第59話
一ヶ月振りの更新となってしまいました。。。
体調不良と仕事の激務が続いた為です。
今後少しずつでも投稿していきたいと思いますので、引き続きよろしくお願い致します。
夕暮れ過ぎて月が出て
独りぼっちになったなら
牛の魔族は角隠せ
猫の魔族は爪隠せ
銀の悪魔の行くところ
魔族は全て死に絶える
例え我が子に手を引かれても
愛する妻の涙を見ても
銀の悪魔をさえぎるな
銀の悪魔をさえぎるな
レグシスレイト邸の応接間に朗々と響く歌声。そこには二つの人影があった。一人は主たるフォードン。もう一人は側近のジーケスである。
「恥ずかしながら、今の歌が子供達の流行り歌でございます。ここ一ヶ月程で急に広まったようで」
歌唱力に自信の無いジーケスは、やや決まりが悪そうに言った。
「『魔族は全て死に絶える』か。この歌が流行り始めた頃、魔族や穏健派の集団殺害事件が起きたのだな?」
「その通りであります。各地の冒険者ギルドに、銀の悪魔の討伐依頼が来るようになりました」
手渡された依頼書を眺めるフォードン。夢と現の境界線があやふやな言葉が並んでいる。
「にわかには信じがたいな。神出鬼没の通り魔か。一度に百名以上が惨殺されていたこともあったようだが、目撃者が極端に少ない。神業だな」
「はっ。とある目撃者によると、銀色の人影が瞬く間に数十名を切り殺したとのこと。その後、その通り魔は銀の悪魔と呼ばれるようになったそうです」
「そやつは人間ではなく、魔族だったので悪魔と呼ばれているのだな?」
「いえ、そうではありません。目撃者が少し目を離した隙に、その者は空間の狭間に消えてしまったとの話です。数十名を殺した手際と立ち去り方が人間離れしている為、悪魔と呼ばれているようです」
「空間の狭間か……」
フォードンは一つの可能性に辿り着いていた。空間を操る銀色の人影。彼が知る限り、該当する者はたった一人しかいない。
「ジーケスよ。私はすぐに出立する。忌々しいことだが……ヴァーレンシアを用意するように」
「ヴァーレンシアでございますか……それ程の相手ということですね」
「うむ。私の全力を出しても勝てるかどうか定かでない相手だ。背に腹はかえられぬ」
ヴァーレンシアはレグシスレイト家に伝わる神器である。華麗な装飾が施されたレイピアなのだが、使用に当たり莫大な魔力を消費する。
実は、フォードンは『このまま』ではヴァーレンシアを使えない。
切り札であるスキルを用いる必要があるのだが、使用する度にフォードンの矜持をちくちくと傷つけるスキルなのである。
しかし、そのスキルこそはフォードンがレグシスレイト家で絶大な人気を誇る理由の一つでもあるのだ。
「行ってらっしゃいませ。『聖戦姫様』」
「ジーケス。その呼び名は止めろと言っているだろう……」
聖戦姫フォードン。レグシスレイトで広まっている二つ名に、彼は不快感を示した。
レア中のレアスキルである『戦乙女化』の使い手。それがフォードンの隠された真相なのである。
「ひとまず、魔族達が多く住んでいる所で待ち伏せをする。向かうはディプカットの森だ」
ジーケスが持参したヴァーレンシアを持つ。次第に、握りしめる力が強くなっていくのが解る。
「我がレグシスレイト領では、いかなる不義も許さん! 馬を引け!!」
馬上の人となったフォードンの瞳には、義憤の炎が揺らめいていた。
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