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異世界救世譚―差し伸べるは救いの手―  作者: 明月
シア、異世界に立てり
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スライムの生態と幻想


 ――スライムという言葉を一度は聞いたことがあるだろう。よくゲームや漫画に出てくるアレだ。


 大抵のゲームでは"初期の雑魚敵"という位置づけが定着しているが、本当にそうなのだろうか? 確かに、攻撃手段の少なさや行動パターンなどを考えると雑魚敵という意見にも頷ける。俺も最初はそう思っていた。

 フェイが話しているのを聞いても、基本のスライムは弱い魔獣に分類されるとのことだし心配することはないだろう。今は倒し方を考えることにする。手持ちの武器はナイフしか無いし、魔法で狩ろうかな? でも慣れてない魔法を使うよりは刃物のほうが安心できるし……


 ――そんな風に、スライムをどうやって討伐しようか考えながらフェイに付いて行くと、不意にフェイが立ち止まった。ここが狩場なのか?


「もう到着か?」

「うん。 あそこを見てよ。いつもより大量だ!」



 フェイが指差した方向を見ると、思わず「えっ?」と声が出てしまった。想像していなかった光景が目の前に広がっている。俺は思わず目を瞠って凝視してしまった。とても納得がいかない。



「……ナニコレ」

「ん? どうかしたの?」

「いや……これがスライムなのか?」

「うん? もしかして初めて見た?」

「スライムと言ったらこう、半透明というか水色のイメージが……」

「なるほど。確かにスライムの元々の色は半透明だね」

「じゃあなんでこんなに赤い(・・)んだよ……」


 ――眼前にはゼリーのような気味の悪い動く生物。しかしその色はどう見ても真っ赤であり、周囲の草木の中で異彩を放っている。正直近づきたくない。


 もしこれが『ぼく わるいスライムじゃないよ!』と発言したとして、俺はそれを信じることは出来ないであろう。それほどまでに不気味だ。


「……何でこんなに真っ赤なんだ?」

「知らないの? スライムは捕食した対象の色に染まるんだよ。体液とかね」

「ということは――」


 スライムがいる辺りをよく見てみると、猪のような死骸があった。どうやら血液を摂取したために赤色に染まったようだ。うげぇ……




 少し話が逸れるが、後に調べて分かったスライムの性質と生態をここで確認したい。


 まずは性質についてだが、体は大半が水分で構成されており、体表面を魔素でコーティングすることで体型維持がなされている。

 特筆すべきは体の中心にある"核"と呼ばれる組織だ。この核という物が体型維持や生命活動の動力となっていると言われている。故にこの核を破壊、もしくは体外に摘出すれば魔素よる体型維持が困難となり体組織が崩壊する仕組みだ。




 次に生態の話だが、特に重要な点がある。


 それはスライムの適応能力(・・・・)の高さだ。何もない場所から如何にしてスライムの核が発生するのかということは未だに解明されていないが、核が発生した環境に合わせて生育することが確認されている。

 なお、魔獣などの死骸を放置するとそこに集まってくる習性もあり、それを利用して死骸に集まったスライムを狩ることも有るようだ。そして、前記した通り捕食した対象の色に染まるが、その際に対象の特異性を引き継ぐ場合があるらしい。例としては毒や麻痺の効果が付与されるとのこと。


 フェイは「さあ狩りの時間だ!」といい笑顔だが、俺はあまり笑えない。正直帰りたいと言っても過言ではないな。倒したら絶対返り血で汚れるだろう……


「どうしたの? 早く狩ろうよ! 僕が独り占めしちゃうよ?!」

「……おう。やるかぁ」


仕方ないと思いつつ、気乗りしないまま俺はフェイの後に続いて歩き出した。


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