第48話
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次の日、魔力が回復した俺はナホーティア、リミュ、リーフェと共にカイゼット城を訪れた。ミファイルトスに、ナホーティアの狂化を抑える術を教えてもらう為である。
リミュとリーフェは初めて訪れる古城でテンションが上がりまくっている。そんなにはしゃぐようなことだろうか?
リミュがバルコニーに出て、小さな身体でぴょんぴょん跳び跳ねている。
「見て見て! 景色がすごく良いよ! 見えるの山と草ばっかりだけど」
「文句を言うんじゃない! 千年間放置されてたから、緑でいっぱいなんだよ」
リーフェはというと、何処から取り出したのか解らないカップでコーヒーを飲んでいる。
「うむ。なかなか瀟洒な造りだ。我が根城に相応しい。リーフェ天才城と名付けよう」
「いつからお前の所有物になったんだよ。俺の城だよ! それと頭の悪そうなネーミングは止めてくれ」
二人に対し、ナホーティアはいつにも増して大人しい。
「ケイブくん、ごめんね。わたしの為に、いつも苦労ばっかりかけて……」
俯きながら、俺の手をぎゅっと握ってくる。
「気にするなって。ナホーティアは俺のご主人様なんだからな! 執事として当然のことをしたまでさ。さあ、ミファイルトスを起こすぞ」
舞台装置の前の電極を握り微弱な電流を流すと、ミファイルトスの映像が現れた。リミュとリーフェが驚きで目をぱちぱちさせている。そりゃそうだ。大魔導士ミファイルトスが目の前にいるのだから。
「やあ、昨日ぶりだね。ケイブ君。まさかこんなに早く戻ってくるなんて思わなかったよ」
「もちろんさ。ナホーティアを一刻も早くお前に見せてやりたくてな。さあ、狂化スキルの封じ込め方を教えてくれ」
ミファイルトスがじっとナホーティアを見つめる。しばらくして、聞いたことのない言語で魔法の詠唱を始めた。ナホーティアが淡い水色の光に包まれていく。
「……これで、少しはマシかな。古代の魔法を使って、スキルを制限した」
こともなげにミファイルトスは言うが、人間が使える最高レベルの魔法である。キングウェル王国では、人の持つスキルに干渉すること自体が神の所業と思われている為だ。
「でも、完全に暴走を抑えることは出来ないね。根本的に解決する為には、キングウェル王国の城にある国宝を使って狂化スキルを削除するしかない」
「この間言ってた『人間の悪意』が国宝を持ってるのか?」
「その通りだ。チャンスは必ず来る。それまで焦らずに待つことさ。あとこれは僕の考えだけど、狂化スキルがナホーティアに授かったのは偶然ではない」
「どういうことだ?」
「スキルは人を選ぶんだよ。ナホーティアに素質があったから、狂化スキルが授かったのさ。媒介として『人間の悪意』があったのは間違いないけどね」
ナホーティアがきょとんとしてミファイルトスと俺を交互に見ている。
「だから、結局は自分との戦いなのさ。狂化や呪術士に同調する本能があるからスキルが授かる。その本能を抑えることが大事なんだ。スキルを使いこなすか、それともスキルに使われてしまうのか、と言い換えてもいい」
「どうしたら、良いのでしょうか?」
ナホーティアが不安げに尋ねる。
「狂化や呪術士スキルと、怖がらずに対話をしてみることだ。決してつけこまれないようにね。自分の不幸、弱さ、醜さ。それをスキルのせいにしてしまったら負けてしまう。やがて時間が経つにつれて、僕が言っていることが解るようになるよ。だから、それまで焦らずにスキルの修練を積むことが大切だね」
「なんか、解ったような、解らないような……」
俺とナホーティアが揃って首を傾げた。
「あははっ。君たちの人生はこれから長いんだ。すぐに全てを理解する必要は無いよ。ただ、これだけは気をつけて欲しい。王国や高位の貴族にくれぐれも騙されないように」
ミファイルトスの表情が一転して真剣なものになった。
「奴らはどんな手を使ってでも目的を達成しようとする。その過程で踏みにじる屍の数など、数えようとはしないのさ」
「ああ、ナホーティアには指一本触れさせやしない!」
「奴らはまず、人の心の脆さにつけこんでくる。どんなに強固な軍隊だって、内部崩壊には滅法弱いのだからね。人も同じさ。強力な魔物の襲撃より、一見脆弱な人間の考える権謀の方が、百倍質が悪い」
「そいつらは、ナホーティアを狙ってくるのか?」
「狂化スキルが授かっている時点で彼女は狙われているよ。いつも一緒にいる君達三人も、十分に気をつけることだ。王国がぶら下げる目先の利益に決して浮かれてはならない。それは、君達を待ち受ける罠を隠す為の甘い好餌に過ぎないのだから」
「解っているさ。私達の目的はただ一つ!」
リーフェが前に進み出て、剣を抜いて天高く掲げた。
「何があっても、ナホーティアを護り抜くことだ! だから、王国の罠に決して嵌まることはない!!」
ナホーティアとリミュが決意に満ちた目で頷いた。ミファイルトスは優しげな微笑で俺達を見守っている。
そして、俺は経験から感づくのだった。
リーフェが見栄を切ると、必ずと言っていい程、悪いフラグが立ってしまうということを……。
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