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「メジェドの居ない日々」(セーラー服と雪女 第28巻)  作者: サナダムシオ


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㉖ 四人でお出かけ

 そんな訳で、二人のニンゲンと二匹の猫族は、地下駐車場にやって来た。

 早速皆で、赤いワーゲンビートルに乗り込む。

 運転席には由理子、助手席にバステト嬢、後部座席には、鷹志とミケーネ王子が、仲良く並んで座った。


 そして由理子が、センターコンソールパネルに、目的地の座標を、下記のように入力する。

 

 西暦1683年7月7日

 時刻20時00分

 北緯37度06分

 東経138度09分


「では参ります!」

 由理子は元気にそう言ううと、クルマを駐車場から出した。

 そしていつもの手順で、時空転移装置のスイッチを入れたのである。


 移動中、由理子が皆に語る。

「今から行くのは、江戸時代の、新潟県上越市中ノ俣という場所です。そしてこの日付は、そこでおよそ3年間に渡り、村人や家畜を襲い続けた、"猫又"と呼ばれる怪物が退治されるはずの日なんです。」


「それにしても、猫又ってヘンな名前ね?」バステト嬢が不思議そうに言う。

「伝説によると、長生きした猫が巨大化して、尻尾が二つに分かれるんだそうです。だから二股の尻尾で、猫又と……。」

「ああ、成る程。でも何だか駄洒落みたいね。」

 黒猫はそう言うと、フフッと小さく笑った。


 そんな事を話している間に、赤いビートルは現場に到着した。

 もちろん今日も、光学迷彩を透明モードにしたまま、眼下の様子を観察しながら、上空で待機である。


 今の由理子の話を聞いたら、やはり、苦手な悪魔案件らしいので、鷹志はビビっていた。そんな彼に、由理子が運転席から声を掛ける。

「大丈夫よ。私は動物全般が得意だし、今日はバステト嬢も居るんだから。」

「そう……だよね?」鷹志はやっとそれだけのセリフを言った。


「猫又退治」は天和年間に起こったとされる。重倉山に体長約2m70cmの恐ろしい怪異"猫又"が住んでおり、村人や家畜を襲ったので、皆は恐ろしくて外出もできなかったという。

 困った村人たちが代官に掛け合ったところ、代官は足軽数十人に弓や鉄砲を持たせて中ノ俣に向かわせた。村人もかり出され、総勢は1000人を超えた。しかし、猫又は目にも止まらぬ早さで出没し、鉄砲を撃っても命中しなかった。

 実は村人の中に、熊をも殺すほどの力と技を持つ、吉十郎という者が居たが、病み上がりだった。しかし、役人の熱心な誘いもあり「世の中のためになるなら」と引き受けたのである。


 その彼が、林の中に入って行くのを見届けると、由理子は、ビートルを木陰に降ろした。そして皆で慎重に車外に出て、吉十郎の跡を追う。彼が林の中に入り込むと、まもなく猫又が跳びかかり、壮絶な戦いが始まった。





 

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