番外編:七列卿『フェリーネ・ルーラルヴォーラ』
フェリーネは湯浴みをしている。まだ頭がボーッとしていて、フワフワした幸せな気分が抜けない。
身体を洗っていると、つい先ほどキャロンから貰ったばかりの『ご褒美』を思い出して表情が蕩けてしまう。湯船につかっても、うっとりと幸福感の余韻に浸り続けている。
フェリーネは七列卿ルーラルヴォーラ家の次期当主。魔物を召喚するレアスキルを持った、才色兼備の令嬢である。
ルーラルヴォーラ家とナホーティアのリハイヘヴン家は敵対関係にある。先日、フェリーネが秘密裏にナホーティアを排除しようとしたのだが、リハイヘヴン家のメイドであるキャロンの返り討ちに遭う。
戦闘不能になったフェリーネに対し、キャロンは相手を虜にする『隷属』のスキルを使ったのだった。リハイヘヴン家に対する敵対感情は消され、キャロンに対して盲目的な忠誠を捧げるように人格を書き換えられている。
ルーラルヴォーラ領の某所にて、フェリーネはキャロンと度々密会していた。定期的にキャロンの指示や実戦訓練を受ける為である。
その後にキャロンから必ずご褒美を貰っているのだが、フェリーネにとって、今やそれが生き甲斐になっている。
浴室から出て寝室に戻ると、ベッドにキャロンが腰かけていた。紺の下着の上から、薄手のバスローブを羽織っている。髪留めを口に加えながら、ポニーテールを整えている最中のようだ。
「キャロンさま。ただいま戻りました」
フェリーネは深くお辞儀をする。ネグリジェのフリルがヒラリと揺れた。茶髪のボブカットが完全に乾いておらず、首筋に少し貼り付いている。
「フェリーネ、魔界ではケイブお坊っちゃまの護衛を頼んだわよ。誰よりも、お坊っちゃまを最優先で護りなさい」
「はいっ、キャロンさま」
キャロンの命令にはどんな内容でも反射的に承諾するように躾けられている。たとえ、自らの命を差し出す命令だったとしても。キャロンのスキル『隷属』の効果によるものである。
「お坊っちゃまは女性の胸に目がありません。だから、いつも胸元は開けた服を着るように」
「はいっ、かしこまりました」
「あともう一つ。毎晩お坊っちゃまにはご奉仕をすること」
「はいっ。キャロンさま、どのようにご奉仕をすればよろしいでしょうか? 私は、キャロン様以外にご奉仕をした経験がありません……」
「そうねえ……ケイブお坊っちゃまは純粋なところがあるから、刺激が強すぎると避けられてしまうわ」
「そうなのですね」
「だから、パフパフをする位でちょうど良いかしら」
「ぱ、ぱふぱふとは、どのようなご奉仕でしょうか?」
「だからぁ、胸をこうして……」
キャロンが分かりやすく実演をした。
「な、なるほど。勉強になります……!」
フェリーネが素早くメモをする。根は真面目なのだろう。
「お坊っちゃまが魔界から無事に帰って来れたら、これまでで一番のご褒美をあげるからね」
キャロンが優しく頭を撫でると、フェリーネはうっとりと頷いた。ぱっちりした目が潤んでいく。
「はいっ。私はキャロンさまのご褒美が欲しいです。一生懸命がんばります……」
フェリーネに以前のような強気な素振りは全く無い。まだ少し湿っているベッドに座り、目を静かに瞑って、キャロンに身を預けるのだった。
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