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第14話 帰ってきたあと

家に帰る。


玄関に、見慣れない位置で靴が脱いである。


それを見て、帰ってきているのが分かる。


リビングから声が聞こえる。


「だから、人やばかったって」


「ほんと?」


妻の笑う声が混じる。


上着を脱ぐ。


リビングへ入る。


悠人がソファに座っている。


「おかえり」


向かいから声が来る。


「ああ」


短く返す。


髪が少し乱れている。

顔も少し疲れて見える。


それでも、どこか落ち着かない感じが残っている。


「疲れた?」


向かいから声が飛ぶ。


「めっちゃ歩いた」


ソファへ深く座り直す。


バッグが、そのまま床に落ちる。


「人、多かった?」


ふと口に出る。


悠人がこっちを見る。


「やばかった」


少し間があく。


「外国の人、めっちゃいた」


「ああ」


短く返す。


妻が笑う。


「言ってたもんね」


テーブルの上に、袋が並べられる。


八ツ橋。

キーホルダー。

よく分からないキャラクターのストラップ。


「自由行動、どこ行ったんだ?」


「清水寺と……あと、抹茶の店」


「並んだ?」


「並んだ」


すぐ返ってくる。


「一時間くらい」


「長いな」


少し笑う。


向かいから視線が来る。


ほんの少しだけ、口元が緩んでいる。


悠人がスマートフォンを取り出す。


「これ」


画面を向けてくる。


写真が並んでいる。


人混み。

寺。

抹茶のパフェ。


友達同士で並んで写っている写真もある。


「撮られた」


少し嫌そうに言う。


「普通に撮るだろ」


そう返すと、少しだけ笑う。


そのまま、また次の写真へ指を動かす。


気づけば、話を聞いている。


途中で止まらない。


テレビの音が、小さく後ろで流れている。


「これ、お土産」


小さい袋が、こっちへ置かれる。


袋を開ける。


ガラスのキーホルダーだった。


魚の形をしている。


水色の光が、少しだけ揺れる。


しばらく、それを見る。


「……水族館っぽいな」


「全然京都っぽくないけど」


すぐ返ってくる。


向かいから、小さく笑う声がする。


それだけだった。


夜が少し進む。


悠人は、途中であくびをする。


「もう寝ろよ」


「あー……うん」


立ち上がる。


袋を抱え、そのまま部屋へ戻っていく。


足音が遠ざかる。


静かになる。


テーブルの上には、開けかけの八ツ橋が残っている。


向かいが、それを片付け始める。


そのまま、しばらくテレビを見る。


立ち上がる。


窓へ近づく。


カーテンを少し開ける。


外の道が暗く伸びている。


少し前なら、このまま外へ出ていた気がする。


後ろで、笑う声が聞こえる。


振り返る。


妻が、スマートフォンを見ながら少し笑っている。


「何?」


「先生が、グループLINEに写真上げてた」


「ああ」


短く返す。


そのまま窓を見る。


しばらくして、カーテンを閉める。


それだけだった。

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