に無かったのだろう。まさに"伏兵現る"といったところである。猫又は慌ててもがくが、時すでに遅しである。
そして吉十郎は、足に噛み付かれながらも必死に抵抗し、ついに動きの止まった猫又の、喉の奥深くに、その刀を突き立てる事に成功したのだった。やがて猫又は息絶え、そのカラダの中から、例の黒いモヤモヤしたモノが出て行った。やはりその正体は、悪魔と呼ばれる四次元の住人だった訳だ。
吉十郎は出血多量で虫の息になっており、村人が山の中で見つけ、連れて帰った頃には既に手遅れで、まもなく死んでしまった。残念ながらソレは史実だから、由理子たちは助ける訳にはいかなかった。 そして猫又の死体の方は、現在の土橋稲荷に埋められ、人々はいつしかそれを猫又稲荷と呼ぶようになったらしい。
疲れ切った由理子一行はクルマに戻り、それぞれの座席で一息ついていた。
「何よアレ?あんなバケモノ、反則だわ。」
ハアハア言いながら、バステト嬢が呟いた。
「レーザー光線より速く動けるなんて、物理法則を無視していますよね?」
そう言うミケーネも、肩で息をしている。
「最近のチーム・サン・ジェルマンの面々は、あんなのばっかり、相手にしているんですよ。それで僕は、もうすっかり、バックアップ……つまり裏方志望になってしまったんですけどね。」
鷹志がそう言った。
「まあまあ、みんな。取りあえず、はっきりして良かったじゃない?早く帰って、伯爵に、猫又はやっぱり悪魔でしたって、報告しましょう。」
由理子がそう言って笑った。もうすっかり慣れっこのようだった。
鷹志は何故か、そんな由理子が、すっかり遠い存在になってしまったかのように感じて、少し寂しくなってしまったのだった。




