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(第二章は削除しました)無自覚ハイスペックくん、女優学生に拾われる。  作者: 柏木悠斗
1st. あなたは自分の大切な…。
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PART.11 突撃生放送はやめて欲しい!

 私が目を覚ましたのは、影山君の声だった。


「冴島さん!朝食出来ましたよ!」

「ううん、は~い。今行くよ~。」

「すぐに降りてきてください。早くしないと冷めちゃいますから!」

「分かってる!」


 そう言って手早く撮影用の私服を着用して下に降りる。そこには、味噌汁、目玉焼き、白ごはんが並んでいる。


「「いただきます。」」


 二人で合掌をしてご飯を食べる。料理は昨日のハンバーグのようにとても美味しかった。


「そうだ。ちょっと今日面倒くさいことが起きそうなんだ。」


 私は今日起こる面倒ごとについて話した。…面倒くさいこと、とは?、と聞いた彼にこう続ける。


「突撃取材班が来るのよ。しかもうちに。」

「…えっ。」

「だからパソコン取りに行けないかもしれない…。ごめん。」


 私は謝った。元々、今日は影山君のパソコンを取りに学校へ向かう予定だったのだ。それは叶わず、しかも突撃生放送の的になってしまったのだ。


「ああ、いや。大丈夫ですよ別に。パソコンだって、ゲームとかメモくらいしか入っていませんし。まあ、スマホのデータのコピーが入っているので無くなったら痛手ですが。」

「そういうところよ!本当に興味ないことには無関心よね…。」

「まあ、あまり考えるのは好きじゃないので。」

「私とも何の緊張感もなく話すし…。普通私と面と向かい合って話せる男性はいないからね?」

「さりげなく自慢しましたね。まあ、事実、あなたは美しい人間だとは思いますが。」

「…ホント?」

「嘘をつく意味も理由も、メリットもありませんし。」

「(やった!)コホンッ。…………で、記者の話だけどね。」

「はい。」

「彼ら、いや、来るのは一人なんだけど何十人も同時に相手するくらい面倒くさいのよ。」

「えぇ…。」


 彼は少し考え込むようなしぐさを取る。彼は母親に命を狙われてこの家に匿っている状況だ。しかし、昨日外出した際に週刊誌に写真を撮られてしまったようで、それが原因で今日の突撃取材に繋がってしまったそうだ。


「どう考えても女優の主人と専業主夫兼元高校生でいいじゃないですか。」

「それがそうともいかないのよ。彼ら、もう少し突っ込んだこと聞いてくるのよ。デリカシーが存在しないのか貞操観念についてまでド直球に聞いてくるのよ。」

「…セクハラで訴えましょう?」

「出来たら楽なのよ。でも、裏に結構大物がいるの。だから組織に訴えたところで絶対に負けるわ。」


 彼らは大きな組織に雇われている人物で、そう簡単には訴えたり対処できない。私はたまに記者にセクハラ的な質問を受けることがある。それについて問い合わせたことがあるのだが、彼らは何も口にしなかった。どうせ上手くいってもトカゲの尻尾切りになるだけだ。やるだけ無駄だと悟った。


 影山君は盗聴器を使う手段を提示した。相手の失言なんかを証拠にして訴える気らしい。とはいえ、それにも問題はあるよという話を彼がしている時、インターホンが鳴った。恐らく外にいるのは今回の記者だ。あれは…本田芽唯(ほんだ・めい)


 本田記者は強い威圧によって相手を完全掌握して情報をすべて手に入れるとして恐れられている記者だ。どうやら、今回の取材基生放送でこちらの情報を掴み切る予定だろう。

 一瞬躊躇したが、私はそれに出ることにした。


『は~い!丸橋TVの記者です!』

「こんにちは。これから扉を開けるので少々待ってください。『は~i』ふぅ…。」

「あの…。」

「どうしたの?」


 影山君は少しだけ怯えているような顔をして扉を指さした。


「何故か知らないんですけど、扉から異質な黒いオーラが見えるんですけど、これって僕の目の錯覚ですかね?」

「あ~、あのテレビ局の人みんなああだから。ささ、開けるわよ。」


 丸橋TVの別の渾名は『死のテレビ局』、目を付けられたら情報全てを奪われると思えと言われているほどこの業界では有名だ。ここの記者は皆、ドス黒いオーラを纏っているように錯覚してしまう。事実、私も初めはそれに怯えていた。


 ドアが開いた時、


「本日より冴島友里と居候の彼の同棲生活について密着していきたいと思います!」

「「なんでこうなった~!?」」


 大声で企画名についてぶちまけた本田記者と、影山君と私の絶叫が玄関に響き渡った。


「なんでこうなったんだよ…。」

「いや、私にもわかんないよ…。」

「ついでにこれ生放送です。」

「「え゛!?」」


 影山君の顔色が悪い。それもそうだ。下手な手を打つと母親が彼を殺しに来る可能性があるからだ。そして恐る恐るといった風に影山君は再度質問をした。


「冴島さん。」

「何?影山君。」

「なんか知らないんだけど、記者さんの後ろからめっちゃドス黒いオーラが見えるんだけど、また聞くんだけど目の錯覚ですか?」

「いいえ、私にもそう見える。ちょっとこれは想定外なんですけど。」


 うん。正直怖すぎる。


「さてさて、早速ですが今日はカメラが入っている状態でいつも通りの生活をしていただきます。」

「え?ちょ、マジですか?」

「マジです。それに、たまに私が一人ずつに質問していきますのでそれについて答えてください。あ、流石に貞操観念とかそういうのには他の記者みたいにツッコみませんので、そこは安心してください。」

「「安心できませんよ!」」

「では、いつも通りの生活をお願いします!」


 そう言うと本田記者は力なく椅子に座り込んだ。


「え?どうしたんですか?」

「じ、実は今朝から何も食べて居なくて…。しかも始めの司会は大きな声で話さないといけないというルールがありまして…。」

「そうなんですか…。じゃあ、何か軽食を作りますね。あ、記者さんも昼食はいかがですか?昨日夜ハンバーグだったんですよ。それで、昼までに消化したいんですけどなかなかに量があって。二人では食べきれないかもしれないのでご一緒にどうですか?」

「!…良いんですか?」

「はい。…その、僕はあくまでもここに居候させてもらっているだけですので芸能界とかそういうモノの規則などは分かりません。記者さんの会社のルールに従って、僕は一応あなたにも料理を振舞おうと思います。一応、昨日買った食材は僕のお金で買ったものなので。まあ、冴島さんさえ良ければ。」


 影山君は私を見て確認を取る。

 本田記者は恐れられている代わりに事実のみを報道するように圧をかけられるこちらとしては非常に都合がいい記者だ。しかも、影山君の警戒心があまりにも薄い。初対面で、私は命を救ったからそのせいで彼の警戒心を煽るようなことにはならなかったが、昨日外出した際も周りの人間に対して常に警戒していた彼があまりにも近づいていることに少し驚いた。いや、顔が出てしまったことで既に諦めが付いたのかもしれない。

 私は彼に、本田記者に料理を振舞うことを許可した。


 彼はサンドウィッチを作り、それを私たちに出した。本田記者に渡すだけじゃなく私の小腹が空く時間も考えていたのだろうか?だとしたらただ驚きより恐怖を覚えるしかない。

 影山君は手帳に何かを書き込んでいる。あれは私が彼に何か使えるかもしれないと思って買い与えたものだ。そこに熱心に何かを書き込んでいて私たちのことに気付いていないように振舞っている。


 本田記者とは世間話をした。主に、最近の世間についての話や、どうして影山君と私がここにいるのかを。

 本田記者は彼の境遇を知って涙を流しながら少しクシャクシャになった顔で小さく、『ごめんなさい』とつぶやいた。


 サンドウィッチを食べ終わった彼女はカメラも持たず影山君に話しかけ、何やら話をしている。『親権が…』とかが聞こえたため、少なくとも親に関してのことだろうと考えた。私は彼らに近づき、彼が『理由を話す』と言ったため、私もその話に割り込むことにした。



 彼から話されたことは衝撃的なことばかりだったが、私は初めに聞いていたため、そこまで驚くことはなかった。大体、私が聞いていたことばかりだったため、別に驚くことはなかったのだが、彼が自身の名前をぶちまけたことにかなり驚いた。

 逆に私は、たまに話を振られていた程度の気分だったが、母親に対して自身がいじめられていることを伝えていなかったというエピソードを伝えた時には顔を歪めて『黒歴史』とつぶやいていた。


「分かりました。では最後に、お二人はお互いをどれほど信じていますか?」


 そんな質問が私たちに投げられた。私は今までの家と今の家を比べてみた。

 影山君が家に来てから、まだほんの少しの時間しかたっていないけれど、彼が来てからはとても楽しい。ご飯はとても美味しいし、私のことを気に掛けてくれるとても優しい人だ。


「そうですね。少なくとも僕は、裏切られたらすぐに自殺できるくらいにはすでに彼女に依存しています。こっぴどく裏切られたらその場で死ねますよ。」


 彼はすでに私に依存している節があったのは理解できていた。だから、私が言ったことにほとんど躊躇い無く従ってしまうだろうし、私が傷ついたら持ち前のハイスペックを生かして私を守ろうとするだろう。でも、私は彼を束縛する糸ではない。


 だって…


「私は、彼がいてから生活がとても楽しくなったんです。今まで無機質な部屋で過ごしているだけでしたが、彼を拾ってからまだ二日目ですけどすでに楽しいんです。少なくとも、しばらく離れたくないくらいには。楽しい嘘ならまだしも、悲しい嘘なんて付けません。」


 私は、影山君と一緒に居るのが、とても楽しいんだから。

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