PART.21 看病と感情
タイトルを『無自覚ハイスペックな専業主夫 ~女優学生に匿われておりますが僕はいたって普通です~』から変更しました。短くなったので覚えやすくなったかなぁと思っています。
自分でも名前を変えた経緯が分かりませんが、ひょっとしたら、もっと多くの人にこの作品を知ってほしかったのかもしれません。
実際は畏れ多いと思っているのは事実なんですが…。
これからも、この作品をよろしくお願いします。
俺は今までの人生で一番混乱している。和美が俺を殺そうとした時よりも焦っているだろう。
何で友里さんがリビングに倒れているんだ…!?
混乱し、実際どうしたらいいか分からなくなってしまっていたため、取りあえず友里さんの脈拍を測る。左手首に指を添わせ、時計の秒針を見て十秒間、測る。
その十秒間、生きた心地がしなかった。脈拍は早いが、そこまで重大な病の可能性は低い。考えられるのは過労か偶然床で寝てしまったのか…。
額に触れてみる。
…熱い。体温計で熱を測ると三十八度五分もあった。
俺は友里さんの肩を揺すり、友里さんを起こす。
「友里さん!友里さん!」
「………っ………あ、健也君…。」
「心配したじゃないですか!」
「…………泣かなくていいじゃん……………………。」
「泣いてるか泣いてないかなんてどうでもいい!」
「……………頭がガンガンする…。」
「今日は学校休んで!えっと、今日はお仕事はあるの?」
「………学校だけ…。」
俺は時計を見る。七時十五分、いつもなら朝食を作り始めたり温めたりする時間帯だ。
スマホで友里さんの大学の電話番号を調べ、俺はすぐに電話をかける。
『事務室の橋本です。』
「もしもし、冴島友里さんの家で雇われている影山健也です。」
『影山健也さんですね。どうしましたか?』
応対したのは男性の従業員だった。少しだけ不満げな声に聞こえ、俺は少しその顔を歪める。
「冴島友里さんが熱を出してしまいました。本日は欠席という連絡を入れさせていただきました。」
『分かりました。それだけですか?』
「出来れば、担任の先生…教授に連絡を入れてください。」
『分かりました。話は以上ですか?』
「はい、お忙しい中申し訳ありませんが、よろしくお願いします。」
…ッ
プープープー
電話が切られた。彼は何故か非常に不機嫌そうだった。体調が良くなったら友里さんに聞いてみよう。
友里さんは怠そうにぐったりとしてしまっている。
…ごめんなさい。
「あとでいくらでもお叱りは受けるから!」
俺は友里さんの背と脚に手を通し、お姫様抱っこと言われる持ち方をした。
正しい持ち方かは分からないが、多分これが最善だ。
「…。」
「…。」
気まずい沈黙と友里さんのいつもより熱い体温が俺の心臓を痛いほど鳴らし、友里さんは辛そうに息を上げる。
俺は急いで、けれど負担をかけないように二階の友里さんの部屋へと入る。
ベッドに寝かせ、コップに水を、そしてすぐに薬局へと走る。
以前、俺が体調を崩した時、薬の話題になったことがある。その時、特にアレルギーを持っていないと聞いていたため、取りあえず自分のバイト代から解熱剤と額に貼る冷たいシートを購入し、走って帰る。
自転車はないし、そのまま走っていたのだが、周りの自転車より俺の方がずっと早くて、自転車使うより走った方が早くね?と思ったのは内緒だ。
帰宅後手を洗い、消毒も済ませてから友里さんの部屋に入る。今はリズムよく寝息を立てている。良かったと思ったものの、コップの水が減っていないことに気付いた。少し温くなってしまっているため入れ直そう。それとお腹も減るかもしれない。現在の時刻は八時三分。薬を購入するのに少し手間取ってしまったらしい。
シートを額に貼って、朝食の準備をすることにした。全力で走ったからか俺も腹が減ってきた。
さて、友里さんがお腹を空かせるかもしれない為粥を作ることにする。あまり食べれないかもしれないから量は少し少なめだが。えっと、胃腸が弱っているわけではなさそうだし、卵粥でも作ろうか。えっと、作ったことはないからネットで調べながらっと…。
あらら、少し火を入れ過ぎた。えっと味は………。
…焦げ目がついて酷い味だ。それと少し醤油を入れ過ぎた。これじゃ少し辛すぎる。
あ、これは出せない。これは俺の朝食にしよう。
二回目はあっさりできた。どうやら、初めて作る時にはいつも以上にプレッシャーがかかってできなくなってしまうみたいだ。そう言えば、前作った刺身の漬けを焼いた料理、あの時は生臭い感じがしてしまったが二回目は意外と美味しくなった。実際、漬けを焼いて食べる料理があるんだとか…。二回目は上手くいったということは、そう言うことなのだろう。
時間がかかってしまい、現在の時間は八時半を過ぎたところだ。いつもなら、そろそろ学校についている頃のはずだが、今日は家だ。講義は八時四十分から始まるらしく、結構ギリギリらしい。もう少し早く行ってらっしゃいが言えるように料理で何とかしてみようかな?弁当作戦(既に毎日作成している)?をしてもう少し早く起きれる様にしようかな?でも、生活リズムは人それぞれだし…。
…友里さんが元気になったら相談してみよう。
「友里さん、朝食の時間だよ。」
「…あ、健也君。」
「これ、卵粥。」
「ありがとう…。」
俺は小さな鍋に入っているそれを茶碗によそい、友里さんの前に持っていく。
「ホントゴメンね?ちょっと課題のレポートが終わらなくて。」
「そうだったか…。えっと、気付けずごめん。」
「大丈夫だよ。…あー、ちょっと疲れてるみたいだな…。」
「大丈夫?」
「うん。えっと、その…。」
「?」
友里さんは少し悪戯をする子供みたいな顔をしつつも、真っ赤になった顔でこう言った。
「あーん、して欲しいなって。」
「!?」
「あ、動揺してるのかな?ういうい!」
どうやら、熱を出して少し甘えたくなってしまっているらしい。大分疲れているのはよく分かった。
でも、ちょっとからかわれて悔しいので平然を装ってスプーンを持ち上げ、粥を救い上げて友里さんの口元へ運んだ。
「はい、どうぞ。」
「!?」
「?食べないの。」
「た、食べる!」
「熱いから気を付けて?」
「熱ッ!」
「だから言ったのに…。」
「ふぅ…ってやって!」
そうだよね、そりゃそう来るよね?悔しかったらそりゃそうやって少し悪戯エスカレートさせるよね?
ま、読み通りですけど。
「ふー…。…はい、どうぞ?」
「あ、ありがとう。…美味しい。」
こんな感じで、何だかんだありながらも友里さんの朝食は終わった。
ゆっくり横になる友里さんが、俺に話しかけてきた。
「甘えちゃってごめんね?迷惑じゃなかった?」
まさか。
俺は友里さんが好きだ。少しくらいの我が儘くらい聞けるさ。
でも、こんなことを病人に、しかも勇気のない俺が言えるわけがない。
「…迷惑じゃ、ないよ。」
「そっか…。」
「そ、そうだ。さっき薬買ってきたんだ。これ、解熱剤だから少し楽になると思う。一応、風邪薬ももらってきたよ。」
「ありがとう。さて、明日には元気にならないとね。」
「無理しないで。流石に仕事明けから徹夜で体調崩したんだからさ。明日大丈夫だったらいいと思うけど、体調崩しちゃったら元も子もない。俺だったらもうちょっと休んじゃうと思う。」
「だよね。…でも、こんなにも私を心配してくれてる専業主夫がいるんだから私は幸せ者だね。」
いきなり友里さんが爆弾を投げつけてきた。普通に日本全土が焦土と化すレベルの爆弾だ。どこにどう投げたらいいんだ!?
…まあ、好きな人からいきなり『夫』呼ばわりされるわけだ。そりゃ片思い中の男子高校生…とは言えない状態の俺でも流石に嫌でも意識してしまう。
「!?え、ええ!?お、お、夫!?」
「あ、慌てた。」
「あ、慌てるよ。何だい夫って…。」
「からかっただけですよ~。」
「ああもう、びっくりしたぁ。じゃ、これ下げておくよ。後は水分補給もちゃんとしてね?ってことでさらば!」
そう言って俺は逃げるように部屋から出た。
バタバタ音を立てて、自分に似合わない空気を撒き散らして。
「はぁ、心臓ねじれるかと思った…。」
そんな意味わからないことを言うレベルには、冷静さを失っていた。
「『夫』って言っちゃった…。」
私はベッドの中で会話を思い出して身悶えていた。
「やっぱり、健也君と話してるといろいろ口が滑っちゃう。まだ私は女優、大学生、未成年。もう少しで成人年齢が引き下げられるけど、それでも流石に夫って…。」
結局そのあと戻ってきた健也君に『安静にしててよ…。』と小言を貰ってしまったんだけどね。まあ、彼の献身的な看病のおかげで翌日にはすっかり良くなって大学にも行けましたとさ。
でも、いつになったら健也君と恋人になれるんだろ。というより、さっきの私たちの会話、客観的に見てたら恋人のそれだと思うんだけどね…。
はぁ、いつになったら健也君は私の気持ちに気付いてくれるんだろ。健也君の私への好感度は高いはずだし…。
大分この章も終わりが近づいてきました。ええ、本当はPART.23くらいで終わらせるつもりだったんですよ?でも、思ったよりも続けられそうだなって考えたらどんどん筆が進んで?行ってしまったのでこのまま爆走していこうかなと思っています。
筆者の暴走と、健也君と友里さんの物語にこれからもご期待あれ?いや、筆者の暴走はこの際無視してくださいお願いします多分!




