PART.12 俺にプライバシーはあるのだろうか…。
俺はパソコンを開き、今日の献立について調べる。このパソコンはスマホのデータを保存していたり、料理のリストなんかを保存している。料理に必要なものをできるだけ簡単なもので代用できるようにあっちにいたころは工夫したものだ。
それと、しばらくの間バイトは休まないといけなかった。それに付いての対処もしないといけない。献立を調べたタブをそのままに、メールを開く。そこには、今回の家で起きた件についてすでにメールが来ていた。
『影山健也君
今回の家の件、こちらでも色々調べさせてもらった。我が社は、貴方の母がいる会社との関わりを切ることにした。事件の真相については警察と共に調べ、私たちは一つの結論に至った。
どうやらこの事件に関しては、貴方の母の独断で行われたそうで、この事件によって周辺の住居おおよそ三十棟が焼ける大火事となっている。死者二十三名、重傷者五名、行方不明四名だそうだ。貴方の母は死刑になるだろう。裁判なんかも行うだろうし、それに付いては弁護士などは私の方で手配しよう。貴方はまだ子供だ。面倒ごとは私たちに任せたまえ。
それと、冴島友里との生活は上手くいっておるかね?私が個人的に彼女が所属している事務所に色々と手配していることがある。まあ、一応彼らには借りを作れているということさ。貴方が作った資料の中には、数件芸能事務所との取引に関しての書類があったはずだが、その中にその件があったということさ。まあ、この同棲に関してメディアから叩かれるようなことには間違ってもないと言えるから安心しなさい。
最後に、アルバイトはそのまま続けてもらって構わない。というより、私が今すぐにスカウトしたい人材だ。入社することになっても誰にも止められないように説得できる。コネ入社というわけではなく、私個人が貴方に興味を持っているし、実力を評価しているということだ。遠慮なくメールを送ってくれたまえ。
株式会社・遠山 遠山宗義』
はぁ、あの社長も物好きだ。
メールの送り主は俺のバイト先の社長で、個人的に彼と話す機会があり、そこで意図せず彼に好かれることになってしまったのだ。いや、彼の会社は大企業で、有名どころの会社に影響を与えられるほどのヤバい企業だ。とはいえ、バイトの値段はかなり高めで、そこらのサラリーマン並みに稼げていたのかもしれない。この国の平均の月収位は稼げていたから。
とはいえ、この件については冴島さんによく聞く必要がある。自然な流れでバイトについて聞いてみよう。
さて、その次にあったメールは…。
「え!?」
なんと、丸橋TVの社長だった。いや、文章は代筆の可能性もあるし、本当に社長から来たという証拠はどこにもない。それに、俺は彼らにメールアドレスなんかを教えたりしていない。
『影山健也君
まずは唐突な訪問をしてしまったようで申し訳なかった。しかし、君が我が社でも重要な取引相手である芸能人の家に住んでいるということを知り、事実関係を明らかにしたかったのだ。身元も状況もわかっていながら済まない。
しかし、君にはうちの社員、本田芽唯に料理を振舞ってもらった恩がある。彼女は少々食いしん坊でね。かなり多く食べてしまうのだ。しかし、まさかそれを味で解決するとは…。料理人としてのセンスもかなり高いようだ。
それと、株式会社・遠山と警察と連携して件の火災について調べていったのだが、君の母親が多くの家に火を点け、君を絶対に殺せるようにと仕向けていたらしい。あの時、ガソリンを撒いていたそうで、多くの人が犠牲となった。
おっと、君が気に病むことではない。君はただの被害者で、罪に問われることもなければ、彼らが君を責めることもない。その場合、彼は被害者だと我々が訴えることもできる。
それと、君の母親の再婚相手は我が社の従業員の岸本裕二だ。とはいえ、彼は君と仲良くしたかったらしく、彼女が起こした罪を許すことが出来ずそのまま破局し、君の母は一人路頭を彷徨っているそうだ。その内逮捕されて裁判を起こすことになるだろうが、遠山の方で弁護士を用意してくれるそうだ。安心すればいい。
彼の遠山が君を高く評価をしていた。それに、我が社の本田君は非常に出来る記者だ。彼女は君のことを認めていたし、報道なんかをする際もその内容に目を通すだとかいうほど君を気に入ったようだ。また今度我が社の生放送に出演してもらうことになると思うが、その時はよろしく頼みたい。
それと、うちの社員に冴島友里に危害は加えないように代表取締役社長として命じておく。君に対しても同様だ。何か問題があれば、この連絡先に連絡をしてくれるとありがたい。
丸橋TV代表取締役社長 丸橋恭時』
とりあえず、かなり長い分だったが、言っていることは両者相違ない感じだな。しかし、
「俺にはプライバシーは無いのか?」
どうやって俺のアドレスを知ったのかは分からないが、取りあえず、記者さんの名前が『本田芽唯』だということを知ることが出来た。これは相当大きい収穫だ。
それと、あの女郎まだ捕まってなかったんだ。正直あり得ない。すでに多くの死傷者を出しているんだし、さっさと死んでもらいたい。
はぁ、考えることは多いけど、取りあえず今日の献立でも考えよう。
この時俺は見逃していた。本田芽唯記者が本日家に突撃してくるということを。そして、夕食のシチューとパンをそれぞれ食べて『飲食店を…。』と言い、それを反射的に断るというやり取りを続けていて、その間、冴島さんは少しだけ不機嫌そうで、そして最後はとても楽しそうだった。




