番外編:七列卿『フォードン・レグシスレイト』
「総員、かかれ!!」
「「「「「うおおおおおおっ!」」」」」
フォードンの号令と共に、レグシスレイト家の兵隊が大型の魔物に向かっていく。後衛部隊が魔法を撃ち、魔物が動揺したところを前衛部隊が突っ込む。勿論、後衛部隊はバフを味方にかけ続ける。
前衛部隊の中でも、役割は事前に細かく決められていた。長剣を持つ者が初めに魔物の足を切りつけて動きを止める。その後槍組、剣組の順番で魔物に切りかかる。
一糸乱れぬ攻撃により、魔物はあっという間に息絶えた。
「総員、攻撃止め!!」
「「「「はい! フォードン様!」」」」
鶴の一声でピタリと攻撃を止め、素早く隊列を組んでフォードンの元へと戻ってきた。フォードンの後ろに整列し、微動だに動かなくなる。
七列卿において『兵部卿』の役割を持つレグシスレイト家は、キングウェル王国有数の武力を持つ。代々、外敵の進攻から武力によって王国を護ってきた。
レグシスレイト軍の勇猛ぶりは名を轟かせており、当主の一言で死を恐れず進軍する猛者揃いだ。
とりわけ、次期当主のフォードンは情に篤く義理堅いことで声望が有る。寄子にはフォードンに忠誠を捧げる者が多く、まさにフォードン教の様相を呈していた。
隊列を組み直したところで、もう一匹の魔物が現れた。大型のワイバーンである。
「フォードン様!」
副官のジーケスがフォードンに指示を仰ぐ。
「皆は行かずともよい。私が行こう」
「はい! フォードン様!」
フォードンは長剣を鞘から抜き、ワイバーンへ向けて静かに歩いて行く。
「ギャアアアアアアス!!」
ワイバーンの威嚇がこだまする。しかし、フォードンは臆することなく歩みを進める。
ワイバーンが大きく口を開けブレスを放とうとしたその直後。フォードンの長剣がワイバーンを両断していた。
フォードンのスキルは「剣王」である。剣豪の上を行く、レア中のレアスキル。フォードンはカリスマ性だけでなく、圧倒的な強さを持って軍を統率していた。さらに、フォードンはもう一つのレアスキルを持っている。
「フォードン様、流石です!!」
副官の一声により、隊員が一斉に拍手をする。周囲から見ると異様な光景だが、全員が心からフォードンのことを慕っているのであった。
「総員! 休め!」
「「「「はい! フォードン様!」」」」
「俺は明日より魔界へ行く。留守を頼んだ」
「「「「はい! フォードン様!」」」」
「俺と同行するメンバーは、王国でも有数の使い手達だ。今回の魔界探索では、これまで手が届かなかった地域まで踏み込めることだろう。領民の安寧を護る為にも、必ずや成果を得てみせる」
「「「「はい! フォードン様!」」」」
魔物は、基本的には魔界からキングウェル王国にやって来る。魔物からの進攻を防ぐのもレグシスレイト家の役割である。
フォードンは今回の魔界探索により、魔物の拠点を複数破壊するつもりだ。そうすれば、王国へ進攻してくる魔物の量も減るはずである。
「ジーケス! 皆! 俺が不在の間、レグシスレイト家の平和を任せたぞ!」
「「「「はい! フォードン様!」」」」
「フォードン様、バンザーイ!」
「「「「バンザーイ! バンザーイ!」」」」
フォードンは静かに頷いた。これほどの忠誠心を持つ皆ならば、上手くやってくれるだろう。
フォードンは才覚に溢れ情も篤く、次期当主としての力量は十二分にあると言える。
ただ一つ欠けているとすれば、フォードン親衛隊の忠誠心が高すぎるあまり、レグシスレイト家の中で浮きまくっていることに気がついていない点だ。
「フォードン様! 失礼致します!」
ジーケスの掛け声により、親衛隊が一斉にフォードンの身体を持ち上げて、胴上げが始まった。
「「「「フォードン! フォードン! フォードン! フォードン!」」」」
掛け声をかけながら胴上げを続ける親衛隊達。涙を流す者さえいる。
「皆、ありがとう! ありがとう!」
フォードンは心から思っていた。俺は良い部下を持った、と。
フォードンは気がついていない。レグシスレイト家の者から、親衛隊がフォードン教と揶揄されていることを。
ーーこの者達の為にも、必ずや魔界行きは成功させてみせる。
親衛隊の異様極まる胴上げの最中、フォードンは心に誓いを立てるのであった。
ちなみに、胴上げはこの後三十分程続いた。
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