第45話
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ミファイルトスは数秒間の沈黙の後、再び語り始めた。
「そう言えば、ケイブ君は地球のどこから来たのかな? 生きていた時代は? 西暦って解るかい?」
「2020年の日本だ」
「ええっ? 本当かい? 僕も同じだよ! 佐賀県に住んでいたんだ!」
まさか、大魔導士が同じ時代の日本に住んでいたとは……。
「そうだったのか! 奇遇だな……俺は東京に住んでいた」
「へ、へえ~東京ね。都会だね……言っとくけど、佐賀県は君が思っている程、田舎ではないからね! 日本には村が存在しない都道府県が十三あったんだけど、佐賀県はその一つだから田舎ではないんだ!」
ミファイルトスが謎理論を展開する。
「いや、田舎とは一言も言ってないんだが……そもそも、佐賀県ってどの辺にあったっけ? 四国?」
「……下らない話はその辺にして、本題に入ろうか」
どうやら大魔導士様を怒らせてしまったようだ。笑顔のままだが、少し表情が引きつっている。
「少年よ、気をつけるのだ。ミファイルトスは、やや狭量な所があるからな……」
魔王が俺にそっと耳打ちする。意外に気配りが細やかな魔王様である。
「ケイブ君。今は全てを君に話すことは出来ない。その理由は自然に解ることと思う。一つ言える事は、キングウェル王国には人間の悪意が取り憑いている」
ミファイルトスは笑顔を潜め、真剣な表情を見せる。
「それはキングウェル王国設立以来、影で政権を操っている。僕も、最終的にその悪意に負けて殺されてしまったのさ」
「悪意? 何のことだ?」
「邪神と言い換えてもいいかもね。人間なのか、魔族なのか、正体は解らない。まさに悪の化身そのものだよ」
「それが……どんな悪さをしているんだ?」
「そいつは人間の負の感情が好物なのさ。恐怖、悲哀、絶望、殺意。人間から湧き出るその感情を吸い取って生きているんだ。その為に、王国の民に様々な災害を撒き散らしている」
ミファイルトスの表情が険しくなる。
「そいつはいかなる時代でも、何故か王国で権力を持っている。だから適当な理由をつけて民に重税をかけたり、略奪をしたり、または戦争を仕掛けたりする。あるいは……狂化等の質の悪いスキルを才能のある者に与えて、大量虐殺者を作り出したりするんだよね。その過程で産まれる人間の負の感情を食い物にする為に」
「なんだと……」
ということは、ナホーティアはその悪意とやらの玩具にされようとしているってことか。
許せん。それだけは、絶対にさせない。
「そいつを止められるのは、君だけなんだよ。ケイブ君」
「どうして、俺が……?」
「僕が極めた魔法の全てを君に伝授するからさ。雷魔法自体とても強力で他の属性とは一線を画すものだしね。さらに……」
ミファイルトスは天井を指差した。
「地球の出身者は、その気になれば星魔法を使えるんだ。星全体に宿る自然エネルギーを使うから、普通の魔法とは比較にならない程の威力を持つことが出来る。その説明は追々しよう」
星魔法は歴史に名を残す大魔導士しか扱えないと聞いていたが……ああそうか、ミファイルトスこそがそうだったな。佐賀県が産んだ偉大なる大魔導士である。
「最後に、これは僕の推測だけど……君は整理整頓スキルを持っているんじゃないかい?」
「そうだが、なぜ解ったんだ?」
「実は、僕のスキルも整理整頓だったんだよ。雷魔法は制御が難しいから、恐らく整理整頓のような補助スキルが無いと使いこなせないと思ってね。魔法を操るセンスを何倍にもする整理整頓スキルがあれば、王国を操る悪意に勝てる!」
ミファイルトスは真っ直ぐに俺の目を見る。
「ケイブ君、君しかいないんだよ。王国の悪意を絶ち、人々を救えるのは……! お願いだ。どうか、どうか立ち上がって欲しい!」
ミファイルトスの必死な思いが伝わってくる。映像ではなく、まさに生きているかのようだ。いや、実際に彼の思いは千年経った今でも、まだ死んでいないのだろう。
「わかった。ただ、俺はナホーティアを護りたいだけなんだ。王国の民を救うなんて、そんな大それたことは出来るのかどうか……」
ミファイルトスは穏やかに首を振った。
「ナホーティアというのは君の大切な人なんだね? 人を救いたい。たとえ人数が少なくても多くても、その気持ちは等価値さ。よろしくね。ケイブ君」
ナホーティアを護るためなら何だって出来る自信はある。ナホーティアは、俺にとっての世界そのものだ。俺自身の世界を護る為に、王国に巣食う悪意は俺が絶ってみせる。
その日から、俺は大魔導士ミファイルトスを師匠として魔法とスキルの特訓に励むことになったのであった。
※作者の出生地は佐賀県です。
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