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第52話

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「お坊っちゃま、おはようございます! 麗しの爆乳メイドが、色っぽく七時をお知らせしま~す♪」


 キャロンの声で目を覚ました。セクシーポーズを取ってるがあえて何も突っ込まない。カイゼットに引っ越してきて二日目の朝だ。今日こそ、城周辺の魔物を狩りに行くとするか。


 ちなみに、学園はしばらく休学届を出している。俺はクオーツカス家を追放されてしまったが、ナホーティアの好意で学園には引き続き通えるようだ。


「お坊っちゃま宛に、お手紙が届いてますよ? 七列卿の方からですが……」


「七列卿から手紙だと? 何だろう?」


 豪華な装丁の封筒を開くと、これまた高級紙を使った手紙が封入されていた。


「カイゼット辺境伯、ケイブ・クオーツカス殿 この度魔界にて、リハイヘヴン家の寄子たるリーフェ・ハイデルファンドが魔王に傷を負わせて撤退せしめた。その功を顕彰し、勅令により英雄の称号を授けることとする。王都にて凱旋式を執り行う故、貴殿も出席致すべし。七列卿 サヴォージュ・ロイドシャルマン」


 リーフェは魔王に傷など負わせていないはずだ。攻撃すらしていない。ネタ魔法であるウォーターストライクを発動させようとしたところで、マリフィが割り込んできたのが実状だ。


 これは、サヴォージュの陰謀に間違いないな。この間ミファイルトスが言っていた通りの展開になっている。すなわち、ナホーティアの関係者を英雄に祭り上げて、自分達の思うがままに操ろうという魂胆だろう。


 リーフェが自分自身で『王国の罠に決して嵌まることはない!!』なんて言っていたので、さすがに大丈夫かとは思うが……いや、やっぱり心配だな。すぐにでもリーフェに釘を刺す必要がある。あいつは知的に見えるが、実際はアホ丸出しだ。


「これはヤバイな……キャロン、ちょっと行ってくる!」


「行ってらっしゃいませ! って、朝ごはんは~? あれ、もういない……」


 ミファイルトスが造った転移装置は、カイゼット城と王都のリハイヘヴン家の屋敷に置いている。身につけている宝石によって、俺はどちらへでも瞬間移動が出来るようになった。


 瞬時に王都のリハイヘヴン邸に移動した。ワープ先は、俺が使っていた二階の部屋に設定している。リーフェを探してリビングに降りていく。


 勅令なので英雄の拝命を断ることは出来ない。だが、これは陰謀の臭いがする。最大級の用心が必要だろう。もし、リーフェが英雄になった事で浮かれていたら制裁を加えてやるつもりだ。まあ、まさかそこまでアホとも思わないが……。


 リビングのテーブルにリーフェが座っている。モーニングコーヒーを飲んでいるようだ。ほっそりとして相変わらずスタイルが良い美少女である。見かけだけは。


 こちらに背を向けているので表情は伺い知れないが、静かにコーヒーを飲んでおり、浮わついている様子は無さそうだ。


「リーフェ、聞いたぞ。お前国王から英雄認定されたんだってな? この間ミファイルトスが言ってた通り、これは七列卿の陰謀に間違いない。ナホーティアや俺達の安全の為に用心しなきゃダメだ。解ってるよな?」


「おう、ケイブか。おはよう。もちろん解っているさ。このリーフェ・ハイデルファンドは冷静だ。間違ってもあいつらの策に乗って、浮かれることはない」


「そうか、それなら安心だな」


「ああ、任せておけ」


 コーヒーカップを持ちながらリーフェが振り返った。


 身体の正面を見ると、ド○・キホーテで売っているような宴会用のタスキをかけていることに気づいた。


 目立つ書体で「私は英雄」と書かれていた。



ーーーーーー



「あ、あう、苦しい。放して下さい。調子に乗ってすみませんでした……」


 アホ丸出しである。


 リーフェの首を絞めて制裁を加えている最中だ。こいつは完全に浮かれている。


「な~んにも解ってねえよ! このバカ! お前の危機感の無さが信じられないわ!」


「ちょっとだけ、ちょっとだけ……浮かれてしまいました」


「大いに浮かれてるだろ! 反省しろ!」


 手を放すとリーフェはゲホゲホと咳き込んだ。ずり落ちかけた眼鏡を直している。


「だって……嬉しかったんだもん」


 上目遣いで美少女ぶるリーフェ。ドキッとしてしまう自分が情けない。


「こ、こういう時だけ女の子っぽくするのはやめろ! ともかく、凱旋式は注意しろよ? 不安だから俺も同行させてもらう」


「ふん……ナホーティアも一緒に呼ばれているし、杞憂に終わると思うがな」


「一体どの口が言ってるんだよ……」


 サヴォージュに会うことがあれば言ってやりたい。お前の策は効果覿面だとな……。


 こうして、俺はナホーティア、リミュと共にリーフェの凱旋式に出席することになった。


 王国の底知れない陰謀の渦中に、俺達は少しずつ引きずりこまれていく。


 魔族よりもさらに闇が深い、人間の悪意に手を引かれながら。


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