第87話 孤児院の滅亡
今回は悲劇の展開です。
零夜達は空を飛びながら、急いで孤児院へと向かっていた。バブーフの言った事が本当なら、孤児院が滅びるのも時間の問題だろう。
「もう少しで孤児院だ!アーニャとサーシャは今頃そこに辿り着いている!」
「俺達も急がないとな!」
トラマツの真剣な表情での説明に、ノースマンも同じ様な表情で頷いていた。するとエヴァが突然匂いを感じ取り、匂いの発信源を察知する。
「この匂いは炎ね……孤児院の方からするわ」
「その様子だと……遅かったな……」
エヴァの真剣な説明を聞いた零夜が俯いてしまった直後、アーニャとサーシャが空を飛びながら駆け付けてきた。
「アーニャ、サーシャ!」
「大変よ、エヴァ!孤児院が燃えているわ!」
「「「ええっ!?」」」
アーニャからの突然の報告にエヴァ達は驚いてしまい、零夜は冷静な表情で彼女に視線を移す。
「孤児達はどうなった?」
「残念ながら全員死亡……シスターコルディはアンジェリックが手当をしているわ。軽傷で済んだけど……」
サーシャからの説明を聞いた倫子達は何も言えなくなってしまい、呆然としてしまうのも無理もない。子供達を守りきれなかった事はかなりの痛手であり、アークスレイヤーの罠にまんまと嵌まってしまったのだ。
しかし、ここまで来た以上は後戻りはできない。零夜達は頷いたと同時に、燃えている孤児院へと再び駆け出し始めた。
※
零夜達が燃えている孤児院の前に辿り着くと、アンジェリックはコルディの治療を既に終えていた。彼女は治癒術をコルディから教わっていた為、治癒能力も使えるのだ。
「アンジェリック!シスターコルディは?」
「大丈夫。軽傷で済んだわ」
「そうか……ところでノア達の遺体は?」
零夜はコルディの怪我が完治した事に安堵するが、ノア達がいない事に気付く。彼女は首を横に振り、アンジェリックは暗い顔で俯いていた。
「一つも遺体を残らず、塵となってしまったわ……」
零夜は辺りを見回すと、そこには血の跡も何もなかった。遺体の消滅と同時に、証拠隠滅の為に血の跡まで消していた。まさに立つ鳥跡を濁さずだ。
「そうか……手掛かりさえ残れば、犯人が見つけられると思ったが……」
零夜は俯きながら悔やんでいて、トラマツ達も俯いていた。
ヒカリに関しては両膝を地面について、ボウボウと燃えている孤児院を見つめている。彼女の目には涙が浮かんでいて、泣いてしまうのも時間の問題だ。
「皆……助ける事ができなくて……本当にごめんね……う……うわあああああ!!」
ヒカリは我慢できずに大声で泣いてしまい、ミミ達も抱き合いながら大泣きしてしまう。子供達を救えなかった悔しさと悲しさが入り混じってしまい、今の状態に至るのも無理なかった。
ソニア、杏、アミリス、マーリン、コーネリア、サーシャ、アーニャは泣いてなかったが、悔しさで俯いてしまうのも無理なかった。
「無理もないだろう……だが、辛い気持ちは分かる……今は前を向いて進むしかない……」
「ノースマンの言う通りだ。彼等の仇を取る為にも戦うのみ。それが僕達にできる事だ」
ノースマンとトラマツがミミ達を励ましても、泣き止む事はできなかった。こうなった以上は気の済むまで泣かせるしかないだろう。
「仕方がない。俺達だけでも仇を討つしかないな。ミミ姉達があのままじゃ話にもならないし」
「そうね。でも、手掛かりがあれば良いけど……」
零夜の提案にアーニャ達も賛同するが、遺体は消滅していて残るのは燃え盛る孤児院のみとなっている。おまけにお金なども略奪していて、証拠はあまりないのだ。
「それなら炎を付けた犯人を探せる事ができるわ。千里眼で調べてみるわね」
アミリスは千里眼を発動し、孤児院に炎を付けた犯人を捜し始める。すると火をつけた犯人が明らかになり、居場所も特定する事ができた。
「分かったわ!犯人はアルストールにいる雷轟一味よ!アークスレイヤーロベリア支部のボスからの命令により、この様な事をしていたみたい!」
「やはりアークスレイヤーが絡んでいたか!どうやらこいつは放っておけないな!」
アミリスの説明を聞いた杏は、腕を鳴らしながら雷轟達を倒す事を決意。コーネリア達も怒りを感じながら、彼等を倒しに向かおうとしている。
雷轟達がいるアルストールは、ロベリアの電気仕掛けの街と言われている。革命でジャコバンズとアークスレイヤーが来てから、すっかりゴロツキ達の街となってしまっているのだ。
「アルストールは危険な街と聞いているが、元はと言えば普通の街だった。革命によってここまで影響するとはな……」
「何れにしても、この戦いは避けられそうにない。戦えるのは私、ソニア、杏、アミリス、マーリン、零夜の六人だけね」
ソニアとコーネリアの推測に、零夜達も同意しながら頷く。ミミ達は孤児達を救えなかった事でまだ大泣きしていて、今のままでは戦う事が出来ないからだ。
「そうだね……アンジェリック、サーシャ、アーニャ。悪いが彼女達をお願いできないか?」
「ええ。任せといて」
「エヴァ達は私達に任せて!」
「あなた達は孤児達の仇を取ってね!」
トラマツはアンジェリック達にミミ達を預け、そのまま彼等はアルストールへと向かい出す。しかし、零夜だけは動けなかった。何故なら……エヴァが零夜の服を掴んでいたのだ。
「な!?いつの間に!?」
「行っちゃ嫌。こっちに残って」
「うわっ!」
零夜はエヴァに引っ張られ、そのまま彼女達に抱き締められてしまう。アルストールへ向かおうとしているのに、慰めさせる事になるのは想定外としか言えないだろう。
「「「じゃ、ごゆっくり」」」
「おい、コラ!」
零夜の叫びも聞かずにトラマツ達はアルストールへ向かってしまい、この様子にアンジェリックとコルディが唖然としていたのも無理なかった。
「あのな!俺は今、それどころじゃないんだよ!アルストールへ向かって雷轟達を斃さなきやいけないんだ!」
「や!」
零夜が必死でエヴァ達を説得するが、彼女達は聞く耳持たず嫌がる。良い年している大人がこの様な我儘を言うなどみっともないが、こうなってしまえばどうする事も出来ないだろう。
「仕方がない!忍法、変わり身の術!」
零夜は奥の手である変わり身の術を発動させ、彼は木の棒を召喚する。そのまま突風を起こしてミミ達からの離脱に成功し、アルストールへと駆け出し始める。
「脱出成功!急いで後を追いかけないと!」
零夜は急いでアミリス達の後を追い掛ける中、彼に逃げられたミミ達はワナワナと震えていた。慰めてもらおうと思っていたのに逃げられてしまい、その様子にアーニャとサーシャはガタガタと震えながら悪寒を感じていた。
「後を追い掛けるわよ!少しはお仕置きしないと!」
「「「おう!」」」
ミミの合図にヒカリ達が一斉に応え、そのまま彼女達は零夜を追いかけに向かい出す。この様子にアーニャ達が呆然と見つめるのも無理なかった……
零夜はミミ達から逃げましたが……捕まるのも時間の問題となりそうです。




