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灰と光の調律者  作者: 廣風
4章 砂の国アラディア
34/44

34 教団との接触

砂が落ちる音だけが響いていた。

第四遺跡の空間に、黒衣の影がゆっくりと降りてくる。人数は少ない。だが軽さがなかった。訓練された気配ではない。もっと異質な、揃えられた意思。


「……やはり、ここにありましたか」


中央に立つ男が言う。

ミリアが一歩前に出る。

「教団ね」


男は否定しない。


「我々は観測者です」


カイルが鼻で笑う。

「観測者が遺跡荒らしてんのか?」


男は淡々と答える。

「観測は、干渉を伴うことがあります」


レインは剣を握ったまま目を細める。

「目的は何だ」


男の視線が装置へ向く。


「回収です」


その一言で空気が変わった。

リュカが小さく呟く。

「やっぱり……間に合わなかったか」


ミリアが振り向く。

「知ってたの?」


リュカは答えない。

男が続ける。

「第四遺跡は始まりの鍵。精霊を再構築するための設計図」


カイルが剣を抜く。

「設計図だと?」


男は静かに頷く。


「人間が管理できる世界を作るための第一歩です」


レインの目が鋭くなる。

「そんなもの、ただの支配だろ」


男は首を振る。

「違います。救済です」


その瞬間だった。

リュカが動いた。


「……来るぞ!」


砂が爆ぜる。

黒衣の集団が一斉に展開する。戦闘は一瞬で始まった。

カイルが前に出る。


「邪魔だ!」


剣が振るわれる。だが黒衣の男は避けない。砂そのものが壁になるように動く。

ミリアが叫ぶ。

「精霊干渉してる!直接攻撃じゃない!」


レインが走る。


「なら核を叩く!」


ルミナスが震える。

『下、気をつけて!』


地面が揺れた。

砂の中から黒い紋様が浮かび上がる。遺跡そのものが反応している。

ミリアが目を見開く。

「この遺跡……まだ生きてる!」


男が言う。

「そうです。ここは起動装置ですから」


カイルが舌打ちする。

「説明してる場合か!」


リュカが黒衣の一人と対峙する。その動きは無駄がない。だが、迷いがある。


(また……見てるだけでいいのか)


一瞬、足が止まる。

敵の攻撃が迫る。

その瞬間、レインが割り込む。


「動け!」


剣が弾く。

リュカは一瞬固まる。

レインが言う。

「見てるだけじゃ何も変わらないんだろ」


リュカの目が揺れる。


(また同じだ。あの時と……砂に沈んだ王国。)


リュカは息を吐く。


「……ああ」


そして動く。

ミリアが叫ぶ。

「まずい!遺跡が反応してる!」


中央装置が光り始める。

男が静かに言う。

「予定通りです」


カイルが睨む。

「何がだよ!」


男は答える。


「鍵が揃いました」


視線がリュカへ向く。

リュカの顔が強張る。


「……俺?」


男は頷く。


「あなたは観測者として最適です」


ミリアが気づく。

「まさか……」


「そうです」

男は静かに言う。


「あなたはこの遺跡に繋がっている」


リュカの呼吸が乱れる。


(やっぱり……そういうことか)


装置がさらに光る。

砂が逆流する。

空間が歪む。

ミリアが叫ぶ。

「このままじゃ全部起動する!」


カイルが言う。

「止めるしかねぇだろ!」


レインは装置を見る。

そしてリュカを見る。

リュカは固まっている。


(また、見るだけか)


その瞬間レインが言う。


「行け」


リュカが振り向く。


「……何?」


レインは続ける。


「お前が知ってるんだろ?なら、お前が決めろ」


リュカの目が揺れる。

黒衣の男が言う。


「選びなさい。観測者として留まるか。人間として動くか」


リュカは目を閉じる。


(また、見て終わるのか)


砂に沈んだ記憶。

叫び声。

誰も救えなかった日。

リュカは目を開く。


「……もういい」


一歩前に出る。


「見てるだけは終わりだ」


リュカが遺跡の刻印に触れる。

瞬間、砂が逆流する。

男が驚く。


「なぜ起動できる!」


リュカは低く言う。


「俺が見てたからだ!全部な」


遺跡が軋む。

装置が一時停止する。

ミリアが叫ぶ。

「今!」


カイルが突っ込む。


「邪魔だ!」


黒衣の戦線が崩れる。

男が後退する。


「……なるほど」


レインを見る。


「あなた達は予想以上です」


ミリアが睨む。

「逃がすと思う?」


男は微笑む。


「いいえ。目的は達成しました」

砂の中から何かが引き上げられる。

小さな黒い結晶。

レインが気づく。

「それが鍵か!」


だが砂嵐が起きる。

視界が消える。

男の声だけが残る。


「核は確認されました。次へ進みます」

そして気配が消える。

砂が静まる。

遺跡は半壊している。

カイルが息を吐く。

「クソ面倒な連中だな」


ミリアは装置を見ている。

「これ……まだ終わってない」


レインはリュカを見る。

リュカは手を見ている。


「……やったのか」


レインは言う。


「やったんだよ」


リュカは小さく笑う。


「そっか」


砂嵐が遠ざかる。

第四遺跡は静かに沈む。

ミリアが言う。


「次の遺跡があるわね」


カイルが言う。

「まだ続くのかよ」


レインは空を見る。

ルミナスが小さく震える。


『まだ……いる』


「何が?」


『もっと上……もっと深い』


リュカが呟く。


「やっぱり……全部繋がってる」


砂の国は終わった。だが、仕組みは動き続けている。

教団は次へ進む。

そして、レインたちもまた進む。

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