第67話
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七列卿ルーラルヴォーラ家の領土であり魔界とキングウェル王国の境界に当たる都市、リレーネに王国軍の増援が到着していた。
サヴォージュの提案により、キングウェル王国トップクラスの実力者である七列卿の次期当主達も参戦。彼らの名声は王国中に轟いている。王国軍の士気は大いに上がった。
魔界四将の活躍により、先に魔界へ攻め込んでいた王国軍は敗走していた。逃げる王国軍を追う魔族軍。そこを待ち伏せし、魔族を一気に叩き伏せる作戦である。
「ここは我がルーラルヴォーラ家の領土。退魔卿の息女であるわたくし、フェリーネが指揮を取らせて頂きますわ!」
フェリーネ・ルーラルヴォーラ。風魔法の第一人者にして、魔物を操るレアスキルの持ち主。魔界への侵攻経験もあり、リレーネから攻め入る王国軍の将を務めることとなった。
一方、レグシスレイト領のホーリファイには『英雄』白鳥のリーフェが率いる王国軍三万が陣取っている。フェリーネの軍とリーフェの軍で、魔界に二正面作戦を強いる計画だ。
「ナホーティア! ボルガドフ! アーリシャ! あなた達は広範囲の敵を殲滅出来るスキルを持っている。私の使い魔であるワイバーンに乗り、三方向から魔族軍に奇襲攻撃をかけるのです!」
リレーネにいる七列卿の次期当主のうち、三指に入る実力を持つ三人である。
「うんっ! 行ってくるね! フェリーネちゃん」
「くれぐれも無理はしないように。ナホーティア。身に危険が迫ったら、救援要請の狼煙をあげるのよ。あなたがどうなろうと私は構わないけど、愛しのケイブ様が悲しむから……」
フェリーネはかつてリハイヘヴン家に害意を持っていたが、キャロンの隷属スキルによりケイブへの服従を誓っている。
「わかりました! 帰ったら、みんなで仲良くしようねっ!」
純粋なナホーティアは、フェリーネの嫌味に気づかない。フェリーネは軽く舌打ちをした。
「魔族は僕が全て討ち滅ぼしてやる!」
「あらあら、ボルガドフ。熱くなってはダメよ。滅多にない魔族との戦い、楽しまなきゃ♪」
ボルガドフは魔族に対して激しい憎しみを抱いている。そんなボルガドフを嗜めながら、アーリシャもワイバーンに跨がった。
アーリシャはドナーヴゼーレ家の次期当主である。代々魔法卿を務めるドナーヴゼーレ家の歴代最強の実力を誇ると専らの噂であった。
ナホーティア・リハイヘヴン、ボルガドフ・リーヴェンレイル、アーリシャ・ドナーヴゼーレの三名は、ワイバーンに乗り、魔界へと飛び立っていった。
ーーーーーー
ーーわたしだって、強くなったもんっ!
ワイバーンの背に乗りながら、ナホーティアは自らを励ましていた。頼れる寄子であるケイブ、リーフェ、リミュの三名は、ここにはいない。リーフェは英雄として別動隊を率い、リミュはリーフェの側にいる。ケイブは別の計画がある為、ホーリファイに単身向かうそうだ。
これまではこの三人が、戦闘に向かないナホーティアを守ってくれていた。特に、ケイブには何度助けられたか解らない。
しかし、ナホーティアは強くなっていた。元々が、『聖女』、『狂化』、『呪術士』という前代未聞の三重スキル使いである。訓練の結果、使い方を間違えれば国を滅ぼすと言われる『狂化』スキルも、徐々に使えるようになってきている。
ただし、現在ナホーティアが『狂化』出来るのは30%まで。それ以上の出力を出すと、精神が完全に凶暴化してしまい抑制が効かなくなるのだ。
『呪術士』スキルはまだ使いこなすことが出来ない。強力無比だが一度使っただけで精神を蝕まれ、狂戦士状態になってしまうのだ。実戦ではとても使えないスキルである。
千年前、『狂化』と『呪術士』のスキルの持ち主がキングウェル王国を滅ぼしかけたことがある。しかし、両名共に精神に異常をきたし、自滅してしまった。ナホーティアの実力は、この諸刃の剣のスキルをどれだけ使いこなすかにかかっているのだ。
ーーあれっ? 人が、浮いてる……?
上空に静止した人影。常識では考えられない出来事を目の当たりにして、ナホーティアの思考は一瞬止まった。
「『風来撃』!!」
人影は魔界四将のヴィータであった。驚きのあまり対応が遅れる。強烈な風魔法により、ワイバーンごと地上に叩き落とされる。
「きゃあっ! 『狂化』10%っ!!」
激突した地面が抉れる程の衝撃。ワイバーンはピクピクと身悶えている。しかし、ナホーティアは無傷で立ち上がった。瞬間的に発動させた『狂化』により防御力を大幅に向上させたのだ。
「なにっ! 無傷だと!!」
ナホーティアは『狂化』を解除し、瞬時に『聖女』スキルを発動させる。
「『セイント・アロー』っ!!」
立ち上がるや否や、ナホーティアは聖なる光の矢を放つ。目にも止まらぬ速度で黄金の光がヴィータを貫いた。光属性の魔法は魔族に対して抜群の効果を発揮する。今度はヴィータが地上に落とされる番となった。
「ぐうっ! ありえん、あの高さから落下して平気とは……」
肩を押さえながら立ち上がるヴィータに、ナホーティアが猛攻をかける。
「『ホーリー・ウイング』!!」
ナホーティアのオーラが金色に輝き、背中から天使の翼が生えた。翼から無数の羽が飛び出し、ヴィータを突き刺そうとする。
本来、光魔法はあまり攻撃には向かない。しかし『聖女』スキルのレベルが上がった効果で、光魔法の攻撃力が格段に向上しているのだ。
「『ダーク・ホール』!」
闇魔法で出来た空間の淀みに、ナホーティアの羽根は吸い込まれて消え失せた。
「やるな、小娘……っ。光魔法をここまで使いこなすとは。強大な魔力を感知したので単身で向かったのだが、思った以上の大物という訳か。私は魔界四将筆頭、ヴィータ! お前も名を名乗れ!」
「わたしは七列卿リハイヘヴン家の次期当主、ナホーティア! これ以上、王国の人達は傷つけさせないわ!」
魔界四将筆頭のヴィータと、潜在的な力では王国最強クラスのナホーティア。第一次魔界征討は、まさしく佳境に入っていると言えた。
《ナホーティアが持つスキルの概要》
【聖女Lv5】
・対象の体力、魔力量を大幅に回復する。
・対象の攻撃力、防御力、魔法攻撃力、魔法防御力、幸運を大幅に上昇させる。
・全ての状態異常を解除する。
・狂化スキルの支配下にある時は封印される。
・光属性の攻撃魔法力が大幅に増加する。
【狂化Lv3】
・知性、幸運を除く全てのステータスを10倍化する。
・理性を失くし、欲望に忠実になる。
・破壊衝動、殺戮衝動が大幅に増加する。
・聖女スキルの支配下にある時は封印される。
〈スキル特性〉
・補食
対象の身体を補食することで、体力や魔力量を吸収する。まれにスキルを奪うことが出来る。
【呪術士Lv1】
・古代の禁呪魔法が行使可能。
Lv1:滅尽魔法、腐食魔法
・敵を呪い、憎む感情が増加する。増加すればするほど魔法攻撃力が増す。
・全ての魔法属性の適正を得る。
・聖女スキルの支配下にある時は封印される。
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