第12話 :交錯する刃と、背中の温もり
キンッ──────ッ!!
高い金属音が回廊に響き渡り、火花が夜の闇を鮮烈に散らした。
「ハァッ……ッ!」
リオンの鋭い踏み込みとともに放たれた銀の長剣が、リシェインの漆黒の刃と激しくぶつかり合う。
重厚な衝撃波が巻き起こり、石造りの廊下の壁に薄い亀裂が走った。
「く……っ、相変わらずの剣技だな、兄上……!」
リシェインは刃を滑らせて間合いを取ると、薄い唇を歪めて冷たく笑った。
だが、その黒い瞳の奥には、どこまでも冷たく暗い、底なしの孤独が渦巻いている。
「だが、いつまでその足腰が持つかな? お前が背後のシオンを庇いながら戦う以上、お前の動きには必ず隙が生まれる!」
リシェインが影のように滑らかな動きで踏み込み、シオンの立ち位置を狙うように邪悪な突きを繰り出す。
「させるか……ッ!!」
リオンは迷わず自分の体を割り込ませ、刃の軌道を強引に押し弾いた。
甲冑と刃が擦れ合い、嫌な金属音が耳を刺す。
リオンの呼吸は荒く、額にはうっすらと汗が浮かんでいた。
前世でのトラウマ──自分の目の前でシオンを刺された記憶が、彼の心に重い圧迫感となってズシリとのしかかっていたのだ。
(ダメだ……俺が焦ってはいけない……! シオンを絶対に死なせない……!)
「リオン……っ!」
その時、背中にそっと柔らかく温かい体温が重なった。
詩織がリオンの甲冑の背中に寄り添い、両手で彼の背中を優しく抱きしめるようにして、手首の痣から溢れる温かな光をリオンの体へと注ぎ込んでいたのだ。
「私を庇おうとして、体力を削らないでください……! 私の祈りは、あなたを包んでいます。……信じています、リオン!」
詩織の澄んだ声と、背中から染み渡るような太陽のぬくもり。
その瞬間、リオンの全身を苛んでいた恐怖と焦燥が、すーっと波が引くように消え去っていった。
「……あぁ。ありがとう、シオン……!」
リオンの金色の瞳に、揺るぎない覚悟と圧倒的な鋭さが戻る。
彼は長剣を低く構え直し、鋭い眼光でリシェインを睨み据えた。
「見ただろう、リシェイン。俺とシオンは、お前がどれだけ前世の惨劇を再現しようと……二度と引き裂かれはしない」
「黙れ……黙れぇッ!!」
リオンとシオンの間に漂う揺るぎない絆と温もりに、リシェインの表情が激しい狂気へと歪んだ。
「私には何もくれなかった! 光も、愛も、温もりも……すべてお前が奪ったんだ! ならば壊す……! お前も、この城も、シオンのその輝きさえも……!!」
リシェインが黒い刃に凄まじい邪気を纏わせ、正気を失った獣のように襲いかかってくる。
「シオン、離れないでください……!」
「はい……ッ!」
激化する二人の王子の死闘。
果たして、詩織とリオンは過去の悲劇の連鎖を断ち切り、歴史を変えることができるのか──!?




