第70話
久し振りの投稿ですみません。。。
かなり間が空いてしまったにも関わらず、評価や感想を下さった皆さま、ありがとうございます。
仕事も落ち着きつつあるので、今後はちょくちょく更新していきます。
レグシスレイト領ホーリファイにて。
『英雄』白鳥のリーフェが率いる軍勢は魔界への境界に集結。しかし、数日が経過しても、何故か進撃の号令は一向に出ない。軍馬の勇ましい嘶きは、敵のいない荒野に虚しく響き渡るばかりだ。
「一体、どういうことなのよ!?」
リーフェの副官、リミュは机を叩いて怒鳴っている。小柄の美少女だが怪力を誇る彼女はなかなかの迫力だ。怒鳴られている下士官は、ひたすら萎縮してしまっていた。
「も、申し訳ございません。ホーリファイに到着してからというもの、補給部隊が襲撃される事件が相次いでいるのです。敵はまさに神出鬼没。どこに潜んでいるのやら、皆目見当もつかず……」
「……どうしようか? リーフェ」
英雄リーフェは無言のまま腕を組み、じっと宙を睨んでいる。およそ数秒の間だったが、下士官にとっては、それが途轍もなく長い時間に感じられた。
リーフェは知的な雰囲気を漂わせる美女。しかし、彼女は英雄でもある。醸し出される威厳のようなオーラは、まるで下士官を詰問するかのようだ。
「ひ、ひいっ! 英雄様、どうかお許しをっ……!」
下士官は尻餅をつきながら慌てて部屋を出ていった。リミュはため息をつきながらリーフェを見る。
こんな時、リーフェは決まって……ロクな事を考えていないからだ。
「お腹すいた……」
「このアホ英雄! ちゃんと事態をわきまえろっ」
「あいたっ! なぜ殴るのだっ! 英雄に向かって無礼を働くとは……お里が知れるぞ、リミュ!」
「お前と一緒のお里だろうがぁ! ……まったく。これじゃ国王様の命令を果たせないわ」
はぁー、と再びのため息をつくリミュ。何の戦果も出せないまま、いたずらに日数を消費している。理由は下士官が述べた通り、補給部隊を狙う賊がいるからだ。
「リーフェ、私とあなたで賊を捕らえるわよ! 補給部隊は一ヵ所に集結させるわ。そこで待ち伏せをすれば、賊は必ず姿を現すはず!」
「お風呂入りたい……」
「水風呂にでも入って、頭を冷やせっ!!」
何はともあれ、ついに英雄は重い腰を上げるのだった。
ーーーーーー
月は中天に昇り、霧が辺りに立ち込めている。補給部隊から少し離れて兵を置き、賊が出たら待ち伏せをする手筈を整えている。
「補給部隊からの合図が来たら、私達も討って出るわよ。リーフェ」
「うむ。賊を討ったらご飯を食べよう」
「さっき食べたばかりなのに……来た!合図よ!」
補給部隊から鋭い笛の音が響く。リミュとリーフェは音がする場所へ急行した。
前方に見えるは、単騎の人影。味方の軍は全て地面に倒れ伏している。
「おりゃあああっ!」
リミュは二メートルはあろうかという大剣を振り回し、黒ずくめの賊へと切りかかった。賊の得物は細身のレイピア。普通であれば、とても防ぎきれるものではないが……。
「うそっ……」
賊は、難なくリミュの大剣を受け止めた。それどころか、大剣を弾き飛ばされそうな勢いで押し返されている。
「尋常じゃない魔力! リーフェ、気をつけて!」
その言葉が終わらないうちに、リーフェが槍を突き出す。賊はリミュの大剣を捌きながら身をかわしている。並大抵ではない使い手だ。
「くっ……! このリーフェ様の槍を捌ききるとは、何者だ!」
「……」
賊は一言も喋らずに、二人の攻撃を捌き続ける。リミュとリーフェは幼馴染みであり、完璧なコンビネーションによる波状攻撃をかけている。
リミュが大剣で薙ぎ払った後、出来た隙を塞ぐようにリーフェが槍を突き出していく。しかし、その攻撃の全てが細身のレイピアに吸い込まれていくかのように、賊には決して当たらない。
「こんな使い手がいるなんて聞いてないぞっ、リミュ!」
「私だって聞いてないわよ! それにしても、なぜあいつは攻撃をしてこないの……?」
かわし続けるのみで一切攻撃をしてこない賊に疑問が湧いた刹那、補給部隊の荷物から火の手が上がった。
「しまった! もしかして、あいつの狙いは最初から……消火を急げ!」
「ウォーターストライク!!」
リーフェの得意魔法である水魔法は、白鳥を象って進んでいくが……
「させない!」
賊が水の白鳥を瞬時に切り裂き、雲散霧消させた。火はあっという間に燃え広がり、補給物資の全てを灰塵へと帰していく。
「やられたっ……!!」
既に手遅れと知ったリミュは歯噛みをして悔しがった。賊に切りかかるが、既にその姿は無い。
「賊の声から察するに、女のようだな……怪しい女がいたら、全て捕まえよう」
「うん。けれど、補給物資が無くては、戦は出来ないよ……」
賊の暗躍により補給物資は全焼。ホーリファイからの侵攻は絶望的となったのだった。
ーーーーーー
「ふーっ。ばれなかったようだな。それもそうか、この姿ではな……」
黒ずくめの衣装を脱いで現れたその姿は、フォードンであった。
『戦乙女化』により女体化しているが、通常より格段に魔力や身体能力が向上している。リミュとリーフェをあしらえたのも、その為だった。
「これでケイブからの指示は完了だな。さて、あいつは上手くやっているのだろうか……」
月を見上げる白皙の美少女。誰がどう見ても男性には見えないだろう。
夜が更けるにつれ、霧が一層立ち込めていく。華麗なフォードンの容姿も、夜霧に紛れて見えなくなった。
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