夢と目標
――狩場への道程を二人で話しながらのんびりと進む。
聞いて分かったことだが、フェイのランクは現時点で "赤" らしい。ギルドでの説明を聞いた限りでは、赤のランクは「一人前」だったかな? 俺も取り敢えずは赤のランクを目指すことにしよう。まぁランクを上げることが目標ではないからゆっくりと上げていけばいいか。
……ちなみにフェイに目標のランクを聞いてみたところ、黒ではなく"紫"のランクが目標らしい
普通は英雄である黒を目指すものだと思うのだが――フェイは何か思うことがあるらしいな。
「――"紫"? 黒じゃないのか。最高ランクは『英雄』の黒なんだろ?」
「うん、そうだよ。そうなんだけど、黒のランクになるには相当な功績を上げなきゃ駄目なんだよね? それに……うん、そうだ」
フェイはそこで少し言葉を区切り、真剣な眼差しで俺に話し始める。その内容はこれから先の指針を含めて、実に考えさせられるものだった。
「――現時点で黒に認定された人は、基本的に魔族や魔獣の襲撃を撃退したり殲滅したりした時の功績を認められたからなんだけど――その際には少なからず犠牲が伴った」
「! ああ、そうか……」
――そうだ、本質的なことを俺は見落としていたじゃないか。
敵の襲撃があるっていうことはこちら側にも少なからずの被害が生じるんだ。いや、もしかしたら「少なからず」どころではなく甚大な被害が出るかもしれない。それなのに"黒になりたい"なんておこがましい話だな。要するに――
「……犠牲が出るようなことはそもそも起こらないほうが良いだろう、ていうことか?」
「うん。中には一人の犠牲も出さずに偉業を達成した黒の人もいたらしいけど僕はそんなに……強くはない。僕が今からそんな高みにのぼれるとも思えないしね」
自分で自分の限界を決めてはいけないと思うが……俺はフェイの実力も、何もわからない。
なら余計なことを言わずに無難なことを言ったほうが良いか。
「そうだなぁ……俺は紫には程遠いし、フェイと同じ赤を目指すよ」
「うん。お互いに頑張ろう!」
――いまの話は重要なものだとは思うが会話中に出てきた"魔族"とやらが気になる。
朝に地図を見た限り図書館のような場所もあったみたいだし、落ち着いたら行って調べてみよう。色々と気になることもあるし、調べておいて損はないはずだ。
そんなことを考えながら歩いていると、またもや商業区域に差し掛かった。相変わらずの喧騒だな。相変わらず食欲を掻き立てる実に美味しそうな匂いが充満しているが、金が無いためどうしようもない。それに今は依頼の達成の方が先だ。
……ただ体は正直なもので、先程から腹がグーグーと鳴り止まない。
ふと隣を見るとフェイがクスクスと笑っていた。それに気づくと俺の顔がカーッと熱くなっていくのが嫌という程わかる。他人に腹鳴を聞かれるのはやはり恥ずかしいものだ。……きっと俺の顔は今赤くなってるんだろうなぁ。
「あはは、さっきからずっとお腹鳴ってるよ? 僕もお腹減ってきたし、どうせならどこかで食べようよ」
「……生憎だが無一文なんだ。買いたくても買えない」
「えっ?!……でもさっき依頼受けてたよね。その報酬は?」
「いや、そもそも報酬は金じゃなかったしな」
ことのあらましを説明するとフェイから「お人好しだね」と呆れ顔で言われたが、俺はそれでいいと思う。あの人は本当に困っていただろうしな。俺なんかが役に立てたのなら万々歳だ。
「よし、それじゃあ今回は僕が奢ってあげるよ! 依頼に誘ったのは僕だから!」
そう言って歩き出したフェイに着いて行くと、「次は買ってくれよ?」と以前に言われた屋台の一つに行き着いた。店員が「今度は食ってくれるのか?」とにこやかに話しかけてくる。
どうやら"マルブイ"とやらの串焼きらしい。元の世界の豚に角が生えた様な見た目をしているらしいが、味に遜色はなかった。……うん、普通に美味しかったな。
――腹ごしらえも終わり、また話しをしながらのんびりと歩く。
フェイが「さっきの屋台にはよく行ってるんだ」 とか 「今度は違う所に行ってみよう」とか喜々として話していたが、ついに門に到着した。相変わらずの大きさだな……
ギルドカードを掲示して門番に確認を貰った後、俺たちは門を出て左に見える森へと向かった。フェイ曰くそこにスライムがよくいるらしい。俺はフェイに付いて行きながら、決意を新たにする。
――さて、ついに狩りの時間だ。気を引き締めていこう。




