依頼達成と仲間
――今度こそギルドに到着した。
まさか一つの依頼で昼までかかるとは思いもしなかったな……まぁ元はといえば自分から厄介事に飛び込んでいったわけだが、それで救われる人がいるのなら苦ではない。元の世界でも時折やっていたことだしな。
……第一あの状況で無視できる訳がない。
無視した場合彼女が碌な目に合わないのは明白だし、そもそも俺にはあの状況を打破出来るだけの力があった。その上で無視するということは俺の信条を破ることにもなるしな。
そうだ。そもそもその『無視する』選択肢は端から無かった。
……そんなことを考えながらギルドの扉を開く。
開けた瞬間に何人かの視線がこちらに集まるがそれもすぐ無くなり、仲間同士で再度話し始めたり掲示板に向かう姿が見て取れた。それを横目に見ながらカウンターへ向かい、書類を手に受付へ話しかける。
「すみません、依頼の達成報告に来ました」
「達成報告ですね。では達成書類とギルドカードの提出をお願い致します」
「はい、確認お願いします」
「確かに受け取りました。それでは確認致しますので少々お待ちください」
そう言うと何やら手元の書類をパラパラと捲り始めた。俺が渡した書類と見比べながら数枚めくると「これだ!」と言いながら一枚書類を抜き取り、何やら確認している。……確かサインが本人の物かどうか確認するためだったな。勝手に自分で書いて虚偽の報告をする人間がたまにいるからそんな制度ができたらしい。何処の世界にもそんな奴は居るもんだな。
「――確認が終わりましたのでこれで依頼達成となります。報酬は"応相談"ですか? ……もう報酬は依頼者から受け取りました?」
「えぇ、一応は受け取りました。"物"ではありませんが」
俺がそう言うと受付嬢は首を傾げながら俺に内容を問う。別に嘘をつくようなものでもないし正直に答えて問題はないだろう。そのほうが後で事を追求されて怪しまれることもない。
「ギルドの規則ですので、一応報酬の内容だけ教えて頂けますか?」
「少し貨幣価値を教えてもらいました。随分と久々にこの国に来たもので物品の値段とかそこらの変動を知っておきたかったんですよ」
聞いていた受付は「なるほど」と言いながらメモを取っていたが、それも一段落し再度話し始めた。
「以上で依頼は達成となりました。こちらがカードになります。初仕事お疲れ様でした! 別の依頼を受ける場合は再度掲示板を御覧ください」
「はい、ではこれで失礼します」
初依頼は問題なく達成だな。とは言え取り敢えず何か他の依頼を受けて金を稼がないといけないことに変わりはない。――取り敢えず掲示板に向かおう。食いぶちを稼がないとさすがに辛い。
――何か良い依頼がないかと探していると後ろから声を掛けられた。
声色的にフェイだろう。俺はゆっくり振り返った。
「やぁ! シア君初依頼お疲れ様」
「ありがとうございます。フェイさんも何か依頼を受けるんですか?」
「うん。さっき一つ達成したんだけど少し物足りなくてねぇ」
そこまで言うと少し考える素振りを見せ、「そうだ!」と言いながらこんな提案をしてきた。
「シア君は戦闘は大丈夫かい?」
「……自信はありませんが出来ないことはないと思います。あぁ、それと良かったらシアと呼び捨てして下さい。別に私は気にしないので」
「分かった、その代わりシアもそんなに畏まらないで普通にしていいよ。……じゃあシア! せっかくだしこの後一緒に狩猟の依頼でも受けないかい?」
「……それもいいか、じゃあお言葉に甘えて。俺なんかで良かったら一緒に受けよう」
「よし! それじゃあ決定だね。何の依頼にしようかな~♪」
そう言いながらフェイは掲示板を見る。まぁさすがに初心者だしそこまで危険性が無いやつを選んでくれるだろう。そこらはまさか考えてくれるよな?
幾許かして結局フェイが選んだのは――
「よし、これにしよう!」
「ん? 決まったのか。何の依頼だ?」
「これだよ。見てみて!」
そう言って差し出された紙に書いてあるのは……
「えっと……『スライムの討伐』か。うん、面白そうだな」
「じゃあこれで決定ね! さぁ受付に早く行こう!」
グイグイと俺の服を引っ張って受付に向かうフェイ。元気なのは良いんだが……別に引っ張らなくていいじゃないか。俺は逃げないぞ?
――受付を済ませ、二人でギルドを出る。
受付では"臨時パーティー"という物を組んだ。どうやら二人以上の場合この作業をするらしいが、臨時ではなく正式にパーティーを組むことも可能とのことだ。ギルドを出るときにも少し視線が集まるがフェイが気にしている様子はない。きっとこれも慣れなのだろう。
――さて、初の狩猟系依頼だ。気を引き締めていこうかね。




