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Vol.3 夢幻郷 −introdaction−
緑の生い茂る深い森の中に、少年は立っていた。
そのたくましい身体は日に焼けて褐色に染まり、
風にゆれる黒髪の下で真紅の瞳が鋭い光りを
放っている。背に弓矢をかつぎ、手には長槍を
持って武装している。原始的な民族衣装をまとい、
鳥獣の羽根や牙でつくられたアクセサリーを
身につけた少年は、遠くにそびえ立つ城砦を
見つめていた。
「何やってるアルマ、行くぞ。早くじい様に
報告するんだ。…夢人が現れたと」
少年の仲間だろうか、似たような格好をした
気の強そうな女が、木の上から少年を呼んだ。
「ああ……すぐ行く」
少年はそう答えると、肩にかけている矢筒を
背負い直してから、軽やかな身のこなしで
木を登っていった。




