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第49話

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 華やかなる都。五百万の人口を誇るキングウェル王都は殷賑を極め、民草は腹鼓を打ち大地を踏み鳴らして、世の安寧を謳歌している。


 王都の中心部に、キングウェル城は聳えていた。王家の住まいであることはもちろんだが、民にとっては安心と繁栄の象徴でもある。


 きらびやかな表向きの印象とは裏腹に、キングウェル王国の歴史は民が流した血で彩られている。今日の栄華は、虐殺、略奪、暗殺、拷問、重税、数えればきりがない程の闇に支えられているのであった。


 そんなキングウェル王国を象徴するかのような部屋がある。キングウェル城の地下深くにある、七列卿の会議室。ここで、王国の血塗られた歴史に新たな章が加えられようとしていた。



ーーーーーー



「……以上が、私が実際に魔界に出向いて把握した事実になる」


 発言をしているのはロイドシャルマン家の当主、サヴォージュである。十八歳にして当主である彼は、王国最高決定機関である七列卿会議への参加が認められていた。


「成る程……これで……魔王から届いた書状の……裏付が取れた……」


「リハイヘヴン家の寄子の、さらに当主でもない者にカイゼット地方を割譲するという内容は真実だったのだな。テングレスよ、この件はお主の差し金か?」


 リハイヘヴン家の当主、テングレスに他の七列卿からの視線が集まる。


「い、いや、とんでもない。私は一切預かり知らぬことだ……」


「ふむ。とはいえ魔王が書状を寄越して来ている以上、断る訳にもいかん。カイゼットはクオーツカス家に何としても押しつけるのだ」


「も、もちろん、そのつもりだ」


 テングレスは冷や汗をかきながら言い訳をする。海千山千の七列卿の中では、テングレスはかなり小物の部類であった。


「クヒヒヒッ! 逆に! この件は好機! カイゼットを通して魔界を操る! またとない契機!」


「真に然り。これもひとえに神の思し召し。汚らわしき魔族は根絶するが善なり」


「私に考えがある。クオーツカス家の小倅は魔王の要求通り辺境伯にする。これは魔王への懐柔策。しかし同時に、魔王の喉元に刃を突き付ける策も必要かと」


 サヴォージュが嫌らしさを湛えた笑みを浮かべて提案をする。


「英雄を一人拵えるのだ。リハイヘヴン家の寄子の小娘が、勇敢にも魔王に立ち向かい、鎧に傷をつけたのを私はこの目で見た。民衆とは愚かな烏合の衆。すぐに英雄を持ち上げ魔界侵略への気運が上がるだろう。そうなれば、我々にとって誠に好都合」


 もちろんこれはサヴォージュの嘘である。鎧に傷をつけたのはリーフェではなく、マリフィだ。意図的に事実をねじ曲げている。


「うむ……それがいい……」


「決まりだな。国王から勅令を出させよう」


「この件は我らロイドシャルマン家が引き受ける。魔族の根絶の為。我らが野望の為。そして、あのお方の望みを叶える為。民草に犠牲が大勢出るが、名誉なことだ」


 七列卿が座る円卓の中央には、聖水が溜まった瓶が置かれている。


 七列卿の意見が纏まると、聖水の中に赤黒い靄が現れた。その靄は次第に悪鬼の表情になり、禍々しい笑みを湛えた。



ーーーーーー



 会議のあらましを次元の狭間で盗み聞きしていた女が一人。ロイドシャルマン家のメイド、マリフィである。


 全く表情を動かさずに一部始終を聞いていた彼女は、最後にたった一言だけ、こう呟いた。



「反吐が、出ますわ」



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