第61話
新たにブックマーク頂きました皆様、ありがとうございます。
マリフィに立ち向かうフォードンの姿は、誰が見ても女性だ。男であった時の面影は全く無い。やや勝ち気な雰囲気だが、道で出会った男なら十人中十人が振り返る美貌である。
釣り上がった目が気の強さを物語るが、胸が豊かで腰も締まっておりスタイルも抜群に良い。内面の男らしさと外見のギャップから、レグシスレイト家の者からは絶大な人気を誇っている。戦乙女フォードンの為なら命もいらないという男性が後を絶たない始末だ。
フォードンは赤い長髪を風に靡かせ、マリフィを睨み付ける。スラリと伸びた足を心持ち曲げ、ヴァーレンシアを構えた。
ヴァーレンシアはレイピアの形をした神器だ。手に持つだけで莫大な魔力を消費してしまうこの神器を、フォードンは戦乙女化しなければ使うことは出来ない。
『戦乙女化』は、フォードンの切り札である。身体の造りが完全に女性化してしまうが、攻撃力、防御力、魔力等全ての数値が大幅に上昇する。また、この状態でなければ使えない隠しスキルもある。
「一つ問おう。マリフィ」
女性らしい声でフォードンは語る。やや低めだが、色気すら感じる声色だ。
「サヴォージュ様のご命令に抵触しない範囲で承ります」
「魔族を一方的に虐殺して、お前は胸が痛まないのか? 荒れ果てた家の中には子供用の食器も見受けられた」
「私は心無き人形。人の痛みを理解する機能は持ち合わせておりません」
「……解った。人形に対して怒りを向けるというのも愚かな話だな。だがそれは、お前を壊すにも一切の遠慮は不要ということだ!」
フォードンは闘気を纏ったオーラを放った。風圧でマリフィの髪が揺れる。
「我が誇りを示せ! ヴァーレンシア!!」
ヴァーレンシアから膨大な魔力が溢れ、フォードンの身を包んでいく。身体中が光輝く姿は神秘的で、まさに聖戦姫だ。この魔力に包まれると、あらゆるステータスが大幅に上昇するのである。
速度が上がっているフォードンは瞬時にマリフィの眼前に移動。マリフィは片手で薙刀を振り回すが、フォードンは素早く飛び退き回避する。
「きゃあっ!」
フォードンは女の子っぽい悲鳴をあげてしまった自分自身に舌打ちする。『戦乙女化』は、身体だけでなく心も女性らしくなってしまうのだ。
マリフィの背後に回り込み、目にも止まらぬ早さで突きのラッシュを繰り出す。マリフィも人間のレベルを超えた速度で反応した。
ギギギギギギギギィン!!
フォードンが突き、マリフィが払う。再度フォードンが突き、マリフィが払う。この応酬が数秒のうちに幾度となく繰り返された。
マリフィは防戦するが、徐々に反応が遅れつつある。ヴァーレンシア自体に莫大な魔力が込もっている為、防御するだけでもかなりの体力を消耗するのだ。
『剣王』のスキルを持ち、さらに神器ヴァーレンシアを使いこなすフォードンは、キングウェル王国トップクラスの実力であろう。『彼女』が繰り出す攻撃をかわし続けるのは至難の業だ。
数十合の後、マリフィがわずかに見せた隙をフォードンは見逃さなかった。
ザクッ!!
ヴァーレンシアが、マリフィの左腕を切断した。マリフィは後方へ下がって距離を取る。
マリフィは無表情のまま、切断された腕に目もくれない。フォードンはぞっとした。やはりこいつは人形なのだ。
ーー猶予を与えると、このメイドは何をしでかすか解らない。
フォードンが一気に勝負をかけるべく、突進しようとした瞬間。本当に微かではあるが、嫌な雰囲気が辺りに立ち込める。フォードンは咄嗟に行動を止めた。
マリフィの周囲の空間がひび割れ、生温かい風が吹いている。マリフィが左腕を切断面に合わせると、断面に魔方陣が展開される。
「スキル『次元織女』」
次の瞬間、左腕は元通りにくっついていた。
「私は、空間を織る者」
マリフィの双眸に魔方陣が浮かぶ。彼女の周囲がまるで無重力になったかのように、髪やスカートの裾が宙に浮いている。
「それでは、参ります」
空間使いのメイド人形、マリフィ・ロイドシャルマン。彼女の真の実力が発揮されようとしていた。
もしよろしければ!
・ブックマークへの追加
・画面下の「☆☆☆☆☆」から評価
をお願い出来ますととても励みになります♪




