第88話 アルストールへ
アルストールでの戦いが始まります!
零夜達がアルストールへと向かった直後、孤児院の火は既に消えていた。彼が変わり身の術で逃げた事で、ミミ達はワナワナと怒りで震えていた。同時に雨雲まで生成されてしまい、大雨を降らして火をあっという間に消してしまった。
まさに偶然というべきなのか気になるが、炎に包まれていた孤児院はボロボロになっていた。中は荒れ果てていて、多くの瓦礫が残っている。酷い惨状としか言えないだろう。
「私達がもう少し早く気付けば、こんな事にはならなかったのに……」
「ええ……アンジェリックもようやく戻ってきたけど……帰るのが遅すぎたみたいね……」
アーニャとサーシャは孤児達を救えなかった事を後悔していて、コルディは寂しそうな表情でアンジェリックに視線を移す。彼女は俯いた状態で涙目となっていて、孤児達の事に気付けなかった事を後悔していたのだ。
「ごめんね、お祖母ちゃん……私がいなくなった後、孤児院がこんな事になっているなんて気付けなかった。ロベリアの革命については知っているけど、それによって多くの孤児達が出てしまい、この孤児院に来た事も知らなかった……夢ばかり追っていたせいで……こんな結末になった……」
アンジェリックは崩れ落ちていた孤児院に視線を移し、目からボロボロと涙を流してしまう。アークスレイヤーの襲撃によって自身の居場所を失うだけでなく、仲間まで殺された悲しみはとても大きかったのだろう。
自身が早く気付いていたら、この様な結末は避けられていた。今更考えても失った物はもう戻る事はできないのだ。
「ノア、カトリーヌ、ジャン……迷惑をかけてごめんね……あなた達の命を散らしてしまって……私は本当に…最低な人間よ……」
アンジェリックがノア達に謝罪しながら涙を流す中、コルディは彼女の元に近付いてそのまま抱き寄せる。
「大丈夫。ノア達はあなたの夢を応援していたわ。あなたが立派なミュージシャンになって、このロベリアに希望を持たせる歌姫になって欲しいと」
「ノア達がそんな事を……」
シスターコルディからの衝撃の真実に、アンジェリックは驚きを隠せずにいた。彼等は彼女の事をとても心配していたが、同時に夢を追いかけて欲しいと願っていた。彼女の歌を聴いていたからこそ、心から夢に向かって頑張って欲しいと決意したのだろう。
「私もあなたの事に気付けなくてごめんなさい。孤児院は無くなってしまったけど、私はあなたの夢を応援するわ。だって……私の自慢の孫娘なんだから……」
「お祖母ちゃん!」
アンジェリックはコルディに抱き着き、彼女の腕の中で大粒の涙をこぼしながら泣いてしまった。その様子を見たアーニャとサーシャはお互い頷き合いながら、笑顔を見せていた。
「和解できて良かったけど……後は零夜達がアルストールへと向かったし、仇討ちが成功するかね」
「ええ。私達は役目を果たしたし、本拠地にすぐに戻りましょう」
アーニャとサーシャは役目を終えたと同時に、足元に魔法陣を起動させる。そのまま本拠地へと転移し、その場から姿を消したのだった。
※
同時刻、アルストールでは多くのゴロツキ達で溢れ返っていて、どんちゃん騒ぎが行われていた。お酒を飲んだり食べ物を食べたりと楽しんでいるが、住民達は彼等に怯えながら避けていた。
そんな中、襲撃した五人のゴロツキ達が戻ってきた。リーゼント姿の男は、アルストールのリーダーである雷轟。モヒカンの男は部下のドノヴァン、パンチパーマといった男はサミュエルだ。彼等はヤンキーの服装をしていて、雷轟に関しては白い特攻服だ。
「雷轟さん、お帰りなさい!」
「おう。アビスからの命令で孤児院を襲撃した。簡単な仕事だが、ドノヴァン達がやってくれた」
雷轟はドノヴァンとサミュエル、他の二人を指さしながら説明し、彼等は上機嫌で調子に乗っていた。
「へへっ!子供達を殺しまくったのは最高だぜ!奴等は悲鳴を上げながら逃げ回っていたからな」
「ババァについては気絶させて別の場所に置いといた。子供達を見つけて食料と金貨を強奪し、遺体を一つ残さず消滅させたぜ!」
「そうそう!サミュエルのオールデリートがあれば怖い物なしだ!奴の左手はゴッドハンドと言われているからな!」
ドノヴァンとサミュエルの話にゴロツキ達がガハハと笑いまくる中、雷轟は真剣な表情をしながら彼等の方を向く。それを見たドノヴァン達も黙り込み、雷轟に一斉に視線を移す。
「だが、それによって選ばれし戦士達も黙ってはいられない。まもなく俺達を容赦なく殺しに向かう。油断せず気を引き締めておけ!」
「「「おう!」」
雷轟からの忠告にゴロツキ達が威勢よく叫んだその時だった。
ザシュッ!
「へ?」
なんとサミュエルの左手が突然切り裂かれてしまい、彼の首も切り裂かれて吹き飛んでしまう。この光景に誰もが呆然とする中、サミュエルは糸の切れた人形の様に前のめりに倒れてしまい、そのまま死んでしまった。
「さ、サミュエル!?」
サミュエルの死にゴロツキ達が呆然とした直後、ソニアと杏がドノヴァン達の前に姿を現す。彼女達は真剣な表情をしながら彼等を睨みつけていて、アミリス、マーリン、コーネリア、トラマツ、ノースマンも駆け付けてきたのだ。
「ったく、子供達の命を奪うなんて、ここの奴等はとんでもないぜ……」
「少しばかりお仕置きしないとな……覚悟しやがれ!」
杏とソニアは素早く駆け出し、驚きを隠せないゴロツキ達を次々と斬殺していく。それはまるで清流が流れる動きとなっていて、相手を次々と一撃で倒していた。
ゴロツキ達は予想外の事態に対応できずに次々とやられていき、戦力も三分の一に減らされた。
「なんて女だ!このままだとこっちの身が持たないぞ!」
「逃げるが勝ちだ!」
ドノヴァン達が逃げようとするが、その前にコーネリアが立ちはだかる。彼女は彼等の足元に深淵の闇を発動させ、そのまま魔術を唱え始める。
「ダークレクイエム!」
「「「ぎゃあああああ!!」」」
コーネリアが魔術を発動した途端、ドノヴァン達の足元から闇の柱の波動が発動される。その高さは天を貫く程度にまで登っている為、彼女の最大奥義の一つと言えるだろう。
波動はドノヴァン達に直撃してしまい、彼等は悲鳴を上げた後に塵となって消滅。コーネリア達の怒りを買ってしまった者達の末路は、あまりにも残酷な結末だった。
「これで残るは雷轟だけね!」
コーネリア達は雷轟に視線を移し、真剣な表情で睨みつけながら戦闘態勢に入る。彼もまた、真剣な表情をしながら槍を構え、獲物を狙う様な目をしていた。
「なるほど。ゴロツキ達を全部殺すとは……ここは俺が相手になろう!」
雷轟は自ら宣言したと同時に、槍に電気のオーラを纏い始める。すると槍はトライデントに変化してしまい、柄の色も黄色になっていた。これこそ彼の真の武器である「サンダートライデント」だ。
「雷の処刑人、雷轟!行くぞ!」
雷轟は自ら宣言したと同時に、そのままコーネリア達との戦いに挑み始めた。
雷轟との戦いへ。果たしてどうなるのか!?




