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「メジェドの居ない日々」(セーラー服と雪女 第28巻)  作者: サナダムシオ


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⑱ いざ駿府城へ

「でも妖怪だと、いつ、どこに出るのか、分からないのでは?」

 サン・ジェルマンが疑問を投げかける。

「それが……分かるんです!」

 胸を張る成雪。


「都合のイイ事に、とある有名な人物の前に現れた事が、記録に残っていたんですよ。」横からカグヤがそう言った。

「ああ、徳川家康公ですね?」

 伯爵も思い出したようだった。


「はい。流石は伯爵。やっぱり知っていましたね?」

「……なるほど、調査対象として興味深いですね。分かりました。緑のビートルが地下駐車場に有りますから、是非それを使って下さい。」


「やったあ。ありがとうございます、伯爵。」

 成雪は小躍りして喜んだ。なかなか子供っぽさが抜けないようだ。


 二人は早速駐車場に行き、クルマに乗り込んだ。

 今日は成雪が自ら志願して、ハンドルを握った。

 この際、普通自動車運転免許の事は、気にしないで欲しい。

 そもそも、戸籍の無いクローン人間の彼には、免許の取得など無理な話なのだ。


 そして助手席からカグヤが、センターコンソールパネルに目的地の座標を、以下のように入力する。


 西暦1609年4月4日

 時刻06時00分

 北緯34度58分

 東経138度23分


 目指すは静岡県静岡市葵区。徳川家康が隠居したテイで、大御所としてチカラを振るったという、あの駿府城の中庭だ。


「じゃあ。出発しま~す」

 成雪は駐車場からクルマを出すと、勝手知ったる光学迷彩を掛けて、ただちに垂直上昇させ。時空転移装置のスイッチを入れた。


 その日、早朝の務めを終えた家康のとある家臣は、天守台の外周を四方から囲む形の、回廊を歩いていた。この回廊には無数の鉄砲狭間が設けられ、外部から天守へ近づこうとする敵を、全方位から迎え撃つ、鉄壁の防衛ラインとして機能していた。


 また、万が一そこを突破されても、天守前の中庭に侵入した敵は、周囲の回廊と、中央の天守の両方から、集中砲火を浴びる事になる。そこは、曲者に対する逃げ場のない構造となっており、流石は徳川家康公、といったところである。


 しかし、その家臣は、そんな鉄壁の中庭で、その朝、あり得ないモノを見かけたのだった。ソレは一見、子どものように見えた。いや、それくらいのサイズ感のモノだった。東の空から差し込む、オレンジ色の朝日の光を浴びて佇むソレは、ニンゲンと呼ぶには余りにも異様な姿で、まるで肉の塊のようだった。



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