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番外編:七列卿『ボルガドフ・リーヴェンレイル』

投稿が遅くなりました。

実は、土日祝は平日よりとても忙しいです。。。

「硬質化!!」


 ボルガドフは両腕を硬質化させた。岩山に向けて高速で連続パンチを繰り出す。


「ウオオオオオオオオッ!!」


 岩山は瞬く間に砕かれ、砂塵と化した。一つの山を崩せば、その次、さらにその次と続く。


「鬼人化!!」


 身長三メートルの巨人と化したボルガドフが拳を振るう。歩くだけで地響きが起きる巨体から繰り出されるパンチは、かすっただけで大木を薙ぎ払う。


 ボルガドフ・リーヴェンレイルは魔界行きに向けて特訓を続けていた。かつて闘技大会においてケイブに打ち破られた硬質化と鬼人化のスキルに磨きをかける日々が続く。


 ボルガドフに師はいない。友もいない。配下となる寄子もいない。


 硬質化と鬼人化。圧倒的な強スキルを持つボルガドフにとって、仲間は必要の無い存在だった。サポートをするどころか、ボルガドフの攻撃に巻き込まれてしまう可能性が高い。


 他者と隔絶した実力を持つボルガドフは、次第に孤高の存在となっていった。スキルを授かる以前の友とは疎遠になり、従者も近寄らない。両親すら、ボルガドフの強さとスキルを忌み嫌っている始末である。


 リーヴェンレイル家は七列卿の中で『祭祀卿』と呼ばれる役割を持っている。キングウェル王国内で神を祭る行事、すなわち祭祀を取り仕切る一族なのだ。これまで、リーヴェンレイル家の当主は祭祀に関わるスキルを授かり、王国最高位の聖職者を代々務めてきた。


 しかし、ボルガドフは異質であった。硬質化と鬼人化というスキルは完全に戦闘向きのスキルである。次期当主にそのようなスキルが授かる事は、リーヴェンレイル家にとって初めての出来事であったのだ。


 魔界行きと学園を休むことの承諾を父親に求めた時も、勝手にしろと言わんばかりの態度であった。ボルガドフの父親は王国最高位の聖職者だが、子供に対しては無慈悲だったのだ。それでも、ボルガドフ自身、親への敬意は忘れたことは無い。


 絶対的強者であるがゆえの孤独に向き合って来たボルガドフに、一条の光を投げ掛けたのがケイブであった。


 ケイブは、闘技大会においてボルガドフを打ち破った。これまで圧倒的な強さで敵を屠ってきた鬼人化と硬質化のスキルを乗り越えて。


 ボルガドフは、不思議と負けたことへの悔しさは感じなかった。むしろ、ケイブの存在に安心感を覚えたのである。孤高に思えた自分の強さに寄り添える存在。それこそが、ケイブにとって真の仲間といえるものだった。


「必ず、ケイブ君の力になってみせる!!」


 ボルガドフにとって、ケイブは心から安らぎを覚える存在、護りたい者である。ケイブがいる以上、以前抱えていた不安はもう無い。自分はもう孤独じゃない。


 ボルガドフは確信していた。圧倒的な力と護りたい者、この二つを併せ持った者こそが真の強者なのだ、と。漫画や映画でよく見受けられる浅い考えだ。


 しかし、自らの存在意義を他者に依存する者は脆い。何故自らを恃めないかと言えば、見たくもない自分自身の醜さを自省する、心の強さが無いからである。人は、自分の弱さを認めて初めて強者となる。自分の弱さは他者の存在だけでは克服出来ないものだ。


 自分の孤独さを、スキルや他者からの嫌悪のせいにし続けているボルガドフは、闘技大会から全く成長していないと言えるだろう。


 もし、ケイブへの信頼が無くなったとしたら、ボルガドフはあっという間に孤独へ逆戻りである。そんな脆さを抱えた者が、強者と呼べるはずもない。


 そのことへの無自覚が、後のボルガドフの悲劇に繋がる。ボルガドフはそれに気づくこともなく、友の為に拳を振るい、汗を流すことへの快感に溺れていた。

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