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Vol.2 夢人 −空夜の旅 ⅴ −


「そんな目で睨まないでよ。怖いから」


口元に笑みを浮かべながら、男が言った。

その余裕な表情は、どこか不思議な雰囲気を漂わせている。


廉たちはとある喫茶店の、一番奥にある席に

向かい合って座っていた。


「悪かったね、せっかく友達と帰ってたのに

 ………………飲んだら?」


男はテーブルに置かれた紅茶を廉に勧めた。

それを無視して、廉はぶっきらぼうに返した。


「…………………用件は?」


ちょっとの間廉を見つめてから、

男はあきらめたように肩をすくめた。


「わかったよ。じゃあ本題に入ろうか。

 ……まずは自己紹介だね。俺の名前は椿椎那つばきしいな19歳。

 大学1年生だよ。趣味は読書で特技はフェンシング。

 好きなものはスリル、嫌いなものはわがままな女性。

 …………そして」


椎那はここで一瞬間をあけた。


「…………君と同じ夢人ゆめびとだ」



……何だって?

廉は顔をしかめた。「夢人」? 何だそりゃ。


「夢人っていうのは、簡単に言うと寝ている間だけ

 現実ココとは別にある世界……異世界に行ける者のことだよ。

 でもこれは誰にでもできることじゃない。夢人は”資質”を持つ者、

 選ばれた特別な人間しかなれない存在なんだよ。そして君はその

 ”資質”を持っている。それも、かなり強いね」


聞いているうちに、廉は頭が混乱してきた。

夢人だとか異世界だとか言って………

椎那コイツは相当イカれてるらしい。


「………悪いけど俺はオカルトには興味ないんで」


そう言うと、椎那はからからと笑った。


「あはは……まぁにわかには信じられないよね、やっぱり。

 でも君の大事なお姫様ーーー真岡嬢も夢人だよ?

 今彼女の意識は完全に”あっち”に行ってる。だから

 目を覚まさないんだ」



「……………何だと?」


廉は、思いがけず「真岡」という名が出て来たことに

驚き、いぶかしんだ。

椎那はさらに話し続けた。


「俺はある人から君たち二人を”あっち”に連れて行くよう

 命令されててね。ちょっといじらせてもらったよ。君たちの

 夢人の”資質”を開花させるために。


 …もっとも、君は精神が強すぎてうまくいかなかったけど」



「……真岡は無事なんだろうな」


廉は怒りのこもった声で問いただした。

椎那がにやりと笑う。


「もちろん、元気だよ。”こっち”にはいないけど。

 …………………………………会いたい?」


廉は押し黙って、椎那を睨みつけた。


「黙ってるのはYesの意でとらえていいね?

 じゃあ今夜寝る時、強く『行きたい』と願うんだ。

 そしたらまた『迎えに行く』よ」


立ち上がりながら、椎那は言った。

そして、廉の横を通り過ぎる時、


「それじゃまた、星のあまねく神秘の夜に会おう。

 楽しみにしてるよ」


そう言い残して、彼は店を出て行った。



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