Vol.6 襲撃 ーⅠー
「ちょっと廉!いつまで寝てるの?!」
母の唐突な雷に打たれて、廉ははっと目を覚ました。ガバッと身を起こした拍子に、枕元に積まれた『日本剣道』の雑誌がバサバサと落ちた。
目覚まし時計を見る。午前7:00。ヤバい、寝坊した。早く公園まで行かないと。もう真岡が来ている頃だ。
あわててベッドから飛び降り、制服のかかったハンガーに手をかけた瞬間、廉ははたと動きを止めた。
…ん?何かおかしいぞ。今あいつは………入院中のはずだ。あれ、待てよ。それもおかしいな。だってさっきまで一緒にいたのにーー。いやいや、一緒にって………………どこで?
「あ」
ようやく頭の中でピースがはまった。
と同時に、新たな疑問が浮かび上がってきた。
夢幻郷だ。
俺はついさっき、クイーンズベリー城にいたんじゃなかったか?ほんの数分前に寝室の前で真岡と椎那とーーいや、ヴィオラとリュードとーー別れたんだ。そして部屋に入って、寝衣に着替えて、あの大きなベッドに横になってーーーー
そして、ここにきた。いや、戻った。
つまり゛あっち゛の俺は今、眠ってるってことか?
廉は椎那が言っていたことを思い出した。
「ー夢人っていうのは、現実とは別の世界……異世界に行くことの出来る者のことだよ」
…なるほど。じゃあやっぱり、どちらかの世界で眠っている間、もう一方の世界で活動できるってことか。
でも戻ってこられたのは俺だけ。
真岡にはできないんだ。
その理由はきっとただ一つ。
廉はもう一度、椎那の言葉を思い出していた。
「ーいいか、ここでは君の本名は絶対出すなよ」
真岡は何者かに、その名を縛られているのだ。




