第46話
「じゃあ、まず修業の第一段階としてケイブ君にはお掃除をしてもらおう」
「別に構わないが。この部屋の掃除か?」
「いや、カイゼット地方のお掃除さ。この城の周囲にいる魔物を駆逐するんだ。この地域に棲んでいるのは主に二種類。ダークバットとブラックグリズリー。千年間放置してたから繁殖し過ぎてるはずだ」
「コウモリと熊の魔物か。結構、強いのか??」
「今の君なら手こずるだろうね。奴らは集団で襲ってくるし。しかし、実戦の中で魔法とスキルの使い方を学ぶのが一番効率的なのさ。ダークバットは人間の地域まで飛んでいって食物を食い荒らすから根絶やしにしてしまって問題ない。一方、ブラックグリズリーは肉が旨い。倒した個体は持ち帰ると良いよ」
「大丈夫か? 少年よ。人間にとってはなかなか手強い相手だぞ。万一怪我などしては……」
魔王が、外見からは想像もつかない程の優しさを発揮してくる。
「魔王は相変わらず心配性だね。ケイブ君は強いから大丈夫さ」
「べ、別に心配などはしておらぬ。人間の体は紙屑のようにもろいからな。気になっただけだ」
それを世間では心配というのだがな。
「ケイブ君。それでは、君をカイゼット地方の領主に任命しよう。城なども自由に建てて構わないし、気に入った人間を移住させてもいい。奥地には魔族も住んでいるだろうから、友好関係を築いておくと良いよ。今後、君にとって無くてはならない後ろ楯になるはずだ」
「ええ? 領主? 俺がか? 家来もいないのだが……」
「今のところ未開の地だから、放ったらかしにしておくといい。豊かな土地になったら、ゆくゆくは家来も雇っていいんじゃないか?」
「ミファイルトス、またお前は勝手なことを……」
「良いじゃないか、魔王よ。千年間放っておいたのだし、どうせカイゼットは魔界ではないのだろう?」
「まあ、そうだがな……」
「じゃあ決まりだ。これでケイブ君はカイゼット辺境伯、になるのかな?」
「マジか……。何か現実味が湧かないな。カイゼットの領土はどれくらいの広さなんだ?」
「そうだな。リハイヘヴン領のおよそ三倍くらいか」
「さ、三倍だと?」
突然大領主になってしまったことに、俺は動揺した。こんな重荷を背負うのはごめんだな……。
いや、待てよ。お父様にこの領土を差し上げれば喜んで下さるに違いない。お父様は、俺が凡百なスキルを授かったと思い込んでいる。その為に俺は白眼視され、親子の交流が殆ど絶えてしまっていた。噂によると、養子まで考えているとか、いないとか。これは、お父様の信頼を回復する大チャンスだな!
「よし、わかった。この話受けよう」
その時、ガクッと身体の力が抜けていくのが解った。そろそろ魔力切れのようだ。
「それは良かった。そしてどうやら君は魔力切れのようだね。魔物の駆逐が終わったら、またこの装置を動かしてくれ」
「そ、そうだ、ミファイルトス。俺の主人であるナホーティアが狂化スキルに侵されているんだ。それは何とかならないのか?」
「なるほど解った。今度、ナホーティアもここへ連れてくると良い。僕が解析してみるよ。この部屋の角にある機械は転移装置だ。魔王から受け取った映写機に嵌め込んである宝石を持って強く念じれば、いつでもこの部屋に転移が出来る」
「お、おい、ミファイルトスよ。もう終わりなのか? 我輩には、千年分の積もる話があるのだが……」
「この装置はケイブ君しか動かせない。またの機会に会おう。我が友、魔王よ……」
ブーン、という音と共にミファイルトスの映像は消えて無くなった。魔王がまたもや寂しそうな表情をしている。
こうして、俺は大魔導士ミファイルトスと師弟関係を結び、カイゼット地方という大領土を手に入れたのだった。そして、ナホーティアの狂化も解決の糸口が見えた気がする。
人生とは、何があるか解らないものだな……。
もしよろしければ!
・ブックマークへの追加
・画面下の「☆☆☆☆☆」から評価
・レビューの投稿
をお願い出来ますととても励みになります♪




