Vol.5 クイーン ファンタジア - Ⅲ -
ジオンに与えられた部屋は、3階にある広さ30畳ほどの
広い個室だった。床には派手な模様の絨毯が敷かれ、壁はうすい
クリーム色、天井からは大きなシャンデリアが吊るされている。
電気というものは無いらしく、壁やテーブルの上にろうそくが
立てられ、こうこうと燃える炎がゆらゆらと揺れている。
これだけでも室内は割と明るく、むしろ眩しすぎるLEDよりも
落ち着く。部屋には大きなカーテン付きベッドが置かれ、窓の外には
バルコニーまであり、美しい町が見渡せるようになっている。
ジオンは、部屋のソファに腰掛け、
夢うつつな気持ちで虚空を見つめていた。
まるで中世ヨーロッパ時代にタイムスリップしたみたいだ。
かと思えば、塀の外にはジュラ紀のジャングルみたいな森………
しばらくぼうっと座っていると、コンコンというノック音がして、
リュードと一人の召使いが入って来た。
「ジオン、晩餐の時間………ってあれ、まだ
着替えてなかったの?みんな待ってるよ」
見ると、リュードは黒い服の上に白い上着を着て、下も白の
ズボンに白い靴という格好をしていた。左胸に装飾がついており、
腰には剣を提げている。
「あ、悪い……すぐ行く。外で待っててくれ」
ジオンはベッドの上に用意されている服に着替え始めた。
数分後、ようやくジオンが部屋から出て来た。
赤いジャケットに紺のズボン。ベルトは少しサイズが大きかった
らしく、ナナメになっている。
「よし、じゃあ行こうか」
リュードが言った。
召使いの男が先頭に立ち、その後にリュードとジオンが横に並んで
赤いカーペットが敷かれた長い廊下を歩いていった。
食堂に着くと、イザベラとヴィオラが先に席にすわって話していた。
テーブルの上には豪華な食事がずらりと並んでいる。
ジオンは自分が夢幻郷に着いてから何も
食べていないことに気づいた。
全員が席につくと、料理人が料理の説明を始めた。
「こちらはオマール海老のポワレとサフランリゾットに当家の
特製クリームソースを使用したものにございます。こちらはーー」
ふと、ジオンは帰れるのだろうかと思った。今現実世界の「廉」は
眠っている状態のはずだ。なぜ腹が減るのだろう?
だが、料理人の説明が終わっていざ食べ始めると、
小さな不安などどこかへいってしまった。




