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第8話 水の中

ひんやりとした空気が、まとわりつく。


暗い通路の中で、水槽だけが明るい。


三人で歩く。

間隔は、少しだけ空いている。


足音が、やわらかく響く。


大きな水槽の前で立ち止まる。


魚が、ゆっくりと泳いでいる。

同じ場所を、何度も回っているように見えた。


しばらく、そのまま見ている。


隣を見る。

隣の視線は、水槽の中に向いたまま、動かない。


向かいから、短く視線が来る。


少し進む。


小さな水槽が並んでいる。

ひとつひとつに、名前が付いている。


ひとつの水槽の前で、足が止まる。


細い体の魚が、ゆっくりと揺れている。


「変な動きだな」


「そう?」


少し間があく。


後ろに気配がある。

振り返ると、視線が合う。


妻の口元が、わずかに緩む。


隣の気配が、妻の方へ寄る。


少し遅れて、歩き出す。


二人が前を歩く。

並んで、水槽の方を見ている。


小さく言葉を交わしているのが分かる。

ときどき、声がやわらぐ。


少し距離をあけて、その後ろを歩く。


俺のいないところでは、こういう時間が流れているのかもしれない。


遠くで、拍手の音がする。

短く、途切れる。


暗さに目が慣れてくる。

水槽の光だけが、浮かんで見える。


ときどき立ち止まり、また歩く。


同じ方向を見ている時間が続く。


出口に近づく。


その手前に、売店が広がっている。


足が止まる。


並んだ品物を、ひとつひとつ見る。


ガラス細工の魚が、光を受けて色を変える。


ひとつ手に取る。


しばらく見て、戻す。


少し離れたところで、二人が何かを選んでいる。

会計を終え、こちらへ向かってくる。


そのまま三人で外へ出る。


水槽の光が、まだ残っている。

理由は分からない。


それでも、そのまま歩き出す。

まだ、目の奥に光が残っていた。

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