⑭ 酔いから醒めた後で
それからしばらくたった後の事……。
香子は、レストランのテーブルに突っ伏している自分に、気がついた。
「アッ、やっと起きた。」
隣に座っていた由理子が言った。
「ゴメン。たった一杯のカクテルで寝ちゃうなんて……今、何時?」
「午後3時を回ったところ。お姉ちゃん、よっぽど疲れていたのね?」
「……ここのところずっと、学年末の事務処理で忙しかったから、そうかもしれないわね?あ、私、何かヘンな事を言わなかった?」
「ああ、うん。多分、大丈夫かな?」由理子は眼を逸らした。
「ウアジェト女王は……もう帰ったの?」
「うん、さっきね。酔いつぶれたお姉ちゃんの事、心配してた。」
「まったく。穴が有ったら入りたい気分だわ。」香子は頭を抱えた。
「穴が有ったら入るのは、ウアジェト女王の仕事だけどね?そうそう、鷹志と伯爵は、また、地下の研究室に行ったわ。」
「そうなの……じゃあ、私たちで何か調査しましょうか?」
「たまにはソレもイイかもね……何か気になる事でも?」
「アナタ向きの案件よ。UMA関係なの。」
「あら、ソレはそそられるわね?」
「京子さんの黄色いビートルは、使えるかしら?」
「水中なのね?早速インターホンで、伯爵に問い合わせてみるわ。」
伯爵の答えは"O.K."だった。
二人はすぐに、地下駐車場に向かった。
黄色いワーゲンビートルの運転席に由理子が座り、助手席には香子が収まる。香子は、クルマのメカニズムのには興味が有るが、運転免許は持っていないのだ。
目的地の座標は、香子が以下のように入力した。
西暦1915年7月30日
時刻10時00分
北緯51度15分
東経09度36分
「じゃあ、ユッコ。レッツゴーよ。」
「了解、お姉ちゃん。」
由理子はクルマを地下駐車場から出すと、いつものように光学迷彩を掛けて垂直上昇させ、時空転移装置のスイッチを入れた。
時に第一次世界大戦の最中、その日、ドイツ海軍の潜水艦U-28号は、北大西洋のファストネット灯台から、南西に17kmの地点で、イギリスの貨物船イベリアン号を発見した。
これ以上の物資が敵の手に渡るのを、みすみす見逃す訳には行かない。そう判断したゲオルク・ギュンター・フォン・フォストナー司令官は、ただちにソレを撃沈するよう、部下に命令した。作戦は速やかに実行され、貨物船は間もなく沈められた。しかし、ソレの大爆発の影響で、とんでもないモノが、海面上に現れたのである。




