第54話
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凱旋式が終わり、俺はナホーティアと共にカイゼットへ戻った。リーフェは英雄としての仕事がある為王都へ残っている。リミュはリーフェの手伝いをするそうだ。
リーフェの凱旋式の件をミファイルトスに話す。魔王は今日は外出中のようだ。
「そうか。そんなことがあったんだね。リーフェちゃんが英雄になったのは間違いなく陰謀だよ。いよいよ、王国の魔の手が君達に回って来たと言うべきか」
ミファイルトスの話の最中、アンデッドの召使ヘンリーがお茶を淹れてくれている。
「かなり事態は切迫している。急いでレベルアップを行おう。今日こそは魔物と戦ってよね?」
ミファイルトスは苦笑しながら首を傾けた。
「ああ、なんやかんやで、まだ魔物に会ってすらいないな……」
「この地域の魔物との戦闘はピッタリなんだよ。ケイブ君に欠けているものを埋める為には」
「それは、一体何なんだ?」
「まあまあ、まずは戦っておいでよ。何事も実践ありきさ」
「ケイブくんはわたしがサポートするから任せてねっ」
ナホーティアの答えに、ミファイルトスは笑顔を潜めた。
「うーん。僕はなんか気にくわないんだよね。ナホーティアちゃん」
「えっ? な、なにか失礼がありましたか……?」
シュンとするナホーティアがたまらなく愛おしい。
「おい、ミファイルトス。ナホーティアは狂化スキルに負けないように日々戦っているんだぜ?」
「それとこれとは話が別だね。君は何故甘んじて護られようとするんだい? 狂化や呪術士のスキルはとても強力なんだ。それを使ってケイブ君と共に戦おうと、何故思わない?」
「えっ? 狂化スキルを……使う?」
「いやいや、狂化スキルを使う事なんて出来ないだろう。侵食されないようにするので精一杯だ。なあ、ナホーティア?」
「う、うん……」
「だからこそ、受け入れなくてはいけなのだよ。まずは自分がその姿勢にならないと、スキルも寄り添ってはこない」
「スキルが……寄り添ってくるんですか?」
「まあ、今は僕の言うことが解らないかもしれない。だけど、君自身の人生にとって避けては通れないことだよ。経験を積めば、少しずつ理解出来るはずさ」
「はい……覚えておきます。ありがとうございます」
ナホーティアが行儀よくお辞儀をする。しかし、表情は茫然としたままだ。狂化スキルを解放したが最後、理性を無くして暴走するのは目に見えている。ミファイルトスは、一体何が言いたいのだろう。俺とナホーティアにはよく解らなかった。
「では、いってらっしゃい! 決して油断はしないようにね」
「ああ!」
「いってきますっ!」
ーーーーーー
カイゼット城の周辺に棲んでいるのはダークバットとブラックグリズリーの二種類だ。両方とも群れを作ることが多い生き物である。
「おっ、早速ブラックグリズリーの群れを発見したぞ。ここから凡そ五十メートル先だな。まずは……おっ、ヘンリーが行くのか?」
「ハイ、モシュジンさま……」
「モシュジンじゃなくて、ゴシュジンだぞ」
なんと、今回は一緒にヘンリーもついてきたのだった。任せろと言わんばかりに剣を振り回している。恐らく、家来として俺達を護ろうとしているのだろう。
「グオオオオオッ!」
ブラックグリズリーに突進していったかと思うと、意外にも素早い剣捌きで一匹、また一匹と魔物を倒していく。
「ヘンリーくん、すごーいっ」
『マスター。ヘンリーは元貴族のアンデッドのようです。それも、かなり戦闘慣れしていますね。ブラックグリズリーの弱点を的確に攻撃しています』
整理整頓スキルがヘンリーの情報を収拾したようだ。一撃で、確実に一匹を倒していくヘンリー。見かけは身体の腐ったアンデッドだが、洗練された剣技を持っている。
『マスター。ヘンリーのように効率良く魔物を倒す練習をすることを提案します。マスターが使う魔法は魔力消費が高いものばかりです。消費量を最低限に抑えれば、マスターはもっと強くなれます』
「なるほど。わかった! サポートを頼むぜ!」
『もちろんでございます。マスター』
ヘンリーの戦い方をヒントにして、カイゼットでの俺の修行は始まったのだった。
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