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神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移  作者: 龍央


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1970/1971

気楽な観戦

ブックマーク登録をしてくれた方々、評価を下さった方々、本当にありがとうございます。



 ――力を求める者がいた。

 しかしその者に才はなく、どれだけ渇望しても手に入らないと諦めた。

 一度諦めれば、求道者になる事はかなわず、ただ粛々と日々を過ごすだけの抜け殻となった。

 だがしかし、そこに救いを与える者がいた。


 求める者に力を与える者。

 それはただの偶然でしかなかったが、力の渇望を諦めた者と、力を与える者との邂逅が、抜け殻を満たしてしまった。

 ただそれだけの事。


 与える者は気まぐれで、求めるから与えたわけではなく、選んだわけでもない。

 求め、満たされた者は、求めたから与えられたわけではなく、選ばれたわけではない。


 だがしかし、かつては渇望した力が手に入り、満たされた者はこれが自身の運命だと、そうなるために生きていたのだと勘違いしてしまった。

 諦め、抜け殻になり、二度と求道者にはなれなかったはずの者。

 道を外れ、戻る事はできないはずの者に、正道を歩む事はできない。

 これがもし、諦めず日々研鑽を続け、認められ選ばれたのだとしたら、称賛される輝かしい道を歩む事ができたのかもしれない。


 しかし一度諦め、求道者になれなかった者は日々の研鑽からは遠く、抜け殻としてただただ生きていただけだった。

 その結果として、正道に戻れず、ただただ自分がそうなるのが当たり前だったのだと、力を得て満たされ、振るう事にためらいすら生まれる事がなかった。

 その者は、力に溺れてしまったのだ――。


「……こうして見ると、最初から仕組まれていたのかもしれないな」


 フラム達が動き出した頃、一人で草原に佇む男が呟く。

 男の視線の先では、あり得ない理想を信じ込み、絶望的な戦力差を理解せず、不可能を成し遂げるために走る者達がいた。

 その者達はアテトリア王国への潜入者であり、帰る場所を失った者達。

 起死回生のため、王国の女王の首を持ち帰らんとしているしている者達であった。


 佇む男は、その不可能へと、絶望へと走る者達を全員相手取ったとしても勝てる、という自負がある。

 それくらいの力を持っていると確信していた。

 そのため、作戦が上手くいけば逃亡のための助力と、この場に佇んでいる。

 帝国に協力するつもりは毛頭なかったが、潜入者達には世話になった事もあり、その恩返しのつもりでそれくらいなら自分にできるという自信もあり、協力する事にした。


「まぁそれでも、逃がすくらいはできるだろう。かかってくるものがいれば、全て俺が砕いてやればいい」


 背を向けて走る潜入者達、その先には数えきれない程の兵士がいる事が、遠く離れた場所にいる男には見えた。

 以前までの自分とは違い、遠くまで見通し誰にも負けない程の力を手に入れた今の自分なら、どれだけの兵士が襲い掛かって来ようと、協力する潜入者達を逃すのは簡単だと、そうたかをくくっている。

 実際、練度が低く統率もなっていない帝国兵士が相手であれば、数百、数千とかかって来ようと、男にはかなわなかったかもしれない。

 それだけの力が、男にはあった。


「とはいえ、本当に逃げられるかどうか。いや、逃げる前に返り討ちに遭うのだろうな」


 力がある男には、それがわかった。

 何故なら、潜入者達が向かう遥か先には、数百程度の人と魔物を簡単に飲み込む程の兵士がいる事が見えていたから。

 何か、空を飛ぶ巨大な生物らしき影も見えた気がするが、関係のない魔物だろうと視界から外したが。


「とりあえず、少数くらいは生き残りを逃がす程度の働きはせねばな。力を持つ者は、力なき者を庇護してやらねばならぬ。それが、掟であり本能だ」


 呟いた男は、敗色濃厚……いや、殲滅確定の潜入者達に助力するため、ゆっくりと前に歩を進める。

 自分が得た力を思う存分に振るえると、獰猛な笑みを浮かべながら、背中に背負った大剣を手に持ちつつ。

 外した視界、その遥か上空から、強大な何かが近づいてくる事すら気付かずに。

 力に溺れた者は、自分より強い力を持つ者に、気付ける冷静さや観察眼などは持ち合わせていなかった――。



「おぉ、凄いね。皆一斉に動き始めた」


 エルサに乗り、上空から軍隊の動きを見渡す。

 俺達やユノ達にかき回されていた名残はなく、予想以上の速度で東へと動き始めた国軍・貴族軍の連合軍。

 一部、離脱していた貴族軍や国軍兵士さんとかも途中で合流しているようだ。


「こういう統率が取れた動きというのはさすがね。訓練のたまものというところかしら」

「まぁ、最初からわかっていた事でもあるからな」


 俺と同じように、エルサの背中から地上の動きを見ているモニカさん、ソフィーが言った。

 フィネさんも同じように地上を見下ろしているが、どうやら全体というより一部に注目しているようだ。


「ですが、冒険者達は少々遅れているようですな。終わったら、喝を入れねばなりませんか」

「それは酷ですよアマリーラさぁん。個々やパーティでの訓練はしていても、今回は少数で別けているんですからぁ、ただぶつかるだけじゃなくてぇ、転身などは一歩や二歩は遅れるものですよぉ」


 さらに、アマリーラさん、リネルトさんが続いて発言する。

 確かに二人の言う通り、演習地に点々といている冒険者さん達は、数が圧倒的に多い軍隊よりも動き出しが遅れているように見えた。

 まぁ足並み揃えて動くのとか、そういった訓練はほぼしていない人達だから、リネルトさんの言うように仕方ないと思う。


 あと、部隊ごとに報せる必要があるので、人数の少ない冒険者側としてはそういったのは不得手であり、情報が遅れたのも理由の一つかもね。

 むしろ、周囲の兵士さん達の様子などを見て、報せが行き届くよりも多少なりとも早く動き出していた人達がいたのは、褒めるべきだと思う。


「そろそろ、結界の上空なのだわー」

「うん、ありがとうエルサ。俺達はこのまま、空で待機だね」


 俺達は、戦闘中にエルサからと、少し遅れて姉さんからの報せによって、演習を中止し巨大化したエルサに乗ってフィリーナが張ったぷにぷに結界の上空に来た。

 一緒に乗っているのは、同じ部隊として暴れていたモニカさん、ソフィー、フィネさん、アマリーラさん、リネルトさんに加えて、ユノとロジーナ、それからレッタさんも途中で回収して一緒に乗っている。

 これから始まる戦闘、演習ではない実戦に備えて集めた形だね。

 とはいえ、俺達の役目はもしもの際に投入される戦力であり、姉さん達を守る役でもある。


 まぁ姉さんはフィリーナの結界に守られているので、そうそう簡単に危険には晒されないんだけど。

 それはともかく、これは実戦である。

 だけど全ては計画された事でもあり、向こうは奇襲と思っているだろうけど、こちらとしては予定調和。

 そして帝国に対する前哨戦のようなものと考えているようで、基本的に俺達は手出しをしないと決まっていた。


 全て俺やエルサ、ユノ達でやってしまうと前哨戦とかではなくなるからね。

 訓練というわけじゃないけど、兵士さんや冒険者さん達に実戦を経験させたうえで、帝国と戦って勝利したという経験を積むような事をさせたいというわけらしい。

 勝ちが約束されているような状況だけど、だからこそ兵士さん達の士気向上や、実戦経験という意味でも必要なんだろう。

 まぁ確かに、しばらく戦争を経験していない王国としては、初めて戦場に出る兵士さんもいるだろうし、いきなり大規模な戦力同士がぶつかってもまともに動けない人もいるかもしれないしね。


 魔物と戦った事はあっても、人と戦うのはまた別物だし。

 なんというか、ハーロルトさんと姉さんが今回の事をほとんど考えたわけだけど、それに利用された帝国から潜入してきた人達、反抗勢力だっけ? その人達がちょっとかわいそうではある。

 とはいえ、反抗勢力に関してハーロルトさんが入手した情報によると、帝国で悪さをした……要は犯罪者で反省もほぼしていないような悪人であり、帝国から見捨てたような人物達らしいので、同情の余地はないか。


 しかも、アテトリア王国に潜伏している間も、こちらの国で多少の悪事を犯しているらしいから、この機会に完全に殲滅したいと思う気持ちもわかるというものだね。

 どこかに潜ませていたのか、それとも最後に絞り出して復元したのか、魔物も一緒にいるみたいだし。


「それにしても、まるで魔物が追い立てられているように見えるね。まぁ、戦力として使う以上先頭に出してというのはわかるんだけども」


 空から遠くまで見渡せば、俺達のいる場所――というより、姉さんがいる所を目指しているがわかる。

 それはハーロルトさん達の情報操作で、姉さんの居場所なども含めてわざと漏らすようにしており、反抗勢力が攻めて来る方向なども含めて計画通りみたいなんだけども。

 ともかく、大量の魔物が向かってきているその後ろに、多くの人が何かを掲げながら追いかけているように見えた。

 多分、掲げているのは武器とかだろうけど。


「そうね……指揮者がいないからでしょうね」

「指揮者?」

「私もそうだったけど、他にも何人か魔力貸与されたのがいたでしょ?」

「えっと、クラウリアさんとか、ツヴァイとか?」

「えぇ。そういった魔力貸与されたのには指揮権みたいなのが与えられるのよ。それで――」


 レッタさんが遠くを見渡しながら、納得したように頷きつつ教えてくれた。

 それによると、魔力貸与された人物のアテトリア王国での役割の一つに、潜入者達の指揮とかがあったらしい。

 要は、潜入者達を部下として使えるって事だけど、それに伴って、復元した魔物を細かくはともかく大まかに命令を与えられるような仕掛けを施していたとか。

レッタさんはさらに、魔力誘導によってその仕掛けと合わせる事で他の人より細かく、そして多くの魔物を動かせたみたいだけど、それは数も強さも特級と言えたセンテでの事を思い返せばよくわかるね。


 ともかく、そうした指揮をする人がいない状況である以上、追い立てるようにして動かすのが精一杯なんだとか。

 一応、味方と認識させている帝国側の人間を襲わないような措置はされているらしいけど、指示を出せるわけではないので、ただ追い立てて目標へ突っ込ませるくらいしか利用方法がないみたいだ。


「見る限り、強力な魔物は多くないし……というか、そういった魔物は大体私が使ったし、他に残っていたのも王都近辺に解き放っていたから、ほぼ討伐されているのよね。もうあれは烏合の衆と言っていいわ」

「成る程……」


 王都付近に解き放たれ、点在していた魔物は俺達だけでなく、騎竜隊の活躍などもあってほぼ殲滅したと言っていい。

 まぁ隠れるのが得意で少数とか、人を襲う事の少ない性質の魔物とかが密かに残っている、とかはあるだろうけど。

 そういう魔物も、戦争に備えて軍の一部が移動を開始しているため、哨戒も兼ねて遭遇したら討伐するとの事だ。

 ちなみに解き放たれていた魔物は、抱えきれなくなったからそうした部分が大きいとか。


 指揮をする人がいなくなっただけでなく、レッタさんや俺がヘルサルで掴まえたクラウリアさん、尋問したツヴァイなどが情報を出したおかげで、王国各地に潜伏していた人達の居場所などは全てと言っていい程暴かれた。

 魔物が解き放たれたのはレッタさんがセンテを攻めている前後のようだったけど、水面下ではハーロルトさんがクラウリアさん達の情報を元に動いていて、魔物を保持した状態では逃げられないと考えたからだろう。

 そこに追加でレッタさんによる確度の高い情報提供で、潜伏先を全て割り出したと。

 自身は帝国に潜入しつつ、部下にはきっちり仕事をさせて今回の作戦を実行できるまでにしたハーロルトさん率いる情報部隊の人達はさすがだね。


「魔物は……Bランクが少数いるくらいで、他はCとかDランクの魔物のようね」

「見た事のある魔物も多いが、本来ならあれでも十分脅威なんだがな。似た状況で街や村が襲われたら、付近の冒険者ギルド複数に緊急依頼が出るくらいだ」

「私達、特にリク様がですが、関わっている魔物の襲撃が特別な事が多かったからか、なんだか見慣れた、でも拍子抜けのような感覚もありますね」


 迫って来る魔物達を見つつ、そんな事を言い合うモニカさん達。

 実際のところ、あれだけの数の魔物が迫って来るのは緊急事態と言っていいはずなんだけど、これまでの経験を考えると、数も質も低いと感じてしまう不思議。

 Bランクのマンンティコラースやオルトス、さらにガルグイユなんかも遠目に確認できるけど、かなり数は少なくそれぞれ片手で数えられる程度。

 ほとんどがCランクやDランクの魔物で、しかも割合としてはDランクの魔物の方がはっきりとわかるくらいに多い。


 もし兵士さんや冒険者さん達が、魔物と同数で当たるとかなら苦戦したり大きな被害を覚悟したかもしれないけど……なんだろう、全然危機感みたいなのはない。

 まぁ、これまでが特別すぎたというのもあるんだろうけど。


「そんな事を話している間に、そろそろぶつかるみたいよ。――はい? どうされました、ロジーナ様?」


 北から演習で無事だった軍が包み込むような布陣で近付き、俺達の下というか、姉さんのいる場所付近からは一度演習で離脱した軍が再編成されてゆっくり近づきつつ待ち構える。

 さらに南からは、他と比べれば少数ではあるけど冒険者さん達が魔物達へと近づいていくのが見えた。

 今回は主に軍で戦う想定なので、冒険者さん達は逃げる人や漏らした魔物を討伐する役割で、突撃とかはしないんだけどね。

 そんな中、反抗勢力と二方向の軍がかなり接近したくらいに、レッタさんはさらに遠く東の方をジッと見ていたロジーナとユノに呼ばれた……なんだろう?


「始まったな。おそらく、魔物達を追い立て、目標に向かう事に精一杯で視野を広げられなかったのだろう。北の軍には気づいていなかったみたいだな」

「そうね。遠くから降り注ぐ矢と魔法であっさりと足を止められ、混乱。軽々と包み込まれたわ」


 ロジーナ達の方は気になるけど、戦況はすぐに動いた。

 反抗勢力に余裕がなかった事が大きく、そのための誘導だったのだろうけど、功を奏したと言っていいくらい簡単に北からの奇襲が成功したのが見える。

 奇襲と言えば、少数だったり兵士さんが身を隠せる場所だったりとかでやるイメージだけど、開けた平野と言える場所で、しかも反抗勢力の十倍以上の数で押し寄せているんだから、気付きそうなものだけど余裕がないとそういう事もあるみたいだね。

 まぁ、数人が気付いても、既に魔物を勢いよく追い立てている状況で、対処のしようがなかったのもあるかもしれない。


 ともかく、戦いなのでこういう言い方は悪いかもしれないけど、面白いように遠距離攻撃によって魔物、潜入者が被害を受け、完全に全体の足が止まったところで騎馬による迅速な包囲。

 さらに後詰めで残りの兵士さん達が固めて、反抗勢力は抵抗しつつも身動きが取れなくなったようだ。

 これ、上から見ている限りでは逃げる隙間とかなさそうだし、冒険者さん達の出番はなさそうだなぁ。

 作戦がカッチリはまって、全体の被害が少ないならそれに越した事はないし、作戦行動や行軍の訓練と考えてもらおうかな――。



作戦、数、質、何から何までアテトリア王国が負ける要素がないようです。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。

また、ブックマークも是非お願い致します。

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