第6話 届いたもの
妻は、先に寝た。
リビングには、テレビの余韻だけが残っている。
テレビの音が、そのまま流れている。
政治家の名前や、どこかの企業の話が続いている。
人や出来事が入れ替わっていくだけで、
同じようなことを繰り返しているように見えた。
内容は、ほとんど頭に入ってこない。
ただ、画面を見ているだけだった。
今日のことが、頭の中に残っている。
うまく処理しきれていない感覚。
それでも、どうにもならないという気持ちもある。
考えても、答えは出ない。
分かっているのに、少しだけ引っかかっている。
トイレに向かう。
用を済ませて、リビングに戻ると、
冷蔵庫の前に、立っている背中が見えた。
ペットボトルを持ち、少しだけ傾けてから、
そのまま中にしまう。
扉が閉まる。振り返る気配。
すれ違うように横を通る。
「……ありがと」
小さく、落ちるような声だった。
そのまま通り過ぎる。
数歩進んで、足が止まる。
「……飲みきれなかったのか」
少し間があって、
「うん」
短い返事が返ってくる。
さらに少しだけ間が空く。
「……寝ろよ」
小さく言う。
今度は、すぐに
「うん」
と返ってきた。
それで終わりだった。
それ以上、何も続かなかった。
ベッドに横たわり、天井を見上げる。
何も考えていないつもりでも、
何かが残っている。
さっきまで引っかかっていたものが、
少しだけ遠くなっている気がした。
理由は分からない。
それでも、そのまま目を閉じた。




