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(第二章は削除しました)無自覚ハイスペックくん、女優学生に拾われる。  作者: 柏木悠斗
1st. あなたは自分の大切な…。
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PART.15 彼がいない日 前編

さあ、今年度最後の投稿となりましたが、皆さん、いかがお過ごしでしょうか。なかなか、物語は進まないものですね。ペースはある程度戻せているつもりですが、なかなか筆が進まず…。

まあ、泣き言は言わずに頑張って書きます。応援よろしくお願いします!


一応、この『PART.15』は初めは影山健也視点、その後冴島友里視点となります。

「38.7℃か…。はぁ、何でこんなことに…。」


 昨日から始まった唐突な生放送によって寝る時も緊張してしまい、上手く寝付けなかった所為か、俺は体調を崩してしまった。今日の料理は昨日作りすぎた料理の余りだ。だから、あまり多く食べられないだろう。友里さんには悪いことをしてしまった。


 俺は今日一日は安静にしているように彼女に言われてしまった。しかし、俺は心配を隠せない。洗濯や料理をほとんど友里さんが出来ないからだ。いや、人並みには出来ると思うが、お世辞にも慣れているとは言えないだろう。


 一応、始めにここに雇ってもらう(住まわせてもらう条件)として家事を行うというモノがあるが、基本それは毎日やってきた。とはいえ、緊張は常にしていたのかもしれない。友里さんと呼ぶことになったのは、結構無茶なことだったのかもしれない。俺はそんなことがあるとは思えないが、友里さんが俺を家から出すと言えば俺は素直に出なければならないからだ。


 とにかく、今日は本田芽唯さんが家に来てカレーを食べるということになっているため、本当は俺が出たかったんだが…。


 しかし、それで体調を壊したら元も子もない。大人しく今日は休むことにしよう。



 私は健也君が心配だった。いや、彼は時々、『自分は丈夫だから大丈夫』なんて言っていたから病気なんかに掛かりにくいんじゃないかと思っていた。でも、意外とすぐ体調を崩してしまったため、正直不安になっていた。


 健也君は昨日、私が名前呼びをお願いしたこともあったが、何故か目を合わせると少し顔を赤らめる。

 それは私にとっては嬉しいことだけど、昨日ハグしたこととか、キスしそうなくらい顔が近くにあったこととか、自分から名前呼びをお願いしたという事実が、ちょっとした気まずさというか、距離を近づけすぎたかという反省か恥ずかしさを助長する。


 とはいえ、彼は私と一定の距離を取ることを是としていることは明らかだ。少なくとも、女優として生活している私のことを別の視点で意識し始めているのは確定してる。彼自身、その感情に気付いていないようだけど。


 少なくとも、今この状況においては、彼が母親に殺される心配は減ってきたはず。少し前、彼の母親を逮捕することが決定したという旨の書類を事務所から受け取った。健也君は犯罪者の息子という肩書がついてしまっているが、彼自身はむしろ被害者だ。就職に不利にならないようにいろんな方が手を打ってくれていることは分かっている。

 とはいえ、彼の母親の再婚相手は彼女にとうに見切りをつけていて、彼女はすでに孤立していたため、暴走してさらに放火を続ける可能性だって否定できない。隣の家に火を点けて、火災に巻き込んで殺そうとすると、健也君は考えていた。その為、健也君は私に危害を加えられないように最悪の場合殺されることを考えているようだ。


 当然、そんなことはさせないし、私だって彼には死んでほしくない。自分がダメになったって、構わない。彼のことは、自分が出来るだけ守ってあげよう。


 健也君のことが気になっていたせいか、カメラの前でボゥーッとしてしまった。コメントを見てみると、『専業主夫(家政夫)さん、今日はいないんですか?』というコメントであふれていた。彼も、配信が始まってから色々と話題に上がることが多くなったせいか、健也君自身にもファンや、興味関心を持つ人が現れたのだ。


「あ、影山君は体調を崩して今は寝込んでいます。実は昨日の荒川記者を追い詰めた時、彼も緊張していたらしく、緊張が解けたらそのまま…。熱は出ていますが、今は大丈夫みたいです。明日には復帰しますからって言ってました。」


 コメント欄では健也君目的で配信に来ている女性ファンが多いようで、『そんなぁ!健也君が体調を崩したなんてぇ!』というコメントが多く寄せられていた。いや、配信サイトの公式チャンネルで配信していて、それなのに女優の家政夫を応援しようとするなんてと、内心苦笑する。


 そこでこんなコメントが流れたのを見逃さなかった。


「えっと、『昨日の健也君の髪型とかファッションとか、あれは誰がやったものなんですか?』はい。あれは私が趣味で購入しました。彼もそこそこ乗り気だったのか、不良ファッションを着こなしてくれました。彼、素材が良いので大体着こなせちゃうんですよね。」


 そう言うと、『嫁の夫語り』『夫自慢』『いちゃつき夫婦』とかいうコメントが流れてきて焦る。


「いや、私たちは夫婦じゃないですよ?それに彼、私のことを意識してないみたいですから…。」


 そう言うと、少し胸が締め付けられるように痛む。


 意識してるのは、私の方なんだから…。


 きっとこの感情は悪いものだ。それに今は女優として配信している。暗い顔はしないようにしないと。


 ピンポーン!


「あ、多分あの人ですね。少し待っていてください。」


 私はインターホンが鳴ったことをいいことにカメラから離れる。そして、相手を見るとそこには『本田芽唯』がいた。


『丸橋TVの本田です。プライベートで来ました。』

「はーい!」


 本田芽唯は健也君が心を許しているたった一人の記者だ。実は今まで数人の記者と会っているのだが、大体彼らは他人のプライベートに口を突っ込み、デリカシーの欠片もない人で、さらにはセクハラ発言を繰り返したため、全員が彼の怒りを買って退職に追い込まれた。いや、彼は『少しお話があります。どうせなら、二人でどうですか?』と悪魔のような笑顔で言っただけだ。それで皆逃げ惑うのだから、正直教育がなってないのではないかと不安になる。

 ちなみにこの『二人で』というのは、私に怒った顔を見せたくないという彼なりの心遣いらしい。自分が怒ると怖いことをある程度は理解できているようだ。


 鍵を開けて外を見ると、相変わらずのスーツで来た本田芽唯はどこかウキウキしていた。


 そうだ。昨日彼が『明日本田記者がカレーを食べに来るので、別の鍋に入れて保管しておきますね。』と言って半分ほど入れたのを思い出した。二日目のカレーの方が美味しいと説得されたのもある。


 本田記者の登場に、コメントは相当荒れていた。本田記者は健也君の前ではただの食いしん坊キャラと化しているが、本来はバラエティ業界に少し詳しい程度の視聴者でも、彼女が恐れられているということを知っている。

 …まあ、今この状況を見て、誰もが驚くしかないのだろうが。


 カレーについては『温めてから食べてください』と張り紙がしてある。健也君は昨日から体調が悪かったのだろうか…。


 本田記者はコンロに火を点けてカレーを温める。そう言えば、二日目のカレーの方が美味しいとか言うことについて、ここまで職に対して貪欲な彼女なら知っているかも。


 このカレーが二日目のモノだと知ると、本田記者は目を輝かせてお経のように、けれど、そこそこ大きな声でマシンガントークをぶっ放していたが、彼女のあまりの興奮に付いていけず、話のほとんどを聞き逃してしまった。というより、息できてるのかな?


「あ、温まったみたいですね。」

「ええ。それにしても、料理、好きなんですね。」

「一応、これはあまり自慢できないんですけど、料理人の娘で、昔から料理については仕込まれていたんです。自信も結構あったんですが、影山さんはそんな私どころか父を超える程の逸材でした。一応、父は二つ星くらいの腕前はあるらしいんですよ?」

「!?」


 想像以上に自分の出自についてぶっちゃけたけど、一応カメラは回っている。カレーを温める風景を移しながら、雑談していたからだ。まあ、雑談も配信では必要なことだから、とにかく、話はいくらでもしていこう。


 カレーをよそい、香りづけの葉っぱを外す。どうやら、少しだけ香りの調整が甘かったらしく、健也君がこっそり入れていたみたいだ。


 カレーを一口食べた本田記者は一瞬固まり、動き出したと思えば一心不乱にカレーを食べていた。

 それはもうおかしいくらい。フードファイターかというほど凄まじいスピードと咀嚼速度だった。


「やっぱり、影山さんはお店出すべきだと思うんですけど、どうですか?」

「彼は嫌だと言っているので。」

「です、よね…。」


 口を開いたかと思えば、すでに儀式と化した飲食店経営願いだった。そう言えば、今日は仕事があるのでは?と思ったのだが、その答えは私の表情で読んだのか、彼女が口にした。


「あ、今日と明日分の仕事は昨日のうちに片づけました。カメラを回収するのは明日正午で、カレーには少しニンニクが入っているということを聞いたので仕事に行かなくてもいいように有給取りました。」


 そんなことを言ったため、私とコメントを売っている人たちの心はひとつになった。



 …この食いしん坊キャラ、強い。

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