⑰ 伯爵に報告
名護屋テレビ塔の亜空間レストランに戻って来た二人は、早速、モササウルスとウアジェト女王の関係を、サン・ジェルマン伯爵に報告した。
「やはりそうでしたか……。」
伯爵は特に驚いた様子も無く、そう言った。
「……来るべき日を待ちながら、彼女は着々と、情報収集のための、ネットワークを広げているようですね。」
「女王は、地球上の、あらゆる爬虫類とつながっているって事ですかね?」
香子が、毎々から思っていた事を口にする。
「きっとそうでしょうね。そして1999年の7月に備えているのでしょう。敵は、異星人や悪魔やアラハバキとは限らない。ニンゲンの最大の敵は、ニンゲンだったりしますから。」
「ああ、あり得ますね。」
香子は、将来どんな事が起こりそうか想像して、イヤな気分になった。
「……でも凄いわね、彼女。」
由理子が話に加わった。
「ブラックナイトを筆頭に、人工衛星も操っているのでしょう?それに地下世界も支配下にあるって……最早ラスボス級なんじゃないかな?」
「そう、彼女が敵に回ったりしたら、厄介でしょうね?……そうならないように、私たちで、人類を見守りたいものです。」
伯爵はそう言って、シリアスな顔になった。
さて、それから約一カ月後の、1996年4月20日の土曜日。時刻は14時00分。
今日は久しぶりに、亜空間レストランに、カグヤ・イシュタルと成雪のカップルが訪れていた。弓子の好意で、前の約束に変更が成され、弓子と真田雪村のカップルが居ない時に限り、このサロンを訪れても構わない事になっていたからだ。
時空の調査をする場合、腕のデバイスや、小型のスーツケース型タイムマシンでも可能だが、やはりビートルに乗っている方が、何かと都合がイイのである。今回も成雪の気になる事象を調べに行くらしい。伯爵は二人に緑色のビートルを貸し出してやることにした。
「ところで成雪君、今回気になったのは、どんな事なのかな?」
優しく尋ねるサン・ジェルマン。
成雪の心は、まだまだ少年のままなのだ……まあ、今や内側に、古代エジプトの、セト神を宿している事が分かってしまっているのだが。
「江戸時代の妖怪、"ぬっぺふほふ"です。」
彼はやはり、日本の歴史が好きなようである。
「ああ、例の別名、"のっぺらぼう"とか、"肉人"とかいう、アレの事ですか?」
「はい。ソレの調査をしたいんです。」
笑顔で成雪は答えた。




