Vol.2 夢人 −空夜の旅 Ⅰ −
病院から学校へ行くまでの間、廉は悶々として
歩道を歩いていた。時刻は既に12時をまわっている。
道路には人や車が行き交い、街は真昼の賑やかさに
包まれていた。
廉は駅のホームへ向かった。
いつもの場所で電車を待つ。
今から登校しても午後の授業しか出られないだろうが、
真岡の両親に彼女のことはいいからと追い出されてしまったから、
しかたない。
今頃学校ではすごい噂だろうな…………
と、そんなことを考えていると、反対側のホームに
立っている男に目が留まった。廉より2、3歳年上の若い男。
少し長い銀髪を後ろで結んでいる。
男は、じっと廉を見つめていた。
「…………………?」
廉はちょっと不気味に思って、目を横にそらした。
ちょうどその時、電車がホームに到着した。廉はそれに
乗り込むと、ちらりとさっきの男の方を見た。
まだ廉を見ている。
電車が動き出した。
男は廉の姿が見えなくなるまでずっと見ていた。
「レン!何だよお前、今来たのか?」
学校に着くと、友人の厳原亮太が
話しかけて来た。
「その………鳳は?何かあったのか?」
廉の浮かない顔を見て察したのだろう、亮太は
遠慮がちにそう尋ねた。
廉は辺りを見回し、誰も聞いていないことを
確認してから答えた。
「そのうち先生からも聞かされると思うけど………
今は誰にも言うなよ? 真岡が昏睡状態になったんだ」
亮太は驚いてゲホゲホとむせ込んだ。
「な、何で?!」
「分からないから困ってんだよ。手の打ちようがなくて。
医者は精神的原因があるって言ってたけど………………」
亮太は怪訝な顔をして言った。
「精神的?とてもそうは思えないな。
成績優秀で学年一の美人。家族との仲も友達付き合いもいい。
鳳に悩みなんてなさそうだけど。」
廉はため息をついた。真岡がああなった原因も知りたいが、
それよりも心配していることがあった。あの医者は、
真岡がずっとあのままだという可能性もあると言った。
もし本当にこのまま目を覚まさなかったら………………。
その時、授業の予鈴ベルが鳴った。
廉と亮太は沈んだ気持ちで教室に入った。




