第43話
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「千年前、大魔導士ミファイルトスによって、狂化スキルを持ったガイルディアと呪術士マリーベが討伐された。それはキングウェル王国の英雄譚として今も語り継がれている」
魔王の独白は続く。理解の追い付かない俺を置き去りにして。
「しかし、真実は違った。ガイルディアもマリーベも、王国から人為的にスキルを与えられ人格を狂わされたのだ。元々は、二人とも温厚な騎士だったと聞く。そんなことも知らず、王命を承けて二人を殺した哀れなミファイルトス。事実を知った後の奴の慟哭は、千年経った今でも目に浮かぶ」
「何の為に……王国はそんなことを?」
「それは今でも解らぬのだ。ただ一つ解っているのは、明らかに王国が糸を引いていたという事」
「どこに、そんな証拠があるんだよ?」
天を仰いでいた魔王が、俺に視線を落とした。
「お前はミファイルトスと雰囲気が良く似ている。雷魔法の使い手はお前か?」
「そうだが……俺の質問に関係があるのか?」
「ミファイルトスの形見をお前に渡そう。雷魔法の使い手が現れたら、渡して欲しいと奴に頼まれている」
魔王は空間に魔方陣を描き、手を突っ込んだ。魔王が取り出したのは、黄色い宝石が埋め込まれている映写機のような物だった。
「これは……機械?!」
「ミファイルトスは遠い国からこの地にやって来たそうだ。故郷で普及している技術を使い、このおかしな物を作ったらしい。どのように使うのか、我輩には見当がつかぬ」
まさか、ミファイルトスは俺と同じ転生者なのだろうか。
『マスター、ケイブ様。その機械を持って、軽い電撃を流して下さい』
整理整頓スキルの助言に従い、俺は映写機に電撃を流した。すると映写機が光り出し、俺の前方の空間に映像を映し始めた。
一人の壮年の男が映っている。歳の頃は三十代くらいか。整った顔立ちだが、無精髭でやつれた表情をしている。
「これは……まさしく我が友ミファイルトス!」
魔王が感極まって叫んだ。魔王と大魔導士は、種族を超えた親友のような関係だったのだろう。映像の中のミファイルトスがおもむろに語り出した。
「私の名前はミファイルトス。これを見ているあなたは、現代の地球からきた転生者だろう。雷魔法を使いこなす者は、電気という概念を知っているはずだからだ」
そう言えばキャロンも言っていた。雷魔法を使う為のイメージのやり方が解らないと。
火属性の魔法なら火を、水属性の魔法なら水を深くイメージして初めて魔法を使う事が出来る。
しかし、この世界には電気が無いので、キングウェル王国の住人は雷魔法を使う為に必須なイメージが出来ないのだ。そもそも電気という概念が解らないはず。
雷に撃たれても生きている者がいれば解るかもしれないが……医療技術も発達していないこの世界では、そんな者は皆無だろう。
すなわち、雷魔法を使いこなせる者は、電気が普及している地球の出身者ということになる。
「あなたにお願いがある。どうか、王国の民を救って欲しい。この機械を通して伝えることの出来るメッセージは限られている。魔王の居城の更にその奥地、カイゼット地方の城まで来てくれ。魔王なら容易く連れていけるはずだ。そこで王国についての真実を教えよう。必ず、魔王と『二人で』来るように。私の願いがあなたに届くことを心より祈っている」
映像はそこで途切れた。
「あの城にはミファイルトスの遺品がたくさんある。その中のどれかに手がかりがあるのだろう。居城までなら転移が出来る。少年よ、我輩に掴まれ」
「でも、ナホーティアを置いていくわけには……」
「気にせず行ってこい。ナホーティアは必ず俺が護ってみせる」
ふと見るとフォードンが起き上がっていた。ダメージは少なくないようだが気丈に笑っている。
「……わかった。行ってくる!」
「ああ! 王国の正しい未来は、卿の双肩にかかっている! 頼むぞ!」
フォードンが高らかに剣を掲げ、志を俺に託した。
魔王が地面に魔方陣を描くと、魔王と俺の身体が光り輝いていく。
次の瞬間、俺は魔界の最果て、魔王の居城にいた。
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