⑯ 地下の用心棒
由理子は、ビートルを岸辺に降ろし、香子と一緒にウアジェト女王の元に近づいて行った。
「ああ、いらっしゃい。今日は姉妹二人きりなのだね?」
愛想良く挨拶する女王。
「あの……午前中は失礼しました。」
妹の後ろに隠れるようにして、そんな事を言う香子。
「ああ、気にしないで下さい。でもアルコールも程々にしないと、そのうちにアナタも、"ウルトラマンのケロニア"や、"ウルトラセブンのワイアール星人"みたいになるかもしれませんよ?」
と香子のジョークの続きを披露する女王。案外、根に持つタイプなのかもしれない。由理子はそう思った。
「もう……勘弁して下さい。」
珍しく弱腰な香子。
仕方が無い。酔っていたとは言え、余計な事を言った自分が、全面的に悪いのである。とりあえず話を変えなくては。
「ところで、女王は、そのモササウルスとお知り合いなので?」
「……ああ、この子のことね?」
彼女はその海竜の鼻先を、ナデナデしながら答えた。
「最近、この湖も物騒になって来たから、この子たちに用心棒を依頼したんだよ……報酬に、美味しいお食事を与える約束でね。」
香子は、そのお食事のメニューが何なのかは、訊かない方がイイ気がした。
実はテレパスの由理子には、この爬虫類族同士の関係が、何となく察しがついていた。それは心の会話が、薄っすら聞こえていたからだった。それに今までの経緯から、この地下世界には、多くの古代生物が生き残っている事が、分かっていた。だからモササウルスがここの常連でも、なんら不思議な事は無いのである。
「……逆に、地上世界の様子も、偵察に行かせているのでしょう?」
由理子は、そこから推察した事を口にした。
「やれやれ……やっぱり由理子には、隠し事はできないね?」
女王は、こちらに振り向きながらそう言った。
その間に、モササウルスは帰って行った。
「そうだよ。地上の紛争については、逐一報告をしてもらっている。」
「……それは、いざとなったら、地上の状況に介入するためなんですよね?」
「その通りだ。アメリカにせよ、ソ連にせよ、地上世界を牛耳るニンゲンが、いつ核ミサイルの発射ボタンを押すか、分かったものではないからな?」
「……ですよねえ。」
耳の痛い話だ。由理子は納得せざるを得なかった。
「じゃあ、そろそろ帰ろうか?」
どちらからともなく、声を掛け合って、真田姉妹はビートルに戻ったのである。




