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「メジェドの居ない日々」(セーラー服と雪女 第28巻)  作者: サナダムシオ


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⑬ お・も・て・な・し

「えっ、今さら?」

「まあ、そういう反応になりますよね?時々やって来る、自由な客人たちに、振舞うんですよ。今までは、コーヒーか紅茶。他にはせいぜい、ホットミルクとかだったでしょ?少しばかりメニューの幅を、大人向け、夜向けに、広げてもイイかなって。」

 杉浦鷹志がそう言った。どうやら彼の提案のようだった。

 なら、イイか?香子はそう思った。


 ちょうどそこへ、入り口のエレベーターから、フルカネルリ卿の姿の、ウアジェト女王が出て来た。

「ああ、フルカネルリ卿……そっちの姿の時は、この名前でよろしいですよね?お久しぶりですね。」


 伯爵がブレンドリーに迎える。どうやら、もうすっかり、わだかまりは無いようだ。

「伯爵、ご無沙汰。ちょっと、地上の様子を伺いに来ました。」彼の姿の彼女も、明るく答える。場面の説明上、何だかややこしいが、仕方が無い。


「アナタも一杯如何ですか?」

「何ですか、ソレ?」

「試作品のカクテルです。鷹志君のお手製ですよ。」


「じゃあ、一杯だけ。」

 そう言ってグラスに口につける。

「ああ、コレは!?」

「不味いですか?」心配そうな鷹志。


「いや、アルコール度数が……高い……から。」

 そう言うと同時に、フルカネルリ卿の姿が、地下世界の爬虫類族の、ウアジェト女王の姿に戻ってしまった。


 明るい時間帯のレストランの席で見る、緑色のスーツを着て、ヌラヌラした鱗に覆われた爬虫類族の姿は、改めて見ると、中々にシュールなモノだった。

「ああ、これは失礼。変身が解除されてしまったな。最近どうも、酒に弱くなってね。」

 彼女は頭を掻きながらそう言った。


「いや、むしろ、アルコールにそんな効果が有るなんて、知りませんでした。」鷹志が恐縮した。

「気にしないで下さい。皆さんさえ、私の姿が不快でなければ……。」

「僕らなら、大丈夫ですけど……ねえ?」

 その場の面々は皆、頷いた。


(まあ、今後ここで、アルコール飲料を提供する時の、参考にはなったかな。)内心、伯爵はそんな風にも思った。

「……ところで、香子さんは大丈夫ですか?」


「え、アタシ?アタシは酔ったからって、カラダがサボテンになったりはしないわよ?」と彼女は、笑えない"変身ジョーク"を言った。


 しかし、その場のみんなが目を丸くしているのに気づいて、「ああ、御免なさい。悪気は無いのよ。やっぱり、少し酔っているみたいね、アタシ。」と言った。恐らく、自分の一人称が、"私"から"アタシ"になっている事にも気づいていないのだろう。


挿絵(By みてみん)


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