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(第二章は削除しました)無自覚ハイスペックくん、女優学生に拾われる。  作者: 柏木悠斗
1st. あなたは自分の大切な…。
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PART.14 丸橋TVは学ぶ

 丸橋TVの荒川こと、荒川時久は鼻に投げつけられた革靴を履き直しながら冷静さを取り戻しつつあった。ちなみに、ここに来るまでに小一時間ほどかかってしまっている。小太りだが、運動神経抜群な上、空手柔道共に有段者の彼だが、そんな彼でも彼、影山健也に勝てないと思った。というより、確信した。


 今回のこの撮影、基隠して生放送を始めていた彼だが、彼に殴りかかってしまったシーンや、セクハラ発言やプライベートに口を出してしまったことも盛大にネットで叩かれてしまっている。そこで思い出す。


「これ、私が会社に戻れば私の人生は終わってしまう。けれど戻らなければ私はそもそも会社の備品を盗んだとして犯罪者となる…。終いには、ここから早く逃げないとヤツに殺される…。」


 その発言すら撮られてしまっているということに気付かない。冷静さを取り戻してしまったが故に余計な絶望感に打ちひしがれている彼には、もう道は何も残されていなかった。


 ガチャ


 冴島友里の家から死神の足音が聞こえる。


 革靴に革のジャケット、赤いTシャツに黒いズボン、髪は上げていて真っ黒な眼はダイヤモンドのように透き通っていて、睨みつけるその顔は作り物のように整っていて、ただただ殺意をこちらへ向けている。


「ギャァァァアァ!?ああああああああああ!」


 カメラすら置いて荒川は走り出す。その先が地獄であるという現実も、走っても逃げ切れないであろうという事実すらすべて忘れて。


 死神こと、影山健也はカメラを自身に向けてピースサインを取り、


「冴島友里さんの家で家政夫をさせていただいております、影山健也といいます。えっと、この服装、荒川記者を追い出すために着替えたんですけど、どうですかね?」


 自身の評価を真っ先に問う彼はただひたすらにマイペースであった。


「あ、撮影許可は僕が取ってきました。とはいえ、彼女が一人で撮影を行うことになると思います。撮影に関して僕はド素人ですし、家政婦の契約とは全く違ったお仕事なので僕がやらないことについては叩かないでくださるとありがたいです。あ、カメラは明後日返却することになっておりますので、その間、しばらくこの配信?にお付き合いください。よろしくお願いします。」



 荒川は丸橋TV本社にたどり着く。


「はぁ…………はぁ…………。只今…戻りました…。」

「ご苦労。君、明日からこの会社に来ないでくれたまえ。」

「ええ!?」


 荒川の汚い声が玄関ホールを木霊する。


「あなたの所為でこの会社の評判が落ちたのだ。大人気アイドル冴島友里へのセクハラ発言、その家政夫への暴行、さらには彼らの食事への文句…さらには勝手に生放送にしてこの醜態を多くの視聴者へ晒してしまった。引継ぎのための書類作成は今日中に行い、その後速やかに退社しなさい。こちらでは、すでにあなたを自主退職ということにさせてもらっている。ああ、これに関しては社長も同意されている。一切の猶予はないよ。」

「そ、そんな…。」

「後、影山健也への暴行について、その後彼の怒りの形相を画面越しに見て失神した()()視聴者から苦情が来ている。その対処も今日中に終わらせたまえ。」

「…分かりました。…?あれ、女性視聴者は?」

「それはあなたには関係のないことだ。さあ、早く仕事に取り掛かりなさい。退職金と本日分の給料は()()()()()()()がね。」


 恐らく、これは口止め料だ。しかし、どうして彼らがあの少年への興味関心を捨てないのか、荒川には理解が出来ない。


「分かりました。」


 しかし、この場で働かなければ余計何事もできない。

 荒川は最後の仕事をするためにエレベーターへと乗り、クレームの電話の対応に追われるのだった。



「でさぁ、健也様マジカッコいいよね~!」

「それな!いくら命の恩人だからと言ってもあそこまでド直球に怒りをぶつけられますか?あのシーンの一部を加工して何度も聞き直したい…。」

「ああ!ズルいですよ!私もお願いします、私は加工できないので。」

「分かったわよ。でも、男性視聴者しか失神しなかったって、おかしなこともあるものよね。」


 影山健也、職業家政夫。裏で女性のファンクラブが出来る程の人気がこの配信を通して膨れ上がってしまった。


「ああ、でも、あの前髪あげたシーンは本当にカッコ良かったです…。」

「本当にそうだよね、男の僕から見てもカッコいいと思ってしまったから。でも、あの不良ファッションってどうして持ってたんだろうね。」

「それはツッコまなくても良いじゃない。多分、冴島友里様が着せ替え人形みたいにして着せたんじゃない?」

「その説濃厚。冴島さん、着せ替えゲームにハマってた。そんな噂聞いたことある。」

「…これ、二人絶対付き合ってるって。」

「まあ、あそこにカメラを残すことに成功したんですし、何とかなりますよ。」

「手掛かりは何としてでも掴む!」

「「「丸橋TVの威信にかけて!」」」


 そんな彼らを遠目で見つめる記者が一人。

 本田芽唯、鬼神の本田と言われる記者だ。


「今日の献立はカレー、あ…、明日、突撃しても大丈夫でしょうか?」


 鳴るお腹を押さえ、明日早朝に家に突撃すると彼のパソコンのメールアドレスにメールしてささっと仕事に戻った。



 丸橋TVの荒川は、押し寄せるクレームへの対応を終えた直後、どっと押し寄せた疲れに目を瞑ると、そこにはナイフを持った影山健也が無数に自分を囲うように存在している幻覚を見た。幻覚だと分かっていながらもそのあまりの恐怖に発狂した彼は多くの機材を破壊し、多数の社員へ暴力沙汰を起こし、魂が抜かれたようにその場に座る人形へと成り果てた。


 その後、丸橋TVではとある言葉が教訓に追加される。


『芸能人のプライベートにだけは、絶対に突っ込んだことを聞くな。聞いたら抜け殻にされる。』


 と。



 なお、そのような教訓がなされる中、本田記者は翌日のカレーが自分用に確保されるというメールを受け取り、いつも以上に仕事を張り切り、二日分のノルマを達成してしまうのだった。

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